栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ 横隔神経麻痺の原因/Fabry病/肥大型心筋症の心電図

無事2014年のカンファレンスも終了しました!
楽しく濃ゆいカンファレンスをさせて頂きました。
まだまだ勉強不足な我々ですが今後ともよろしく。

横隔神経麻痺の原因 Cause of diaphragmatic paralysis

 横隔神経麻痺って胸部Xpで横隔膜が挙上している人で考える訳ですが、普段なかなか注目する機会が無いですよね。

 横隔膜は吸気時に働く最も主要な筋肉で、呼吸筋の一つとして重要な役割を果たしています。その横隔膜の運動・感覚を一手に引き受けているのが横隔神経(C3-5,メインC4)です。ちなみに、呼気時の呼吸筋は内肋間筋と腹壁の筋肉と言われています。なんと調べてみると”Uptodate”に単独でCauses and diagnosis of unilateral diaphragmatic paralysis and eventration”って項目があるくらいなんですね。


 さて、このほとんど無症状の片側性横隔神経麻痺ですが、様々な疾患が原因になります。ちなみに、症状がより強く出るのは両側の場合や労作時、肺疾患合併時などです。

 ■神経原性
 ①神経離断症
 ②多発性硬化症
 ③筋萎縮性側索硬化症ALS
 ④頚椎症
 ⑤ポリオ脊髄炎
 ⑥Guillain-Barre症候群
 ⑦横隔神経障害(腫瘍による圧迫/心臓手術による障害/頚部外傷/特発性/ウイルス感染症後:帯状疱疹等/放射線治療/カイロプラクティック

■筋原性疾患
 ①肢帯型ジストロフィー
 ②甲状腺機能低下/甲状腺機能亢進
 ③低栄養
 ④酸性マルターゼ欠損症(II型糖原病
 ⑤膠原病(SLE・皮膚筋炎・MCTD)
 ⑥アミロイドーシス
 ⑦特発性筋症

✓ 横隔神経麻痺には原因がある。多くは無症状だが、労作時の呼吸困難や肺疾患の合併があったりすると症状が出ることがある。

 

 

Fabry病 Fabry disease

 Fabry病ってなかなか普段日常診療で意識する機会がないので、少しまとめることにしました。Fabry病はいわゆるライソゾーム病で、αーガラクトシダーゼAの酵素活性低下によるスフィンゴ糖脂質が臓器に蓄積する遺伝性疾患です。ライソゾーム内の酵素異常のため、全身性の症状が起こり得ます。

 1898年にドイツ人の皮膚科医Fabryさんイギリス人の皮膚科医Andersonさんによってほぼ同時期に報告されています。本来は多臓器(皮膚、眼、神経、血管、腎臓、心臓等)に渡る症状が中心ですが、心障害のみで他の臓器障害を認めない、非典型的なFabry病も1990年頃から報告され、これは心Fabry病と呼ばれています。
↓ Fabryさん

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↓ Andersonさん

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http://www.lysosomalstorageresearch.ca/Fabry_eClinic/who-named-it.htmlより引用)
 心Fabry病の本邦での頻度は不明ですが、肥大型心筋症と言われている患者さんの中にある一定数いるというのが昨今の報告から分かっていることの様です。

 典型的な症状は、
①四肢末端痛:幼小児より出現する四肢末端の激しい疼痛発作。ストレスや気温変化で誘発。体温上昇時も。成人になると軽快。
②被角血管腫:腹部・臀部・外陰部に好発する暗赤色・赤紫色の小丘疹
③低汗症、無汗症:発汗低下、発汗障害。体温も上昇しやすい。
④角膜混濁:渦巻き状、放射状またはびまん性の角膜混濁。自覚症状は来にくい。
⑤消化器症状:腹痛、嘔吐、便秘、下痢
⑥精神症状:うつ、人格変化
聴覚障害:感音難聴
⑧脳血管障害:脳梗塞、主にラクナ
⑨腎障害:思春期より蛋白尿、血尿、GFR低下、CCr低下。末期腎不全に至ることもある。腎Fabry病。
⑩心障害:進行性の左室肥大や右室肥大。左心機能は拡張障害が主で肥大型心筋症様の病態。進行と共に収縮能障害も来す。この時期には、拡張相肥大型心筋症様の病態になり心不全を発症。各種不整脈も合併する。

 
 近年では酵素補充療法が開発され、2週間に1回点滴投与により本邦では2004年から臨床応用されています。リプレガルⓇという点滴薬ですね。

✓ Fabry病がどんな病気か押さえておく。心臓のみに症状が出る心Fabry病は肥大型心筋症と似ているので注意。

 

 

肥大型心筋症の心電図  ECG of hypertrophic cardiomyopathy(HCM)

 後で振り返ればまあHCMの心電図だよね〜とは思いますが、突然見るとギョギョっとしますよね。

 基本的には特異的な心電図異常は無いのですが、慣れると見れば当たりがつくようになるのかもしれません。一般的にHCM患者では心電図を取ることが推奨されており、全くの正常心電図になるのは非常に稀で10%以下と言われています。
 
よく出る心電図異常としては、
①下壁(Ⅱ・Ⅲ・aVF)および側壁誘導(Ⅰ・aVL・V4-6)の異常Q波
②左房負荷を示唆するP波異常
③左軸偏位
④深い陰性T波(giant negatibe T waves)がV2-4付近。

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http://cdn.lifeinthefastlane.com/wp-content/uploads/2012/01/giant-T-wave-inversion.jpgより引用)

✓ 若年者の肥大型心筋症の心電図所見を覚えておく。