栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:妊娠糖尿病への経口血糖降下剤

妊娠糖尿病への経口血糖降下剤
Glibenclamide,metformin,and insulin for the treatment of gestational diabetes: a systematic review and meta-analysis*1

BMJ 2015;350:h102 doi: 10.1136/bmj.h102 (Published 21 January 2015)

【目的】
 妊娠糖尿病に対する薬物療法グリベンクラミド・メトホルミン)とインスリン療法を比較したランダム化比較試験の短期治療効果をまとめる

【デザイン】
 システマティックレビュー & メタ解析

【研究組み入れ基準】
 下記の全ての基準を満たしている研究を適格と判断した。
 ①full textが入手できるもの
 ②妊娠糖尿病に対する薬物療法を検討したもの
 ③グリベンクラミド vs インスリン、メトホルミン vs インスリン、メトホルミン vs グリベンクラミドの比較試験
 ④母胎や胎児のアウトカムに関した情報が含まれている。

【データ】
 MEDLINE、CENTRAL、Embaseを2014年5月20日までに発表された研究を検索した。

【アウトカム】
 14個のプライマリアウトカム(6つが母胎、8つが胎児)と16個のセカンダリアウトカム(5つが母胎、11が胎児)

【結果】
 15の文献、2509人のデータを解析した。
 グリベンクラミド vs インスリンを比較した研究(7つのRCT)で有意差が出たプライマリアウトカムは、
 ①出生時体重増加 109g(95%CI: 35.9-181)
 ②巨大児 RR 2.62(1.35-5.08)
 ③新生児低血糖 RR 2.04(1.30-3.20)
有意グリベンクラミド群が劣っていた

 メトホルミン vs インスリンを比較した研究(6つのRCT)で、有意差が出たプライマリアウトカムは、
①母胎体重 -1.14kg(-2.22 to -0.06)
②分娩時在胎週数 -0.16週(-0.30 to -0.02)
③早期産 RR 1.50(1.04-2.16)
④新生児低血糖 RR 0.78(0.60-1.01)
 で、メトホルミンの方が母胎体重は増えないが早期産は増える結果だった。新生児低血糖は減る傾向だが有意差つかず。

 メトホルミン vs グリベンクラミドを比較した研究(2つのRCT)では、
①母胎体重増加 -2.06kg(-3.98 to -0.14)
②出生時体重 -209g(-314 to -104)
③巨大児 RR 0.33(0.13-0.81)
④妊娠週数あたり体重増加 RR 0.44(0.21-0.92)
とメトホルミンの方が良い結果だった。

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(本文より引用)

【結論】
 短期では、妊娠糖尿病治療において、グリベンクラミドは明らかにインスリンとメトホルミンより劣っていた。メトホルミンはわずかにインスリンよりも良い結果だった。この結果によって、グリベンクラミドインスリンかメトホルミンが使用できれば妊娠糖尿病に使用すべきではないと考えられた。

【批判的吟味】
・RCTのシステマティックレビュー・メタ解析でした。
・異質性はあまりないのですが、異質性の有無でrandam effect modelとfixed effect modelを使い分けていました。
・まあ、とりあえずプライマリアウトカム多すぎです。全然プライマリと言えないですね。
・しかも、15RCTのうち比較薬剤がそれぞれ異なる為、なかなか統合は難しそうな結果でした。
・各群のHbA1c値は差がなく、血糖は同様に下げるけど・・・という前提です。

【個人的な見解】
 妊娠糖尿病患者さんは普段日常的に診療していますが、以前からの疑問に答えてくれそうなstudyでした。妊娠糖尿病は妊婦さんの糖尿病のうち80%を占めると言われ、2010年の診断基準改訂後、爆発的に増えています。専門医のみならず、一般医も対応出来るようになる事は重要かなと思います。で、以前からの疑問。

 妊婦さんはインスリン抵抗性が上昇し、インスリン分泌供給できないことが問題なので、インスリン抵抗性を改善するのが病態生理的に望ましいんですが、インスリンしか使えない!?と思ってました。もちろん日本ではまだまだoff label useになってしまいますが、このような研究を元に適応拡大すると良いなあ。相手が妊婦さんだとなかなか難しいのかも知れませんが・・・

✓ 妊娠糖尿病でもメトホルミンが安全に使用できる可能性がある