栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:鎌状赤血球症の急性胸部症候群/頚椎症による神経根症状/慢性腎臓病

MKSAPまとめです。
さて、色々火の車です。来週末までにプレゼン2つ、原稿1つ(塩漬け複数・・・関係各位すいません汗)、抄録2件・・・通常ブログ更新を重視しているのでこちらから行いますが。

鎌状赤血球症の急性胸部症候群 The acute chest syndrome in a patient with sickle cell disease

❶症例
  21歳女性が、鎌状赤血球症に伴う疼痛で入院した。入院後48時間で、呼吸困難・胸痛・発熱症状が出現。彼女は葉酸サプリメントを内服し、PCAポンプでモルヒネの持続注射とレスキュー投与を行っていた。
  身体所見では、体温 38.0℃、BP 123/65mmHg、Pulse 118bpm、RR 22/minで、頚静脈怒張なく、胸部聴診では、両側肺底部で呼吸音減弱があったが、cracklesやS3は聴取しなかった。下腿浮腫なし。

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(MKSAPより引用)
 SpO2 86%(経鼻3L)で、胸部Xpでは入院時には認めなかった両葉に拡がる浸潤影を認めた。心電図は洞性頻脈でST変化なし。広域抗菌薬が開始され、呼吸支持療法とモルヒネは継続された。
 この患者で最も適切な次の治療はどれか?

 ❷鎌状赤血球症の急性胸部症候群
 鎌状赤血球症患者では、初期症状は疼痛エピソードであることが多く、その後重度で複雑な経過の疼痛を来す事がある。この複雑な合併症の中に、急性胸部症候群(Acute chest syndrome)や多臓器不全がある。
 急性胸部症候群の診断基準のうち
①胸部Xpでの新規浸潤影
②胸痛
③体温≧38.5℃
④頻脈
⑤wheezingや咳嗽、努力様呼吸
⑥低酸素血症
 を見たし、急性胸部症候群と診断できる。

❸急性胸部症候群への治療
 治療の選択肢として、広域抗菌薬・酸素投与・疼痛コントロール・過剰な輸液を回避することなどがある。気管支拡張薬は、気道合併症がある患者さんでは効果が期待できるかも知れない。
 輸血の適応は、酸素投与にも関わらず遷延する低酸素血症である。症状が遷延する場合には交換輸血も考慮する。

Key Point
✓ 鎌状赤血球症患者の急性胸部症候群(Acute chest syndrome)の治療には、empiricalな広域抗菌薬・酸素投与・疼痛管理・過剰な輸液予防・必要時気管支拡張薬がある。酸素投与にも関わらず持続する低酸素血症には赤血球輸血が選択肢である。

Gladwin MT, Vichinsky E. Pulmonary complications of sickle cell disease. N Engl J Med. 2008;359(21):2254-2265. PMID: 19020327

 

 

頚椎症による神経根症状 Treat chronic cervical radiculopathy with neurologic deficits

❶症例
  47歳男性が、左頚部神経根症状の経過観察目的に外来を受診。2週間前から庭仕事をした後に上腕と手の痛みが増悪していた。外傷はなく、NSAIDsと安静で経過観察していた。その後疼痛症状は改善したが、今度は徐々に瓶をあけたり蓋を掴んだりといった動作が難しくなった。ここ数日では、意図せずにコーヒーカップを落としてしまうことが2回あった。
 身体所見では、バイタルは正常で、左僧帽筋の筋腹・トーヌスは正常。上腕三頭筋は正常だが、左上腕二頭筋MMT 4/5だった。上腕二頭筋・腕橈骨筋反射が減弱し、残りは異常所見を認めなかった。
 頸椎MRIではC5/6の頚椎ヘルニアとC6神経根の圧迫とそれによる脊髄高信号を認めた。
 最も適切な対処方法はどれか?

 ❷頚椎症性根症状とは?
  この患者は、臨床症状でも画像所見でも典型的な頚椎症性根症状を呈しており、頸椎ヘルニアに起因する上肢の進行性筋力低下を呈している。

 ❸手術適応は?
 一般的な外科的手術適応は、明確な解剖学的(器質的)異常所見によって進行する神経脱落症状であり、永続的な神経機能障害を避ける為に行われる。
 運動神経障害が無い場合には、多くの患者において保存的治療によって積極的な画像検査や介入を行わなくても症状が改善する。
 局所ステロイド注射は疼痛除去を早めるかも知れないが、長期予後は保存的加療と同様である。運動療法もまた、頚部の筋力増強によって、単純な頸椎根症状の不快感や症状再発を減らすとされている

Key Point
✓ 頚椎症性根症状で進行性の運動神経症状が出ている場合には外科コンサルトすべき

Nikolaidis I, Fouyas IP, Sandercock PA, Statham PF. Surgery for cervical radiculopathy or myelopathy. Cochrane Database Syst Rev. 2010;(1):CD001466. PMID: 20091520


 

 

慢性腎臓病 Manage chronic kidney disease

❶症例
  47歳男性が、2型糖尿病と高血圧によるStage 3の慢性腎臓病のfollow upのために外来受診している。状態は良く特に症状は認めなかった。内服薬は、フォシノプリル、アムロジピン、グリピジドだった。
  身体所見では、BP 148/82mmHg、Pulse 80bpm、BMI 25だった。頚静脈怒張なく、心配診察で異常なく下腿浮腫なし。

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(本文より引用)

本患者で次に行うべき治療はどれか?

 ❷慢性腎臓病の降圧療法
 血圧コントロールは慢性腎臓病の進行を抑制し、心血管イベントを抑制する事が知られている。現状の推奨目標は、130/80mmHgとされている。
 塩分制限はCKD患者および高血圧患者の血圧コントロールで最も効果的である。利尿剤は蛋白尿のないCKD患者の第一選択であり、特に下腿浮腫がある場合には好まれる。アンギオテンシン拮抗薬(ACE-iやARB)は、蛋白尿のあるCKD患者ではメリットがある。
 非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬も抗蛋白尿効果を有するが、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の方が降圧効果は高い。基本的に、蛋白尿のないCKD患者の進行を遅らせる為に、それぞれの薬剤特性にこだわるより降圧を優先すべきである。

 ❸その他の薬剤
 重炭酸ナトリウムCKD stage4-5で、血清重炭酸値 15-20mEq/Lの患者では、重炭酸ナトリウムを投与することでCKD進展を抑制する。この患者ではCKD stage 3で重炭酸値も22mEq/Lと適応ではない。
 ビタミンD製剤:二次性副甲状腺機能亢進症があっても、血清Ca値やP値は正常範囲内の場合には、まず行うべきは2-4ヶ月の低リン食摂取後に採血で確認することである。リン吸着剤は、食事による制限が難しい場合やリン値が上昇してしまった場合には適応となる。

Key Point
✓ 血圧コントロールを130/80mmHg以下にコントロールすることは慢性腎臓病の進行を遅らせる。

de Galan BE, Perkovic V, Ninomiya T, et al; ADVANCE Collaborative Group. Lowering blood pressure reduces renal events in type 2 diabetes. J Am Soc Nephrol. 2009;20(4):883-892. PMID: 19225038

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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