栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:レジデント時代のトレーニング施設とその後の診療費用

レジデント時代のトレーニング施設とその後の診療費用
Spending patterns in region of residency training and subsequent expenditures for care provided by practicing physicians for medicare beneficiaries*1

JAMA. 2014 Dec 10;312(22):2385-93. doi: 10.1001/jama.2014.15973.

【背景】
 若い医師にとって教育医療機関でのトレーニングは技術と経験を提供するが、一方で医師の資源・金銭利用パターンにも影響を与えるとされている。

【目的】
 医師の研修終了医療機関とその後のMedicare支出の関係を評価する。

【研究デザイン/患者】
 2011年のMedicareの診療データを元に、1992-2010年にレジデンシーを卒業したプライマリケア医(家庭医療・内科医)から、ランダムに米国全体を代表するサンプルを抽出した。40施設、2851人の医師とその医師が提供した49万1948人の臨床データを多変量解析した。

【介入】
 研修を終了した施設と現在診療をしている施設は、Dartmouth Atlas Hospital Referral Region file(HRR)をもとにマッチされた。カテゴリーとして、地域の医療費使用データを元にlow/average/highの3群に分け、3群がほぼ同数になるように分配された。それぞれの分類は、研修施設と現在の診療施設の2つで以下の様に分類された。

 研修low/診療low:674人
 研修average/診療low:180人
 研修high/診療low:178人
 研修low/診療average:253人
 研修average/診療average:417人
 研修high/診療average:210人
 研修low/診療high:97人
 研修average/診療high:275人
 研修high/診療high:567人


【メインアウトカム】
 Medicareデータを元にした医者一人辺りの平均医療費

【結果】
 医療費用が高い(high)施設で診療している医師において、医療費用の高い研修施設卒の医師は、医療費用の低い研修施設卒の医師と比較して平均1926$(95%CI:889-2963$)高い診療を行っていた。
 医療費用が平均的な(average)施設で診療している医師において、医療費用の高い研修施設卒の医師は、医療費用の低い研修施設卒の医師と比較して平均897$(95%CI:71-1723$)高い診療を行っていた。
 医療費用が低い(low)施設で診療している医師において、医療費用の高い研修施設卒の医師は、医療費用の低い研修施設卒の医師と比較して診療費用は、533$(95%CI:-46 to 1112$)と有意差は認めなかった。

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(文献より引用)

 患者・地域・医師の特性を調整した結果、医療費用の高い研修施設卒の医師は、患者支出が7%(2-12%)高くなる診療を行っているという結果だった。これは医療費に換算すると522$(146-919$)だった。
 経験年数によってその差は変化し、卒業後7年までは、29%の差($2434:95%CI 1004-4111$)が認められたが、16-19年目になると有意な差は認められなくなった

【結論】
 プライマリケア医(総合内科医と家庭医)のレジデンシーの卒業研修施設を比較すると、医療費使用パターンは、レジデンシープログラムの地域と関連することが分かった。レジデンシー期間に介入することが、症例的なヘルスケアにおける医療費抑制を助けるかもしれない。

【批判的吟味】
・あくまで地域で分けていますから、具体的な医師毎の違いというものは考慮されていません。それが無いのに、施設の差がこれだけ出たのが恐るべきというところでしょうか
・そもそもこのデータベース HRRの信頼性がどの程度かが分かりにくいです。
・更には、あくまで医療費の検討なので、患者アウトカムが評価されていません。「お金を使わない=良いこと」と短絡的な意味づけはしにくいところかなと思います。もちろん、高い医療が患者の良いアウトカムには繋がらないという先行研究はある様ですが・・・
・今後はレジデンシープログラムのどの部分が医療費をどの程度利用しているかを調査する必要があります。

【個人的な意見】
 でも、非常に面白い研究でした。やっぱり研修を受けた施設の色が出るってことですよね。確かに自分の出身施設の診療内容は影響していますもんね。これって他流試合をたくさんやって、色々な施設のやり方を見ると変わる部分だと思ったりします。自施設の常識が多施設の非常識ということはあり得ますもんね。本当はそうそうあっては困るわけですが・・・そういう意味では研修中に場所や施設規模を変えるというのも一つとても大事な点です。まあ、
 あとは、研修教育の際にコストを意識した指導をしているかどうかという点も重要ですね。医療費をアウトカムにした研究も今後日本ではドンドンやっていく必要がありますよね。