栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:HIV感染症の診断/中枢性睡眠時無呼吸症候群/多発性骨髄腫治療中の深部静脈血栓

MKSAPまとめです。
というか、今週私寝坊したのでここで復習。
寝坊癖は学生時代からなかなか抜けません(涙)。

HIV感染症の診断 Diagnosis of HIV infction

❶症例
  24歳女性が、2-3週間持続するメキシコ帰りの発熱・悪寒・食欲心・倦怠感を主訴に救急外来を受診。咽頭痛と口腔内の疼痛を伴う口内炎を認め、体幹と四肢にび漫性の皮疹を認めた。性活動は活発で、この一年間に複数の性的パートナーがいた。
 身体所見では、体温 38.2℃、BP 130/78mmHg、Pulse 99bpm、RR 12/min。皮疹は、体幹と四肢近位部に樹枝状の紅斑と丘疹が拡がっており、口腔内にも3-4カ所の浅いびらんを認めていた。また、鎖骨上と腋窩に無痛性リンパ節腫脹を認め、軽度の扁桃肥大、咽頭後壁のわずかな発赤があるも浸出液はなし。陰部潰瘍や滲出、関節腫張・疼痛は認めなかった。
 この患者の診断の為に必要な検査はどれか?

 ❷急性HIV感染症
 患者は、急性のウイルス症候群の病態を呈している。彼女の性活動歴からは、急性HIV感染症を考慮する必要がある。HIV抗体検査は早期には偽陽性となるため、急性感染の証明のためにはウイルス量の検査が必要である。急性HIV感染症は、非特異的な疾患で、体幹や四肢近位部の皮疹が見られるかもしれない。また、しばしば口腔内びらんや潰瘍を認める。

 これは、第2期梅毒に典型的な症状とも類似しており、梅毒感染後数週間〜数ヶ月間経過した際に見られる。また、陰部潰瘍もしばしば合併する。最も特徴的な所見は、手掌や踵にも出現する球状丘疹状の発疹(maculopapular rash)で、およそ60%に認められる。その他の所見としては、リンパ節腫脹・発熱・倦怠感・食欲不振が起こる。これらの症状が出ている時期には、RPRも陽性となる。

❸その他の検査
 腸チフス検査:腸チフスによる発熱は基本的に非特異的で、病原体摂取後1-3週間程度経過してから発症する。腹痛や咳嗽、悪寒が起こり得る。下痢は初期には一般的ではないが、症状が進行するにつれて悪化する。症状出現後2週間目には、体幹や腹部に点状皮疹・わずかなサーモンカラー疹が出現してくるのが特徴的で、診断は血液や尿・便・時折骨髄からSalmonella typhiを検出することである。
 異好抗体試験:異好抗体検査は、EBウイルス感染の診断に有用である。EBV感染では、ほとんどの患者に咽頭炎と頚部リンパ節腫脹を認める。倦怠感や頭痛、微熱はこっらの症状に先行して発症する。有痛性の後頚部リンパ節腫脹が一般的で、皮疹は稀だが、アミノペニシリン系抗菌薬使用で出現することがある。
 パルボウイルスB19抗体検査:パルボウイルスB19感染の症状は、早期関節リウマチや全身性エリテマトーデスとの鑑別が必要となる。最初の一週目はインフルエンザ様症状を来し、皮疹や関節痛は2週目以降に出現する。
 伝染性紅斑は、子供ではしばしば見られるが、成人では稀で非特異的な皮疹を呈す。口腔内潰瘍やリンパ節腫脹は合併しないことが多く、血清PVB19 IgM抗体の検出で診断する。

Key Point
✓ 急性のHIV感染症患者では、体幹・四肢近位部・顔面に無症候性紅斑と小丘疹を認め、口腔内アフタや非特異的な発熱・食欲不振・倦怠感・嘔気・下痢などの症状を合併する。

Apoola A, Ahmad S, Radcliffe K. Primary HIV infection. Int J STD AIDS. 2002;13:71-78. PMID: 11839160

 

中枢性睡眠時無呼吸症候群 Central sleep apnea

❶症例
  67歳男性が、3ヶ月前から睡眠中の呼吸停止があるのを妻から指摘されて受診した。いびきはほとんどないが、時折夜間発作性呼吸困難があった。通常の睡眠時間は午後10:30-午前6:00までで、不眠や日中の眠気は伴わない。最近心不全の診断を受け、内服薬はアスピリン・リシノプリル・アトルバスタチン。メトプロロール。
 身体所見では、体温 36.6℃、BP 128/78mmHg、Pulse 88bpmで、呼吸数 16/min、BMI 24だった。心臓聴診ではⅢ音を聴取したが心雑音はなく、肺野は概ね異常は無かったが、両側肺底部にわずかにcracklesを聴取した。下腿浮腫あり。PSG検査では、古典的なチェーン・ストークス呼吸で、酸素飽和度は88%以上だった。
 最も適切な治療はどれか?

 ❷中枢性睡眠時無呼吸とは?
  最も適切な治療は利尿剤である。患者はチェーン・ストークス呼吸を呈している中枢性睡眠時無呼吸で心不全を合併している。中枢性睡眠時無呼吸では、呼吸停止は認められるが、いびきは少なく、日中の眠気や過体重、咽喉頭所見での閉塞は見られないことが多い。

 中枢性睡眠時無呼吸/チェーン・ストークス呼吸は、心不全の結果として、過換気が起こる事で発症すると考えられている。睡眠時無呼吸の重症度は心不全の重症度と相関すると言われ、心不全の治療によって睡眠時無呼吸の症状も改善すると報告されている。

 適切な初期治療は心不全に対する治療ということになる。心不全の病態にもよるが、本患者では、crackles、Ⅲ音、下腿浮腫があり、利尿剤による体液貯留の改善が最も重要である。これらの治療で十分な改善が得られない場合に、他の治療を検討する必要がある。

 ❸他の治療法は?
 ASV内服治療でも持続する中枢性睡眠時無呼吸症候群の場合には、Adaptive servoventilation(ASV)などの陽圧換気はしばしば効果的だが、臨床データは十分ではない。コンピュータ制御のASVは患者の呼吸努力に同期して、圧サポートを提供するシステム
 CPAP持続的陽圧換気(Continuous positive airway pressure:CPAP)は、閉塞性障害との合併の場合には有効だが、中枢性睡眠時無呼吸の場合には症状増悪を来す事がある
 酸素投与:PSGの結果、睡眠中の低酸素血症の合併はなかった為、酸素投与は不要である。ただし、心疾患によってガス交換が障害され、SpO2が低下しているような場合には適応になる。
 マウスピース等の口腔器具:これは閉塞性睡眠時無呼吸の場合には有用だが、中枢性では用いられない。

Key Point
✓ 心不全を合併した中枢性睡眠時無呼吸の治療で最も適切なのは、心機能を改善する薬物療法である

Yumino D, Bradley TD. Central sleep apnea and Cheyne-Stokes respiration. Proc Am Thorac Soc. 2008;5(2):226-236. PMID: 18250216


 

 

多発性骨髄腫治療中の深部静脈血栓症 Deep Venous thromboembolism during treatment for multiple myeloma

❶症例
  72歳女性が突然発症の呼吸困難が24時間以内に急速に悪化しているとの主訴で救急外来を受診した。乾性咳嗽はあるが胸痛・発熱・悪寒・戦慄なし。既往歴として、3年前に診断された多発性骨髄腫があり、骨髄腫腎を合併。6週間前に骨髄腫再発による左大腿骨頚部骨折を受傷し、髄内固定術を施行された。術後からレナリドミドと高容量デキサメタゾンによる治療が開始された。その他の内服薬は、オキシコドン・エノキサパリン 40mg皮下注射を1日1回投与。
 身体所見では体温 37.3℃、BP 164/92mmHg、Pulse 124bpmで、呼吸数 20/min、BMI 36だった。SpO2 90%(RA安静時)で、労作時には78%(RA)まで低下。頻呼吸も伴い、胸部聴診では、呼吸音は正常で、頻脈はあるが心雑音やgallop rhyth、摩擦音等は聞かれなかった。両側膝下に1+程度の下腿圧痕性浮腫を認めた。

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(本文より引用)
 24時間蓄尿の蛋白電気泳動や免疫電気泳動では、レナリドミド・高容量デキサメサゾン治療を開始前の時点で、モノクローナルな遊離λ軽鎖が1810mg/日と上昇しており、CKMBとTnTは陰性だった。
 胸部レントゲンでは右側胸水貯留を認め、心電図では頻脈はあるがST-T波変化を認めなかった。下肢静脈超音波では、明らかな血栓を認めなかった。

本患者で適切な検査はどれか?

 ❷多発性骨髄腫患者の深部静脈血栓
 本患者は肺血栓塞栓症の検査前確率が非常に高い患者である。再発性多発性骨髄腫患者に対するレナリドミド・高容量デキサメサゾン治療では8-16%の高頻度に静脈血栓塞栓症を合併し、リスクは新規発症の深部静脈血栓症にも及ぶ。
 サリドマイドやレナリドミドの血栓症は、高容量ステロイドを併用することで、そのリスクが更に高まる。本患者では、深部静脈血栓の既往、過粘稠度症候群、中心静脈カテーテルの存在、最近の手術などのリスクがあり、低分子ヘパリンを投与しているものの、全てのリスクを相殺することは不可能である。このような状況の患者に対する深部静脈血栓症予防のエビデンスは十分ではない。

 ❸検査比較
 換気血流シンチ本患者では骨髄腫腎を合併しており、造影剤の腎毒性を考慮すると、造影剤を使用しない換気血流シンチが望ましい。
 造影CT:静脈造影剤は、もともと腎不全があり遊離λ軽鎖の高負荷がある腎臓を持つ様な本患者には使用しにくい。
 血管造影:基本的には上記造影剤使用リスクと同等。

Key Point
✓ レナリドミドと高容量デキサメタゾンの併用療法は多発性骨髄腫患者の深部静脈血栓を増加させる

Palumbo A, Rajkumar SV, Dimopoulos MA, et al. Prevention of thalidomide- and lenalidomide-associated thrombosis in myeloma. Leukemia. 2008;22(2):414-423. PMID: 18094721

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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