栃木県の総合内科医のブログ

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論文:血糖厳密管理の長期予後 DCCT研究その後

血糖厳密管理の長期予後 DCCT研究 
Association between 7 years of intensive treatment of type 1 diabetes and long-term mortality*1

JAMA. 2015;313(1):45-53. doi:10.1001/jama.2014.16107

【背景】
 1型糖尿病患者の血糖厳格治療後の死亡への影響は明確に確立されていない

【目的】
 血糖厳格治療群と通常治療群の長期follow upによって死亡率に違いがあるかどうかを評価する。

【研究デザイン】
 1983-1993年に行われたDiabetes Control and Complications Trial(DCCT)研究終了後に、多施設(アメリカとカナダの27施設)観察研究で27年後のfollow upによるデータを解析した。Epidemiology of Diabetes Control and Complications(EDIC)研究。患者は13-39歳の1441人の糖尿病患者で、糖尿病罹病期間は1-15年、合併症はないかあっても早期の微小血管合併症程度。高血圧や心血管疾患、致死的疾患は除外。

【介入】
 患者は血糖厳格治療群 711人と通常治療群 730人に振り分けられた。厳格治療群の血糖目標はHbA1c<7%、通常治療群はHbA1c<9%だった。目標として、症候性の低血糖や高血糖を避けるようにコントロールされた。6.5年経過したDCCT研究終了時に、介入についてはそれぞれの群に知らされ、その後の血糖管理はそれぞれの医師に任された。

【メインアウトカム】
 27年間のfollow upで年に1回、全死亡および原因特異的死亡率が家族や友人・電子カルテによって評価された。

【結果】
 follow upは1429人でfollow up率99.2%だった。107人が死亡し、64人が通常治療群、43人が厳格治療群だった。絶対危険差は-109/10万人年(-208 to -1)であり、厳格治療群の方が死亡率が少なかった(HR 0.67:0.46-0.99)。死亡原因で多かったのが心血管疾患 24人(22.4%)、悪性腫瘍 21人(19.6%)、急性糖尿病関連合併症 19人(17.8%)、事故や自殺 18人(16.8%)だった。全死亡と関連したのは、HbA1c 10%以上(HR 1.56:1.35-1.81)とアルブミン尿 40mg/日以上(HR 2.20:1.46-3.31)だった。

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(文献より引用)

【結論】
 1型糖尿病患者に対する6.5年の厳格治療は、通常治療と比較して27年後のfollow up時点でも中等度の全死亡率低下と関連していた。

【批判的吟味】
・さて有名なDCCT研究の27年後follow up研究です。EDICはDCCTのfollow upだったんですね。
・まずは脅威のfollow up率。27年経って99.2%follow upって凄いですねえ。こうゆう大規模コホートをしっかり組むと長期予後を考えるのに非常に有用なデータになることが良く分かります。
・患者は1型糖尿病なので、そういった意味では自分達が普段多くみる2型糖尿病患者さんにはそのまま外挿は難しいですね。
・治療内容は原則インスリンであり、通常治療群は1日1−2回のインスリン注射で、厳格治療群は1日3回以上のインスリン注射または持続インスリン注入療法です。現在とはだいぶ治療内容が異なっていますね。
・follow upでは両群の血糖コントロールの差はなくなっており、HbA1c 8%前後。

【個人的な意見】
 いわゆるメタボリックメモリーとかlegacy effectと呼ばれるものですね。厳密管理と言いつつ、7%前後のコントロールですし、通常治療群のコントロールが9%前後ですから、厳格コントロールが良いというよりは、血糖高めで6.5年も続いちゃうのが良くないというメッセージととれます。これがメタボリックメモリーの語源なのかもしれません。
 少なくとも、現状の糖尿病管理で、9%で推移していく可能性があるのは、高齢者であり27年後の予後を気にする必要は無いようにも思います。まあ、そうだよね〜という結果。特にこの結果で何か行動が変わるわけではないとは思います。


✓ 1型糖尿病患者に対する初期のインスリン複数注射による厳格治療は、27年後の死亡率を改善した