栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:二次性アカラシア/purer motor hemiparesis/Virchow-Robin腔の拡大

今週は月曜休みだったので木曜のみ。
地域医療実習の5年生も参加してでしたが、ちょっと症例数が多すぎてゆっくり解説してあげられなかったのが申し訳なかったです。

二次性アカラシア Secondary achalasia

  アカラシアは稀ですが時折出会う消化器疾患です。意外と症状と上手くつきあえる人も多くて、若い頃から症状はあるけど、診断は結構年齢が上になってから・・・ということは良くあるのだそうです。ちなみに体重減少を合併することも意外に少ないのだとか。更に内視鏡検査が普及すると、食道造影検査よりは分かりにくくなるかもしれません。


 で、今回はそんな食道アカラシアの鑑別です。実は通常私達が知っている食道アカラシアはprimary achalasiaであり、それ以外に鑑別すべき疾患として二次性アカラシアsecondary achalasiaがあるのだそうです。Uptodateには、鑑別すべきSecondary achalasiaとして以下の疾患が記載されていました。

悪性腫瘍 Malignancy, especially gastric carcinoma
Chagas病 Chagas disease
アミロイドーシス Amyloidosis
サルコイドーシス Sarcoidosis
神経線維腫 Neurofibromatosis
好酸球性胃腸炎 Eosinophilic gastroenteritis
多発性内分泌腫瘍(MEN) 2B Multiple endocrine neoplasia, type 2B
若年性Sjogren症候群 Juvenile Sjögren's syndrome with achalasia and gastric hypersecretion
慢性特発性腸管偽閉塞 Chronic idiopathic intestinal pseudo-obstruction
Fabry病 Anderson-Fabry disease

(Uptodate:Clinical manifestations and diagnosis of achalasiaより引用)
 
 悪性腫瘍が原因になる場合には、胃癌が多い様ですが、食道癌・肺癌・リンパ腫なども原因となり、Auerbach神経叢への浸潤なども考慮すべきなんだそうです。ちなみに転移であれば何でもあり。
 膠原病では、ここには書いてないですが、有名なのは強皮症ですよね。他には、RA・MCTD・SLEでも起こっても良い様です。重症筋無力症や緊張性筋ジストロフィーも鑑別とな。ちなみにこれ以外に、低収縮性食道(hypocontructing esophagus)と言う概念もあるんだとか。

 二次性を疑う基準として、Tuckerらの基準として
①55歳以上の発症
②短い有症状期間(一年以内)
③著明な体重減少
を三徴としてあげています。
http://annals.org/article.aspx?articleid=692275


✓ 二次性の食道アカラシアの鑑別診断は多彩。Tucker基準を用いるべし。

 

 

Pure moter hemiparesis 

 冬になり脳梗塞が増えてきています。脳梗塞から神経所見を学ぼうキャンペーンをひたすらやっているせいか、神経所見から病巣を同定する事にかなり気合いを入れている輩がいるのが当院でしょうか?まあ、今回自分の復習も込めてまとめてみます。
 
 いわゆるLacunar症候群と呼ばれる一連の症候群は、感度・特異度が高く、症候群を満たせばラクナ梗塞と言えるよね?ということで注目されています。以下に有名なラクナ梗塞を列挙してみますが、これを満たすとラクナ梗塞に対する走査特性が、感度95%、特異度93%とかなり高い事が報告されています。
http://stroke.ahajournals.org/content/22/11/1374.long
 他にもトルコからの検証でも感度83.7%、特異度96.5%とvalidationもされています。
http://journals.tubitak.gov.tr/medical/issues/sag-09-39-4/sag-39-4-16-0712-6.pdf

①Pure motor hemiparesis(hemiplegia)
②Pure sensory storoke
③Ataxic hemiparesis
④Sensorimotor stroke
⑤Dysarythria-clumsy hand syndrome

の5つです。今回はPure motor hemiparesisを取り上げてみます。
 

 Pure motor hemiparesisは最も頻度の高いラクナ症候群で、45-57%程度と報告されています。基本的には、反対側の顔面・上肢・下肢の筋力低下が特徴であり、かつ皮質症状(失語・失認・失行・半側空間無視同名半盲)が無いことが重要です。すなわち皮質症状をきちんと診ないと診断できないことにもなります。

 この場合、多くが中大脳動脈の分枝であるレンズ核線条体動脈による梗塞であり、放線冠から内包後脚付近が病巣になり、部位によって上肢・下肢のどちらに麻痺が強く出るかが異なります。似たような梗塞を来す病変部位として橋底部がありますが、橋梗塞は交代性麻痺を来すため、顔面と上下肢の麻痺側が異なる事で鑑別が出来るとされます。ただ、橋の部位によっては、顔面も反対側になることもあり、これのみでの鑑別は難しいかもしれません。

 上肢のみの筋力低下と構音障害の場合に、鑑別になるのはDysarythria-clumsy hand syndromeですが、これは非常にレアでラクナ症候群の2-6%程度とされています。顔面麻痺と構音障害・嚥下障害と上肢のわずかな筋力低下と巧緻運動障害が特徴であり、巧緻運動障害の評価をきちんとする必要があります。巧緻運動は、「箸が持ちにくい」「ボタンを留めにくい」「字が上手く書けない」等。身体所見としては、Alternative motion rate:AMR(手指の素早い屈曲・伸展運動)が有用で、いわゆるグーパーですね。10秒間で正常は25回以上だそうです。
 

✓ Pure motor hemiparesisを押さえればラクナ梗塞の臨床診断に一歩近づく。皮質症状・巧緻運動もきちんと評価する。

 

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Virchow-Robin腔の拡大  Large Virchow-Robin space

 これは画像の問題。血管周囲腔のことをVirchow-Robin腔と呼ぶらしく、脳実質内を走行する小血管を取り囲む領域と定義されています。MRI T2で線状の高信号を呈しており、ラクナ梗塞と間違われることもあります。好発部位としては、大脳基底核・海馬・中脳に加えて、前頭葉や頭頂葉大脳白質に多いとされています。

 このVirchow-Robin腔が、脳の萎縮と共に血管周囲腔が拡大してくる為に目立つことがあるそうです。以下のサイトに細かく掲載されていましたが、まさにこの画像の通り、ヒゲの様な高信号が多発していました。

f:id:tyabu7973:20150117215330j:plain

(血管周囲腔のMRI画像所見(perivascular space、海馬溝遺残) | 遠隔画像診断UP TO DATEより引用)

 

✓ T2で線状の高信号を多数認めた場合には、脳萎縮などに伴うVirchow-Robin腔の拡大を疑う。