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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 急性中耳炎への抗菌薬/ペアの方が診断エラーが減るか/腹痛・失神のケース/PD-1阻害剤の効果

■JAMA■

急性中耳炎への抗菌薬 
Antibiotics for acute otitis media*1

 さてさて、この手の非致死的感染症に対する抗菌薬投与の是非は毎回毎回、効果があった、効果が無かったの行ったり来たりを繰り返している印象です。で、今回改めて思ったのは診断大事。診断適当だと効果少なく見積もられるけど、診断がきちんとしていれば効果あるかも・・・というのがメッセージです。

 抗生剤が発明されて以来、人類は基本的には使いすぎだと言われています。最近のアメリカ小児科学会のガイドラインでは、急性中耳炎に対する抗菌薬投与については、抗菌薬を当初は待機することも抗菌薬治療に替わる代替案として認めていますが、実際投与すべきか否かについては十分な結論が出ているとは言えない状況です。

 今回、Clinical reviewで抗菌薬使用について再検討しましょうという話題です。まずとっかかりとして、2014年に急性中耳炎に対する抗菌薬投与のstudyがJAMA Pediatricsに出ました。

 Effect of Antimicrobial Treatment of Acute Otitis Media on the Daily Disappearance of Middle Ear Effusion: A Placebo-Controlled Trial
 JAMA Pediatr. 2014;168(7):635-641
 P:急性中耳炎の小児84人(6ヶ月〜15歳)
 E:AMPC/CVA 7日投与
 C:プラセボ投与
 O:2日連続でTympanometry所見が正常化するまでの時間
 T:RCT
 結果:抗菌薬投与群 2週間、プラセボ群4.7週有意に抗菌薬投与群が短かったと。ただし、副作用は抗菌薬群12%、プラセボ群0%でした。
 コメント:ちなみにTympanometryは親が毎日つけます。day3と7は医者も確認。ここら辺のアウトカム設定が微妙ですよね。あと、一般的に中耳炎の多い時期(6-24ヶ月)の小児が少ないのもエビデンス外挿が難しいところですねと。

 まあ、プライマリアウトカムが微妙なので何とも言えませんが、今回の記事で問題になっていたのは、過去の多くの研究で対象患者のinclusion criteriaに問題があるという部分。きちんと診断できていれば効果有る可能性が高いので、今後検証すべきは、細菌性中耳炎もしくは抗菌薬の効果が期待できる中耳炎の同定という部分だと思われます

✓ 中耳炎に対する抗菌薬投与の是非は、きちんとした診断次第。


ペアの方が診断エラーが減るか 
Diagnostic performance by medical students working individually or in teams*2

 これはかなり面白いテーマでした!医学部学生の診断精度について、個人で判断するのとペアで判断することでどのように正答率が異なるかを検証しています。

 Diagnostic Performance by Medical Students Working Individually or in Teams
 JAMA. 2015;313(3):303-304. doi:10.1001/jama.2014.15770.
 P:ドイツCharite大学でメーリングリストの呼びかけに応募したボランティアの医学部4年生
 E:個人で診断 28人
 C:ペアで診断 30組(60人)
 O:6症例の診断精度
 T:RCT
 結果:個人で診断すると3.0/6正解、ペアで診断すると4.07/6正解ということで、有意にペアの方が正答率があがるという結果。ちなみにもともとの知識も試験されており、両群の差はありませんでした。

f:id:tyabu7973:20150202012237j:plain

(本文より引用)
 コメント:個人で診断するのとペアだとどちらが良いのか?という設問。正答率が上がるというのももちろんなのですが、サブ解析で見ている色々も面白くて、例えば①行う検査の数、②診断までの時間、③診断に対する確信度などです。①行う検査数は、両群ともに有意差無く、②診断までの時間は、ペアの方が2分余計にかかり、③確信度合いはペアの方が高いと言う結果でした。

  
 なかなか興味深い結果です。しかもまあ、当たり前でしょ!?とも思うけど、こういったことをキチンと検証するのって大事ですよね〜。

✓ 医学生が患者さんを診断するのには、一人で診療するよりペアで行った方が診断精度は高い


■NEJM■

腹痛・失神のケース 
Case 2-2015: A 25-Year-Old Man with Abdominal Pain, Syncope, and Hypotension*3

MGHのcase seriesです。ネタバレ注意。
■症例:25歳男性
■主訴:腹痛・失神・低血圧
■現病歴:重い箱を持ち上げたときに突然腹部に温かい感じを自覚。その後腹部全体に放散する右上腹部〜心窩部痛が出現。その直後には、口・舌・手・足にしびれを自覚するようになった。その後数分以内に視野がぼやけて真っ暗に。さらに5分後に非血性嘔吐があり意識消失し、救急要請。救急隊現着時、痛み刺激に反応無く呼吸は浅く、尿失禁・発汗があった。BP 53/27mmHg、PR 90bpm、洞調律、血糖73。生食負荷で自発呼吸改善し、BP 68/28mmHg、PR 118まで回復。その後搬送中に徐々に意識は回復、血圧も戻り、病院に到着したときには、意識清明、2/10程度の腹痛を認めた。頭痛・胸痛・動悸・痙攣はなし。
■既往歴:シャワー後に掻痒感。ルーマニア生まれ。ルーマニアには年1回帰国し野良犬への暴露歴あり。
■家族歴:父が59歳でAMI
■身体所見:意識清明、BP 98/48mmHg、PR 128bpm、T 36.0℃、RR 16/min、SpO2 98%(RA)、腹部:心窩部・右上腹部に軽度圧痛あり、皮膚はび漫性に紅潮、頚部・胸腹部に紅斑
■検査:心電図 洞性頻脈、非特異的ST変化、腹部超音波 腹水ないが、肝内に内部高輝度を伴う低エコー領域
■経過:到着1時間後、震えと嘔吐。生食負荷開始。胸部Xp正常。2時間後、チアノーゼ出現。紅斑・紅潮もあり。4時間後に、生食負荷2L投与され、BP 96/52mmHg、PR 77bpmと。

さて、何でしょう?

いやあ、難しいなあと。
個人的には、読みながら腹部大動脈瘤破裂とか解離だと嫌だなあとか思いつつ、Marfan症候群?とか思った訳ですが、紅斑よう分からんし、エコーで腹水ないから違うか・・・と。とすれば、アナフィラキシー敗血症性ショックかなとか考えておりました。

ちなみに、Caseの担当医の鑑別は・・・・
①エキノコッカス症によるアナフィラキシー
②エキノコッカス以外の原因によるアナフィラキシー
敗血症性ショック
なんだそうで・・・おいおいいきなりエキノコッカスかい!!日本だと北海道ではこんな感じで疑うんでしょうか?すごいのは、入院翌日にはエキノコッカス治療が始まるところです。

f:id:tyabu7973:20150202012317j:plain

(本文より引用)
 ここで、紅潮 flushingについての解説がありました。紅潮は、表在の血管拡張と皮膚血流増加によって起こり、代償機構である血管収縮によって手指は冷感を呈します。原因として、自律神経・神経要因による紅潮(wet flushing)と体内外の血管拡張因子による紅潮(dry flushing)があり、前者は発熱・運動・熱中症などがあり、発汗を伴うのが特徴、後者はヒスタミンによるもので発汗関係なく、血管浮腫を伴うとされています。

 この体内要因のアナフィラキシーってのはなかなか思いつきにくいですね。例えば、反復性蕁麻疹があれば肥満細胞腫も鑑別。あとは運動誘発性も鑑別になりますでしょうか。結局、ルーマニアで野良犬と暴露したことに注目。寄生虫疾患はIgE介在アナフィラキシーと関連すると言われ、ルーマニアではE.granulosusが流行しているんだそうです。で、ここからがすごいんだけど、運動して囊胞から成分がleakしてアナフィラキシーを起こしていると予測。確かに、重い物を持ち上げた時だった!しかし、すごいなあ、全てに理由がある・・・

✓ 全ての病歴には理由がある


PD1阻害剤の効果 
Release the Hounds! Activating the T-cell response to cancer*4

 PD1って何だろう?って思ったらProgrammed death-1(PD-1)pathwayの阻害剤なんですね。紹介はしなかったのですが、実は最近ホジキンリンパ腫と悪性黒色腫に対するPD-1阻害剤の効果を検証したstudyが立て続けに発表されています。PD-1については、京都大学でプロジェクトが出来ているみたいなので載せてみます。http://www2.mfour.med.kyoto-u.ac.jp/pd-1_project.html

 T細胞の細胞死誘導時に発現が増強される遺伝子と言われ、日本人によって同定された模様です。現在腫瘍のみならず、自己免疫疾患や糖尿病などの領域で臨床応用ができないかが検討されているんですね。

 さて、今回のホジキンリンパ腫と悪性黒色腫についての臨床報告ですが、どちらもニボルマブというPD-1阻害剤の効果を見ています。まずホジキンリンパ腫については、再発性・難治性の患者に投与されており、症例数は23例ですが20例の87%で寛解が報告され、24週時点で86%が生存している模様です。もう一つ、BRAF変異陰性の転移性未治療悪性黒色腫の第Ⅲ相試験でRCTです。ニボルマブ群 vs ダカルパジン群に無作為に割り付け比較したところ、ニボルマブ群の1年生存率 72.9%、ダカルパジン群 42.1%と有意に1年死亡を減少 HR 0.42(95%CI:0.25-0.73)であり、有意に死亡を減少させました。また、薬害有害事象もダカルパジンよりも少なかったという結果でした。

 というわけで、かなりものすごい成績です!editorialでは、悪性黒色腫でもホジキンリンパ腫でも今後First lineに入ってくる可能性があるでしょうと。どちらも難治性腫瘍ですから、患者さんにとっては福音ですね。

✓ ニボルマブというPD-1阻害剤は今後の癌治療においてキードラッグに成り得る