栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:精巣腫瘍/腎前性腎不全/食道カンジダ症

MKSAPまとめです。今週は忙しくてちょいと遅れ気味。
原稿も貯まってきたし、プレゼンも気付けば火の車。やりたいことはたくさんあるのだが・・・

精巣腫瘍 testicular tumors

❶症例
  26歳男性が、左精巣の疼痛・腫脹・有痛性のしこりを主訴に外来受診。生来健康で体重減少や発熱含めた随伴症状はなく、内服薬もなし。
 身体所見では発熱なし、BP 103/70mmHg、Pulse 52bpm。リンパ節腫脹は無く、胸部聴診も腹部診察所見も異常なし。精巣の診察では、左精巣上極に硬い3cm大の腫瘤を 触知し、同部位に疼痛を認めた。他の部分の疼痛は認めなかった。
 検査所見では、WBC 4600/μL、LDH 300U/L、AFP 39μg/L、β-hCG 853U/Lで尿所見は正常だった。
 この患者で最も適切な診断はどれか?

 ❷非セミノーマ性胚細胞腫
 非セミノーマ性肺細胞腫は、典型的には無痛の精巣腫瘤で、軽度の違和感や腫脹を伴う。精巣腫瘍がある患者では、AFPとβ-hCGを測定することが重要であり、AFP上昇は胎児腫や卵黄嚢腫瘍などの非セミノーマ性肺細胞腫を示唆する。一方、β-hCGはセミノーマもしくは非セミノーマ性腫瘍を示唆する。
 一般的には、組織検査で非セミノーマ成分が出るかAFP上昇が認められる場合には、非セミノーマ性肺細胞腫と診断され治療される。

❸他の鑑別疾患
 精巣上体炎:精巣の有痛性腫瘤や微熱のある患者では、精巣上体炎が鑑別に挙がるが、白血球数正常、尿所見正常、疼痛が結節に限局する、腫瘍マーカーの上昇が見られるなどの所見は精巣腫瘍に認められる所見である。
 血腫:血腫は外傷後には鑑別に挙がるが腫瘍マーカーの上昇は認めない。
 精巣捻転:精巣捻転の疼痛は重度になる事が多く、通常精巣上体炎よりはひどく、嘔気・嘔吐を伴う。罹患側の挙睾筋反射 cremasteric reflexの消失は捻転に対する感度が99%と非常に有用な所見である。また、精巣捻転では精巣は通常の位置よりも高い位置に存在し、精巣上体は前方内側もしくは横方向に位置が偏位する。位置は捻転回数によって異なる。

Key Point
✓ AFP上昇は精巣腫瘍が非セミノーマ性であることを示唆し、β-hCG上昇はセミノーマ性もしくは非セミノーマ性腫瘍を示唆する

Motzer RJ, Bolger GB, Boston B, et al; National Comprehensive Cancer Network. Testicular cancer. Clinical practice guidelines in oncology. J Natl Compr Canc Netw. 2006;4(10):1038-1058. PMID: 17112452

 

 

http://sexual-communication.wikispaces.com/file/view/ex-cremasteric.jpeg/219210686/400x355/ex-cremasteric.jpeg
http://sexual-communication.wikispaces.com/file/view/ex-cremasteric.jpeg/219210686/400x355/ex-cremasteric.jpegより引用)

腎前性腎不全 Prerenal azotemia

❶症例
  48歳女性が全身倦怠感、びまん性の筋力低下、立ちくらみを主訴に救急受診。野外音楽フェス後から症状が出現し、一日中太陽光に晒されていた。彼女は2年前からSLEに罹患しており、最終増悪は6ヶ月前だった。彼女はヒドロクロロチアジドでコントロール良好の高血圧があり、それ以外の内服は必要時のイブプロフェンだった。彼女は受診前にイブプロフェンを内服してきた。
 身体所見では、体温 37.1℃、BP 97/52mmHg、Pulse 98bpm、RR 12/minで、起立時に、BP 90/45mmHg、Pulse 108bpmだった。皮疹や浮腫はなく、胸部聴診所見も正常だった。検査所見は以下。

f:id:tyabu7973:20150111195711j:plain(MKSAPより引用)
 最も可能性の高い診断は何か?

 ❷腎前性腎不全とは?
  一般的には腎前性腎不全患者ではMAP 60mmHg以下になるが、CKD患者やNSAIDs内服患者では血圧が高いこともある。腎前性腎不全の患者では、水分摂取量低下を示唆するような病歴や身体所見で循環血液量減少を示唆する所見が得られる。

 ❸FENaとFEUrea
 腎前性か腎性かを判断する際に、尿勢かを用いたFENaが用いられ、FENa<1%は腎前性を示唆する。本患者ではFENaが1%を超えているが、利尿剤を内服中であり腎前性腎不全が存在したとしてもFENaを増加させることがある。
 一方、FEUreaは利尿剤の影響は少ない為、利尿剤内服中患者の脱水評価に用いることが出来る。血清および尿中のNaとUreaを測定し計算する。腎前性腎不全では、FEUrea<35%が診断の一助となる。

❹他の鑑別疾患は?
 急性間質性腎炎:急性間質性腎炎は、薬剤への過敏反応が主病態であり、尿所見では白血球円柱や好酸球が認められる
 急性尿細管壊死(ATN):ATNは、低酸素や毒素、低灌流の遷延などによって物理的な尿細管障害が起こるのが特徴。腎不全は比較的急速で古典的には顆粒円柱(muddy brown casts)を認める。腎前性腎不全が遷延すればATNを来すが、本患者では経過や尿所見が異なる。
 SLE腎症:本患者はSLE既往があるが、活動性を示唆するような尿沈渣所見に乏しい。例えば変形赤血球赤血球円柱は認めず否定的。

Key Point
✓ 腎前性腎不全患者では、水分摂取量が減少した病歴と循環血液量減少の身体所見がある。

Lameire N, Van Biesen W, Vanholder R. Acute renal failure. Lancet. 2005;365(9457):417-430. PMID: 15680458


 

 

食道カンジダEsophageal candidasis

❶症例
  33歳女性が、5週間前からの口腔内と咽頭後壁の白苔と固形物嚥下時の違和感を主訴に受診。この症状は初めてで、口腔痛なく水分や薬剤の嚥下時には症状無く、嘔気・嘔吐・下痢・発熱・悪寒・寝汗・皮膚症状は認めなかった。彼女は3年前からHIV感染があり、中等度〜重度の喘息も合併していたが、現在は吸入ステロイドで安定してる。内服薬は、テノフォビル・エントリシタビン・ラルテグラビル・吸入フルチカゾン/サルメテロール合剤。
 身体所見では、バイタルは正常で白苔は口蓋と咽頭後壁に認めた。その他は異常なく、CD4は458/μL、HIV-RNAは検出されなかった。
 最も適切なマネージメントはどれか?

 ❷食道カンジダとは
 本患者では、視診で典型的な白苔を認め口腔内カンジダが疑われる。一方で、嚥下時の症状も認めており、これは食道カンジダを示唆する。口腔カンジダは、典型的にはHIVの進行した免疫抑制(CD4<200/μL)と関連するとされているが、CD4が十分高くても他の危険因子(吸入ステロイドや広域抗菌薬)があれば起こり得る。

 ❸治療選択肢
 抗真菌薬外用口腔内カンジダ単独であれば、外用のナイスタチンやクロトリマゾール(エンペシドⓇ)で治療可能だが、食道カンジダの場合には、同じ粘膜カンジダでも外用は推奨されず内服治療が勧められている
 吸入ステロイドの中止:吸入ステロイド薬は口腔カンジダのリスクにはなるが、最も適切な治療は抗真菌薬投与になる。特に本症例の様な喘息の活動性が高い症例の場合にはICSは中止すべきではない。
 アンホテリシンB:本患者は過去に真菌症既往やフルコナゾール治療歴は無く、フルコナゾール耐性カンジダ症は考えにくい。経静脈的アンホテリシンBは毒性も高く、内服は使用できないので食道カンジダの初期治療としては使いにくい。

Key Point
✓ 口腔内カンジダ+食道カンジダ合併は、口腔内の白苔と嚥下障害が特徴的。治療はフルコナゾールの様な全身性抗真菌薬投与が必要となる。

Kaplan JE, Benson C, Holmes KH, Brooks JT, Pau A, Masur H; Centers for Disease Control and Prevention (CDC); National Institutes of Health; HIV Medicine Association of the Infectious Diseases Society of America. Guidelines for prevention and treatment of opportunistic infections in HIV-infected adults and adolescents: recommendations from CDC, the National Institutes of Health, and the HIV Medicine Association of the Infectious Diseases Society of America. MMWR Recomm Rep. 2009;58(RR-4):1-207. PMID: 19357635

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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