栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:十二指腸憩室出血/高齢者の類天疱瘡/外傷性脊髄空洞症

さてさて、最近めちゃめちゃ忙しいので火の車状態の内科病棟。
タスクも山程残っていますが、一つずつ着実にこなしていこうと思います。
ブログ更新している場合ではない??
カンファで出た話題をまとめ直してみます。

十二指腸憩室出血 Duodenal diverticulum bleeding

  内視鏡検査を行っていると、傍乳頭部などに憩室を認めることはしばしばあります。十二指腸憩室は憩室疾患としては、大腸憩室に次いで多く、仮性憩室が多いことが知られています。

 発見率は報告にもよりますが、内視鏡施行時に2-3%程度と比較的高頻度で、部位としては下行部内側が最も多い様です。通常は無症状ですが、稀に、出血・憩室炎・穿孔などの合併症を来します。憩室の大きさと合併症頻度は相関するのだそうで、憩室の大きさが10mm以上になると合併症リスクが上がるのだそうです。

 消化管出血の原因としては稀な方ですが、十二指腸からのかなり急速な出血を来す為、吐血はせずに黒色便・血便やショックの病態で来院することがあり、注意が必要です。歴史的には以前は全例手術や動脈塞栓術が施行されていた様ですが、近年は内視鏡的止血術が増えている模様です。実際、血管造影や出血シンチでもある程度の勢いで出血していないと、検出できないので診断には内視鏡が重要。
 
 消化管出血疑いで内視鏡を施行したものの、胃内には病変はないけど・・・という時にはDiurlafoy病変と一緒に注意して見る必要があるかもしれませんね。

✓ 上部消化管出血の鑑別に十二指腸憩室出血を考慮しておく。10mm以上に注意

 

 

高齢者の類天疱瘡 bullous pemphigoid in elderly

 高齢者中心の診療を展開しておりますので、必然的に高齢者に多い他科疾患とも遭遇する機会が増えます。何と言っても70-90歳台の患者さんに多く、内服ステロイドが使われると、糖尿病になり皮膚が脆弱になり・・・という流れになり、大変難渋します。以前もカンファレポートで取り上げました。
 

 今回、Uptodateで調べてみると水疱性類天疱瘡の”First-line therapy”にTopical corticosteroidsとありました。第一選択が外用ステロイド剤だとのこと。根拠となった論文は、

 

A Comparison of Oral and Topical Corticosteroids in Patients with Bullous Pemphigoid

N Engl J Med. 2002;346(5):321.

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa011592

という2002年のNEJMに掲載された多施設RCTで、全身性ステロイド内服とステロイド外用を比較したstudyです。
 論文のPECOですが、
P:中等度から重症の類天疱瘡患者341人
E:ステロイド軟膏群(40g/日!2回/日)
C:ステロイド内服群(中等症には0.5mg/kg、重症には1mg/kg)
O:生存率
 となっています。ちなみに中等症と重症の境界は1週間以内の新規水疱数で10個以上を重症と定義しています。また、軟膏はClobetasolで、何だろうと思ったらデルモベートⓇでした・・・
 結果は、
①1年後死亡(重症例)
ステロイド軟膏群:76%
ステロイド内服群:58%
②治療反応(21日目までの寛解率)
ステロイド軟膏群:99%
ステロイド内服群:91%
③合併症頻度(肺炎/感染症/糖尿病/心筋梗塞/精神症状/脳卒中/DVT/骨折等)
ステロイド軟膏群:29%
ステロイド内服群:54%

  このstudyの微妙なところは、重症例では上記3つの全てで有意差を持って軟膏群が良かったのですが、中等症では有意差がつかず同等だったということでしょうか。まあ、それでも同等なので、個人的にはステロイドを飲むくらいなら軟膏を塗りたいなとは思います・・・あとは、軟膏の量と皮膚合併症でしょうか。40gってものすごい量なので。ちなみにもう少し少ない量10-20gで検証した研究の報告もありました。
 

✓ 重症類天疱瘡に対するステロイドは、内服よりも外用の方が効果が高く副作用が少ないというRCTがある

 

全ての診療科で役立つ皮膚診療のコツ―これだけは知っておきたい症例60

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外傷性脊髄空洞症  Traumatic Syringomyelia

 実際にはほとんど遭遇したことはありませんが、カンファで話題になっていました。一般的に最も多いのは、Chiari奇形に伴う物で約半数を占めるとされてますが、それ以外には、繋留脊髄、頭蓋頸椎移行部の骨奇形などと一緒に、外傷後脊髄空洞症という病態があるのだそうです。
  
 ちょっと調べてみると、外傷後2ヶ月程度の比較的短期間で発症する事もあれば、数十年経過してから出てくることもあるとのこと。病歴の確認は重要です。リハビリ経過中に発症する事もあると。
 
 脊髄内に嚢腫が形成され、経時的に拡大、徐々に損傷部位前後の脊髄分節へと病変が拡大していくのだそうです。症状は、巧緻運動障害や手の痺れ・疼痛が主であり、治療は手術で空洞内にシャント留置してドレナージするのが最も効果的なのだそうです。空洞-くも膜下腔シャント術が行われるのだとか。頭の片隅に入れつつ、外傷既往の病歴を聴取することが重要ですね。

 

✓ 外傷性脊髄空洞症は忘れた頃にやってくる