栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:高アルドステロン症の診断/静脈うっ滞性潰瘍/上部消化管出血

MKSAPまとめです。
今週は早めにまとめ。

高アルドステロン症の診断 Diagnose hyperaldosteronism

❶症例
  59歳女性が、筋クランプと難治性高血圧の評価の為に受診。患者は頭痛や不適切な発汗はなし。20ヶ月前の高血圧診断時からヒドロクロロチアジド内服を開始したが、低カリウム血症(K 1.9mEq/L)が出現し変更された。現在の内服薬はリシノプリル、アテノロール、アムロジピン、塩化カリウムだが、血圧コントロールは改善していなかった。
  身体所見では特記事項無く、体温 36.5℃、BP 186/102mmHg、Pulse 66bpmで起立性変化は認めなかった。RR 16/minで、BMI 29。胸部聴診では、肺音心音異常なく、甲状腺も正常だった。

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(MKSAPより引用)

 この患者の診断のために最も適切な検査はどれか?

 ❷高アルドステロン症
 彼女の採血結果からは、過剰な鉱質コルチコイド分泌が疑われる。鉱質コルチコイドの中でいくつかの成分が、彼女の症状に関連している可能性があるが、アルドステロン過剰が最も可能性が高い。高血圧と低カリウム血症は主要な原発性アルドステロン症の症状である。

 その他に鑑別すべきは、Cushing症候群などのコルチゾール過剰や、酵素欠損に伴う先天性副腎過形成がある。血圧が高い以外、身体所見が正常であることでCushing症候群は考えにくく、2年前からの高血圧という時点で先天性副腎過形成は否定的である。

❸高アルドステロン症の検査
 最も良いスクリーニング検査は、レニン・アルドステロン比である。高アルドステロン症の場合には、アルドステロン高値、レニン抑制となる。降圧薬を内服していてもランダムな採血検査でスクリーニングを行う事が可能だが、スピロノラクトンやエプレレノンなどのアルドステロン拮抗薬の場合には注意が必要である。食塩負荷後に持続的に血清アルドステロン高値になるのも確認になる。

❹その他の検査
 腹部CT:腺腫の確認は、生化学的診断が確立された後に行うべき。
 デキサメタゾン抑制試験:Cushing症候群の可能性を調べる場合には、臨床症状・身体所見が重要だが、疑われる場合にはデキサメタゾン抑制試験や24時間尿遊離コルチゾール排泄測定を行う。
 血漿カテコラミン値:褐色細胞腫を疑う場合に検討する。

Key Point
✓ 高アルドステロン症のスクリーニング検査には、アルドステロン・レニン比が有用である。

Funder JW, Carey RM, Fardella C, et al; Endocrine Society. Case detection, diagnosis, and treatment of patients with primary aldosteronism: an Endocrine Society clinical practice guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2008;93(9):3266-3281. PMID: 18552288

 

 

静脈うっ滞性潰瘍 Manage venous stasis ulcers with compression dressings

❶症例
  54歳女性が、3-4ヶ月の経過で徐々に増大する左下腿の有痛性潰瘍を主訴に外来受診された。数回の経口セファレキシンの治療では改善せず、既往歴は左下腿の深部静脈血栓症
 身体所見では、体温 37.0℃、BP 124/86mmHg、Pulse 84bpm、BMI 31だった。下腿の皮膚は、全体的に厚く、両足の感覚異常はなし。足先は冷感なく温かで、ABI 0.9だった。皮膚所見は以下。

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(MKSAPより)
 採血は異常所見なし。
 最も適切な対処方法はどれか?

 ❷静脈うっ滞性潰瘍とは?
  静脈うっ滞性潰瘍は、一般的に慢性的な静脈圧亢進の患者に生じ、過去に罹患部位の深部静脈血栓症や外傷などの既往があることも多い。静脈うっ滞性潰瘍は、古典的に内顆に起こる事が多く、周囲の皮膚は慢性のヘモジデリン沈着を起こして、厚くなっている。静脈うっ滞性潰瘍は静脈性皮膚炎と関連し、皮膚は発赤・熱感・疼痛を来す為、蜂窩織炎との鑑別が難しい事もある。

 ❸適切な治療法は?
 Unnaブーツ:Unnnaブーツは、圧迫によって静脈圧亢進と下腿浮腫を軽減し、潰瘍治癒を促進する。Unnnaブーツは弾性・自己接着性のラップでカバーする酸化亜鉛包帯の内層から構成される多層圧迫包帯で、足首に進むにつれて、圧力勾配が出現する。
 創傷被覆材:市販の一般的なドレッシング剤は、多成分圧迫の方が単一成分圧迫よりも有効であると言われている。創傷被覆材が潰瘍をカバーすることは有用だが、十分なエビデンスは無い。
 動脈血行再建:本患者では動脈閉塞の所見はなく、動脈性潰瘍ではないため、血行再建の適応にはならない。動脈性潰瘍は、一般的に下肢の骨隆起部やふくらはぎ背側に出現することが多い。これらの潰瘍はパンチアウトとも表現され、疼痛が強く、CRTは延長し、皮膚温も低下する。また、ABOも0.9未満になる事も多い。
 コンタクトキャスティングコンタクトキャスティングは、神経障害性潰瘍の足の圧力再分配の為に用いられることが多いが、静脈うっ滞性潰瘍には適応にならない。

Key Point
✓ 圧迫療法によって、血管内圧を低減し浮腫を改善することは、静脈うっ滞性潰瘍治療の原則である。

van Gent WB, Wilschut ED, Wittens C. Management of venous ulcer disease. BMJ. 2010;341:c6045. PMID: 21075818


 

 

上部消化管出血 Evaluate the source of gastrointestinal bleeding with upper endoscopy

❶症例
  58歳男性が、3時間前から始まった直腸からの無痛性新鮮血血便で救急外来を受診した。出血とともに失神エピソードもあり、既往に関節リウマチがあった。治療薬はアダリムマブ、メソトレキサート、イブプロフェンだった。
  身体所見では、T 37.2℃、BP 88/58mmHg、Pulse 132bpm、RR 24/min。腹部診察は異常所見なく、直腸診では、新鮮血を認めた。経鼻胃管留置で吸引したが明らかな新鮮血やコーヒー残渣様物質は認めなかった。採血では、Hb 7.3g/dLで、緊急点滴が開始された。
 本患者で次に行うべき治療はどれか?

 ❷上部消化管出血の症状
 上部消化管出血の症状によって、出血の量や程度を推測することが出来るメレナ(黒色便・タール便)の存在は、上部消化管出血の存在を示唆するが、出血量は150-200ml程度と比較的少ない量が推測される。血便は新鮮血が便に出てきている状態であり、持続的な上部消化管出血の場合に認められ、この場合には少なくとも1000ml以上の出血があることが多い。失神や失神前症状は、出血による循環血液量減少が原因である。

 ❸経鼻胃管について
 経鼻胃管留置によりコーヒー残渣や出血が認められないことは、上部消化管出血を否定することにはならない。経鼻胃管から出血がなくても15%の患者では上部消化管出血を認める。また、胆汁の逆流があるかどうかも重要な所見である。
 経鼻胃管留置は、実際には十分有用な検査とは言えず、緊急内視鏡検査を行うかの判断を導く物にはなり得ない

 ❹その他の検査
 出血の活動性が高い上部消化管出血の場合には、血便を来す事があり、初期治療でバイタルが安定しない場合には、生命を脅かす出血の可能性があり、緊急内視鏡検査を実施すべきである。
 上部消化管に出血源が無い場合には、下部消化管内視鏡検査や出血シンチを行う。カプセル内視鏡検査は、基本的には活動性の低い出血の際に検討する。

Key Point
✓ 新鮮血便で上部消化管出血が疑われる患者では、緊急上部内視鏡検査が診断に最も適切である。

de Galan BE, Perkovic V, Ninomiya T, et al; ADVANCE Collaborative Group. Lowering blood pressure reduces renal events in type 2 diabetes. J Am Soc Nephrol. 2009;20(4):883-892. PMID: 19225038

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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