栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:喫煙妊婦への金銭的インセンティブ

喫煙妊婦への金銭的インセンティブ
Financial incentives for smoking cessation in pregnancy: randomised controlled trial*1

BMJ 2015; 350 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.h134 (Published 27 January 2015)

【背景】
 喫煙中の妊婦さんに対する金銭的インセンティブが通常のケアよりも禁煙に寄与するかどうかを評価する

【デザイン】
 PhaseⅡの単一施設でのRCT

【セッティング】
 イギリスの西スコットランドのある都市部の大きな保険医療区分

【患者】
 イギリスのNHSスクリーニングで引っ掛かった喫煙中の妊婦612人が対象。
 組み入れ基準:16歳以上/英語を話す/24週未満/呼気CO濃度>7ppm以上

【介入】
 コントロール群:通常ケア(面談予約をして喫煙と禁煙について話し合い、禁煙日を設定し、10週間のニコチン置換療法を処方し、毎週電話で状況確認)
 介入群:上記の通常ケアに加えて、金銭的インセンティブを商品券で追加。(コンサルト参加時 50ポンド、4週間後止めていれば 50ポンド、12週間後止めていれば100ポンド、34-38週時点で止められていれば200ポンドで、最大400ポンド

【メインアウトカム】
 プライマリー:妊娠34-38週時時点での尿中・唾液中のニコチン濃度(唾液<14.2、尿<44.7)。
 セカンダリー:出生時体重、禁煙の約束、4週間時点で禁煙率

【結果】
 サンプルサイズを目標に近づける為に、エントリー期間を12ヶ月から15ヶ月に延長した。follow upは2013年9月を行い、それぞれ306人の妊婦さんが無作為割り付けされた。通常ケア群のうち3人がすぐに脱落し、データを使用して欲しくないという希望があった。ITT解析あり

 介入群の方がコントロール群よりも有意に喫煙率が高い結果だった。禁煙者は、介入群 69人(22.5%)、コントロール群 26人(8.6%)で、妊娠終了時に禁煙できる相対危険減少は2.63(95%CI:1.73-4.01)、絶対危険減少は14.0%(95%CI:8.2%-19.7%)だった。NNTは7.2(5.1-12.2)で、平均出生時体重は3140g(介入群)、3120g(コントロール群)だった。

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(本文より引用)

【結論】
 このPhaseⅡのRCTでは、金銭的インセンティブは妊婦さんの禁煙に対してのエビデンスを提供した。今回は単一施設での検討であり、様々なタイプの医療機関や禁煙サポート機関で検証する必要がある。

【批判的吟味】
・RCTでITT解析ありでした。施設は単一施設でありlimitationになります。
・患者背景では、朝起床5分以内に喫煙する人が50%以上、20本/日以上が15%とヘビースモーカーが対象でした。
・NNTは7.2と良好でしたが、問題は禁煙率です。こんなに止めないの?というくらい禁煙率が悪いです。
・通常ケアも結構頑張っているのですが、脅威の8.6%。まあ、全然止めないですね。
・お金をあげることで、確かに2倍以上の禁煙率にはなるのですが、これで良いの?という気もします。最大400ポンドですから、5万円くらいということでしょうか。
・あとは、再喫煙や子供の長期予後などのアウトカムも本当は確認する必要があるかも知れないと思いました。

【個人的な意見】
 しかしまあ、妊婦さんでこんなに喫煙している人がいるんですねえ。そこもまずだいぶ驚きでした。そして、止めないことも。確かに何人か喫煙妊婦さんをfollow upしたのですが、かなりdifficult patientだったなと記憶しています。地域性もあっったりするかもしれないので、多施設での検証が必要ですし、あまりにも禁煙率が上がらなければ、止めなかった人達の背景因子や止めなかった理由などを検証すると興味深いことが分かるかも知れません。

✓ 喫煙妊婦さんに金銭インセンティブを与えると、確かに禁煙率は上がるが十分とは言えない