栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:心房細動を併発したEF低下心不全へのβ遮断薬

Efficacy of β blockers in patients with heart failure plus atrial fibrillation: an individual-patient data meta-analysis*1
心房細動を併発したEF低下心不全へのβ遮断薬

Lancet 2014; 384: 2235–43

【背景】
 心房細動と心不全はしばしば併存し、合併症や死亡と関連する。β遮断薬は、症候性のHFrEF患者で適応になるが、心房細動を合併している患者で効果があるかどうかはよく分かっていない。そこで、個人レベルのデータを統合したメタ解析を行い、心房細動を合併した心不全と合併しない心不全に対して、β遮断薬の効果を評価した。

【方法】
 心不全患者に対するβ遮断薬とプラセボを比較したRCTの個人レベルのデータを抽出。心房細動か洞調律かの確認はベースラインの心電図で確認した。プライマリアウトカムは全死亡。ITT解析が為され、アウトカムデータは、メタ解析が為され、Cox比例ハザードモデルを用いて解析された。

【結果】
 18254人の患者が対象となり、ベースラインでは13946人(76%)が洞調律、3066人(17%)が心房細動だった。平均follow up1.5年の粗死亡率は、洞調律群で16%(2237/13945人)、心房細動群で21%(633/3064人)だった。β遮断薬内服は、洞調律群では全死亡を有意に減らした(HR 0.73:0.67-0.80,p<0.001)が、心房細動群では、全死亡を減らさなかった(HR 0.97:0.83-1.14)。心房細動群のサブグループ解析では、年齢、性別、左室機能、NYHA分類、心拍数、ベースラインの治療を調整しても全ての群で有意差を認めなかった。

f:id:tyabu7973:20141229222559j:plain

(文献より引用)

【結論】
 本研究の結果に寄れば、β遮断薬は心不全と心房細動を合併している患者の予後を改善するために、他の心拍コントロール薬剤より優先して用いるべきではない。

【批判的吟味】
・患者は平均65歳、平均EF 25%、HR 80前後です。
・メタ解析ですが、個人レベルのデータを用いて解析をしており、研究異質性も評価しましたが、I2=0%と異質性は極めて低い結果でした。
・心房細動群と洞調律群の分類は、ベースライン時の心電図であり、発作性心房細動などは十分は考慮されていません
・ただし、大きな害が無いのも事実。更に大規模な検証が必要。
COIありで、Menarini Farmaceutica Internazionaleからの資金提供。

【個人的な意見】
 これも個別化ですね。β遮断薬が全ての場合に正当化されるわけでは無いこと。実際、β遮断薬投与で具合が悪くなる人もしばしば経験しますしね。心房細動ありだと内服薬も増えてしまうわけで、使わなくても良いならそれにこしたことは無いかと。ただ、rate controlが必要な状況であれば、ジゴキシンやCCBよりはβ遮断薬を使ってしまうかもしれません。

✓ 心房細動合併HFrEF患者では、β遮断薬の死亡減少効果は認められなかった。