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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet 終末期疾患の呼吸困難感のマネージ/外科治療RCTの研究中断率と報告率/システマティックレビューの方法:PRISMA-P/持続する発熱&咳嗽&CTで肺野異常なしの症例/重症エボラ出血熱患者の治療例

BMJ

終末期疾患の呼吸困難感のマネージ 
The management of chronic breathlessness in patients with advanced and terminal illness*1

 冬になってきて心不全COPD等の方が具合を悪くするとこういった話題も大事になってきます。今週は、BMJの呼吸困難感マネージのClinical reviewから始めます。ちなみに著者はFinders大学緩和科とLund大学呼吸器科のDrでCOIはバリバリでございます。MEDLINE・Cochrane・Guidelineを「dyspnea」「breathlessness」の検索用語で検索し、Systematic reviewとメタ解析・RCT・良質な観察研究をinclusionし、主に終末期疾患患者対象の研究を統合したreviewになっています。

 さて、まずは用語なのですが「breathlessness」は直訳すると「息切れ」なんですが、もう少し幅広く「呼吸をする際に伴う不快感」と定義しています。重要なのは、あくまでこれは”感覚”なので、生理学的異常(呼吸数・呼吸機能・酸素化)とは関連しないという部分です。要は「苦しい」って言ってるけど、SpO2 98%あるんだけど・・・みたいな状況ですね。こういった症状は終末期には比較的多いとされており、末期COPDでは56-98%とか、終末期悪性腫瘍の16-77%、末期心不全で18-88%みたいな観察研究による頻度が示されていました。この呼吸困難感の症状があると、安静を好むようになり、QOLを著しく障害したり不安が増えてうつになったり、入院率増加や早期死亡とも関連することが知られています。

 重要なのはきちんと評価することで、患者自身の自己評価を基本とします。医師と患者の呼吸困難感の一致率は45%とも言われており、医者は患者のことをきちんと把握できていないとも言えます。良く使用されている評価方法は、10段階評価法で、1ポイントの違いは臨床的に有意と取りましょうとのこと。また、評価の中で実は重要なことは、原因評価と原因補正です。原因不明とされていた呼吸困難感を対象とした研究でも、徹底的な病歴・診察で55%の患者では原因同定する事が出来たとされており、やはり適切な原疾患の治療や対応が重要です。更には20%程度の患者さんでは、呼吸困難感の原因が2つ以上ある事が知られています。
 治療ですが、大きな軸として以下のポイントを考える必要があります。

・心理的サポート
・歩行補助具の調整
・基礎疾患・合併症への治療
・併存する症状(疼痛等)への治療
・呼吸困難感自体に対する治療

 
 で、現時点で呼吸困難感への治療としてLevel1のEvidenceは
COPDへの呼吸リハビリ
②終末期患者への少量オピオイド投与
の2つです。ベンゾ系薬剤や酸素療法には十分な根拠がありません。で、呼吸困難感へのUndertreatmentが問題になっています。これは先日のGUPAでも取り上げられていました。例えば呼吸リハビリについては、コクランで12研究のSMでは、通常ケアと比較して1.1ポイント呼吸困難感を改善しています。また、呼吸・理学・作業・緩和の多角的サポートにより終末期患者さんの呼吸困難を改善したというRCTもあります。オピオイド使用は9つのRCT(全116人)のメタ解析では症状を20%程度減らすとされていますが、対象患者の多くは終末期COPDであることには注意が必要です。容量については、治療反応する人の70%は10mg/日で反応するため、まずは塩酸モルヒネ錠 10mg/日内服から開始するのが良いのでは?と。また、末期患者へのlow dose opioidは基本的に安全であるとコメントされていました。

✓ 終末期患者の呼吸困難感を適切に認知・評価し対応する。原疾患への対応や原因検索と共に、呼吸リハビリや少量オピオイド投与は症状の緩和に繋がる
 

外科治療RCTの研究中断率と報告率 
Discontinuation and non-publication of surgical randomised controlled tirals: observational study*2

 BMJはこの手のネタ本当に好きですね。今回は外科領域で行われたRCTがどの程度中断したり報告されなかったりかを調査した横断観察研究です。期間は2008年1月〜2009年12月で、Clinical Trial Govにregistryされた外科RCTとしています。外科RCTの定義については、「surgery」で検索したと。で、アウトカムを①研究中断率、②研究終了しているが報告されていない率としています。

 結果ですが、395件のRCTが検索されました。そのうち21%の81/395件のstudyが研究中断されています。中断理由として最も多いのが、症例が集まらない(44%,36/81)でした。314件は研究終了までこぎ着けていますが、平均4.9年経過した時点での報告率は66%(208/314)でした。106件のstudyは終了したけれど報告されていないということになります。

 実はサブ解析を色々やっているのですが、興味深かったのが企業スポンサーと非企業スポンサーの比較です。研究中断については、企業スポンサーと非企業スポンサーではOR 0.91(0.54-1.55)と関係しませんでしたが、報告されない事に関しては、有意に企業スポンサーの方が報告されない結果(OR 0.43:0.26-0.72)でした。うーむ、企業スポンサーの闇を垣間見た様な気もしますね。結果のpositive・negativeについては、報告されていないため分かりませんが、企業スポンサーで結果が出ていれば報告するでしょうから・・・・うわやめろなにをsr...
 
✓ 外科系RCTで研究が途中中断する割合は20%で、終了しても報告されない割合は35%程度


ステマティックレビューの方法:PRISMA-P
Preferred reporting items for systematic review and meta-analysis protocols(PRISMA-P)2015: elaboration and explanation*3

 最近システマティックレビューが出来るようになることは、臨床医にとって必要なスキルの一つではないかなと感じています。一方で、もちろんめっちゃ大変そう・・・とは思うわけですが。BMJに今回PRISMA-Protocolsの2015年版が出ていました。

 2005年6月にレビュー著者・方法論学者・臨床医・医学雑誌編集者・一般人を含む実行委員会による29日間の国際会議がオタワで開かれ、それ以前にシステマティックレビューの評価方法として用いられていたQUOROMチェックリストが修正・拡充されました。この修正・拡充によって発表されたのがPRISMA声明です。要はシステマティックレビューをするときに注意すべき事の型を作ったということですね。興味のある方は少し前のものではありますが、日本語でまとめてある文献があったのでご覧ください。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/54/5/54_5_254/_pdf

 現状のシステマティックレビューの問題点として、多くのreviewがsystematicではなくselectiveになっていたり、同じ作業を複数でやっていてほぼ複製としか言い様のないシステマティックレビューが多数でているなどが指摘されています。恣意性が働きやすい作業であり、reviewを始める前にきちんとしたプロトコールを作成し、registryを行ってからreviewしましょうというルール作りを薦めています。本文めっちゃ長くて読み切らないので、必要最低限な17項目を以下に掲示しておきます。興味のある人、必要に迫られた人は是非読んでみましょう。

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(本文より引用)
✓ システマティックレビューでは恣意性をなくし、事前に作成したプロトコール通りに実施することが重要で、それについての原則をまとめたものがPRISMA-Pである



■Lancet■

持続する発熱&咳嗽&CTで肺野異常なしの症例 
Fever and cough without pulmonary abnormalities on CT: relapsing polychondritis restricted to the airways*4

 おいおい日本人case report狙いすぎだろ〜!!って突っ込み入れたいくらいラッシュですね。それにしても千葉大です。生坂先生です。去年も何本か見た気がするなあ。CT陰性腸腰筋膿瘍とか。今回も耳病変陰性の再発性多発軟骨炎でした。

 症例は47歳男性で3週間持続する発熱・咳嗽。受診前に前医でLVFX・CTRX投与され症状が改善しませんとのこと。既往は特に何も無くて、喫煙歴あり(30PackYear)で常用薬はなし。随伴症状として、咽頭痛・嚥下時痛・頚部痛・嗄声・stridor・関節痛・体重減少なし。胸部聴診では異常なく、耳・鼻・目・関節の症状はないものの、甲状軟骨下の気管に圧痛を認めています。CT上肺野病変を認めませんでしたが、気管壁の肥厚を認めPET/CTで同部位への集積を認め、気管炎が証明され、追加検査で抗コラーゲン抗体typeⅡが157EU/mlと上昇しており、ANCAは陰性で、再発性多発軟骨炎の診断となっています。PSL 60mg/日が開始され、速やかに症状は改善しています。

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(本文より引用)

 考察も勉強になりました。持続する発熱&咳嗽でCTで正常だった場合の鑑別に考慮する疾患として、
副鼻腔炎
・サルコイドーシス
・再発性多発軟骨炎
・EGPによる喘息
・血管内リンパ腫
・大血管炎
だそうです。ちなみに気管の生検所見については、1979年に提唱されたDamianiの診断基準では病理学的証明が必要とされていましたが、最近のシステマティックレビューでは、特異的な所見がないため必ずしも診断確定に生検は必須では無く、他疾患の除外が重要とされていました。

✓ CTで肺野病変のない持続性の発熱・咳嗽では再発性多発軟骨炎も鑑別に


重症エボラ出血熱患者の治療例 
Severe Ebola virus disease with vascular leakage and multiorgan failure: treatment of a patient in intensive care*5

 エボラ関連の記事には時折目を通すようにしています。今回は重症エボラ患者さんの治療報告例がありましたのでシェアしたいと思います。西アフリカのepidemicによって、支援している医療者が感染したという報告がしばしば見られます。彼らの治療の際に、アメリカやヨーロッパなどの最適かつ高度医療が提供出来る施設での治療報告例が今後のエボラ対策に役立つかもしれないとされています。

 症例は38歳の男性医師で、シエラレオネエボラ出血熱支援中に感染し、発病5日後にドイツのフランクフルト大学病院に搬送されています。高度隔離病棟に入院し、72時間後には多臓器不全(肺・腎・消化管)を呈しています。肺水腫とvascular leak syndromeによる呼吸不全に対しては人工呼吸器管理が必要となった。また、vascular leak syndromeに対するフィブリン由来ペプチドであるFX06(MChE-F4Pharma,Vienna,Austria)の3日間投与も併用された。FX06投与後にEbola virus特異抗原とウイルス量は低下し、vascular leak syndromeと呼吸関連パラメーターは改善を認めた。同時に併用した薬剤は広域スペクトラムの抗菌薬と腎代替療法を必要としたが、最終的にはfull revcoverした。

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(本文より引用)
 ブラボー!ですね。もちろんFX06が良いのか集学的治療が良いのか、検証は難しいとは思いますが、この一例の積み重ねが重要なんだと思います。退院の時はもう涙無しではいられないですよね。自分ができることは目の前の患者さんなので、そこを一生懸命頑張ります。

✓ エボラ出血熱の集学的治療の治癒例。FX06というフィブリン由来ペプチドが効果があったかもしれない