栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:急性の動眼神経麻痺/ワーファリンの卒業?/下垂体卒中

今週は出張もあり、月曜日しかカンファ参加出来ませんでしたが、月曜だけでもかなり濃いぃカンファでした。木曜どうだったんだろ・・・
いやまあ、みなさん本当によく頑張ります。
パワーをもらいますね、ほんとに。

 

急性の動眼神経麻痺の鑑別 DDx of acute oculomoter nerve palsy

  動眼神経麻痺が急に出た!って恐ろしい状況ではありますよね。せっかくなので、少しまとめてみましょう、動眼神経麻痺の鑑別。
 とはいってもですね。兎にも角にも動脈瘤くも膜下出血だなあと再確認。特に動脈瘤で急に動眼神経麻痺が来ている際には破裂している可能性もあり、重々注意が必要です。動眼神経核付近だと、脳梗塞脳出血に加えて、糖尿病や髄膜炎、多発性硬化症やTolosa-Hunt症候群や海綿静脈洞瘻など稀な疾患も鑑別です。
 
 動眼神経麻痺では、症状として
①眼瞼下垂・斜視・複視(外眼筋麻痺)
②散瞳・対光反射消失・調節反射消失(内眼筋麻痺)
 がありますが、疾患よって症状の出方に特徴があり、動脈瘤に伴う場合には、散瞳や対光反射消失が先行し、その後眼瞼下垂などの外眼筋麻痺が起こると言われています。一方で糖尿病に伴う場合には、外眼筋麻痺がメインで起こり易く、瞳孔症状がスペアされる(pupillary sparing)が起こると言われています。

✓ 急性の動眼神経麻痺を診た時の鑑別を整理しておく

 

 

ワーファリンの卒業? Graduation from warfarin

  ワーファリンの止め時はいつか?という話題。色々な状況があり、出血イベントで入院した・・・というのは一番分かりやすい止め時ではあります。ただ、出血しても再開ということもありますよね。結局risk-benefitの見積もりによる訳で、心房細動であれば、CHADS2-vascやHASBLED scoreなどで天秤にかける必要があります。

 出血すると感情的には「止めましょう」って話になりますし、昨今の90歳代〜100歳代の心房細動に抗凝固しますか?という話題は何とも言えませんが、こんなstudyがありましたので、ご紹介。

Risk of Thromboembolism, Recurrent Hemorrhage, and Death After Warfarin Therapy Interruption
for Gastrointestinal Tract Bleeding

Arch Intern Med. 2012;172(19):1484-1491.

P:ワーファリン内服中に消化管出血を起こした患者442人
E:ワーファリン継続群
C:ワーファリン中止群
O:90日後の①血栓症・②消化管出血再発・③死亡
T:Retrospective cohort
結果:
血栓症 継続群 1人 中止群 10人 HR 0.05(95%CI:0.01-0.58)
②消化管出血再発 継続群 26人 中止群 10人 HR 1.32(95%CI:0.50-3.57)
③死亡 継続群 15人 中止群 37人 HR 0.31(95%CI:0.15-0.62)

 なるほど〜。中止したままだと、血栓・死亡は有意に増えて再出血は減る傾向だけど有意差なしと。結構衝撃のデータ。ちなみに平均年齢74.2歳の研究なので、そもそもCHADS2-vasc的にはもうすぐ1点プラスで適応ですけど・・・という世代。まあ、言うなれば若手です(苦笑)。
 あとはRCTではないことや死亡の原因は悪性腫瘍感染症なので、ある程度交絡因子補正はされてはいるものの、ワーファリン中止の理由が重症者・frailな方だった可能性はあります。
 正直、中止で血栓、継続で出血どちらも経験があるので悩みますね。

✓ ワーファリンの中止はrisk-benefitで考慮する必要があるが、再開しないと大出血や死亡が増えるかもという研究がある

 

 

下垂体卒中  Pituitary apoplexy

 画像を見るときにはルールを決めて、ステマティックに観察していくことが重要と言われています。今回は下垂体の話題。CTで下垂体を意識して見ていますか?と。実際のところ、下垂体病変がCTで見つかる頻度はかなり低い訳ですが、時折出会うことがあるので注意は必要です。
  
 まず、一般的な話として下垂体卒中は、急性の下垂体血流障害によって起こる症候群であり、有名なのは出血性梗塞ですが、出血を伴わないものもあります。症状として、突然発症の頭痛・視力障害・眼痛・眼筋運動障害・意識障害などが重要です。基礎疾患としては、下垂体腺腫・妊娠・分娩後・高血圧など。負荷試験によって下垂体刺激で誘発されることもあると。治療は手術での摘出。
 
 で、画像ですが、出血の有無・Phaseによって大きく異なります。単純CTで指摘されることもありますが、大きさは8mmまでと言われており、それを超えると腫大です。※ただし、妊婦さんや思春期女性では12mm程度まで大きくなることも。
 微妙だったり梗塞を疑った場合には、単純CTのみでは診断できず、MRIの撮影が必要です。早期だと通常脳梗塞と同様にDWI high/ADC lowになります。

✓ 下垂体卒中は稀だが起こり得る。下垂体を意識しながら画像読影を。