栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:重症市中肺炎へのステロイドの効果

重症市中肺炎へのステロイドの効果
Effect of corticosteroids on treatment failure among hospitalized patients with severe community-acquired pneumonia and high inflammatory response

JAMA. 2015;313(7):677-686. doi:10.1001/jama.2015.88

【背景】
 重症の市中肺炎では、治療失敗は強い炎症反応と予後不良と関連している。ステロイドはサイトカイン放出を調整するかもしれないが、市中肺炎に対する効果の有無は明らかになっていない。

【目的】
 重症市中肺炎で炎症反応が高い患者でのステロイドの効果を評価する

【デザイン/セッティング/対象患者】
 多施設共同ランダム化比較試験。二重盲検でプラセボコントロール試験。
 3カ所のスペインの教育病院で、重症市中肺炎かつ炎症反応上昇(CRP>15.0mg/dL)の両方を満たした患者が対象。
 2004年6月から2012年2月まで組み入れられた。

【介入】
 ランダムに経静脈的メチルプレドニゾロン静注群(0.5mg/kgを12時間置き)61人とプラセボ群 59人に割り付け、入院36時間以内に治療を開始し計5日間投与した。

【メインアウトカム/測定方法】
 プライマリアウトカムは、治療失敗のcomposite outcomeとして、早期(①72時間以内にショックへ進展、②72時間以内に侵襲的人工呼吸器管理、③72時間以内に死亡、)、後期(①画像所見の悪化、②呼吸不全持続、③後期にショックへ進展、④後期に侵襲的人工呼吸器管理、⑤72-120時間の間での治療)とした。
 院内死亡率と治療副作用はセカンダリーアウトカムとして評価した。

【論文のPECO】
P :重症市中肺炎かつ炎症反応上昇(CRP>15mg/dL)以上の患者 120人
E:経静脈的メチルプレドニゾロン静注群(0.5mg/kgを12時間置き)5日投与
C:プラセボ
O:治療失敗のcomposite outcome

【結果】
 メチルプレドニゾロン静注群の治療失敗compositeは8例(13%)でプラセボ群は18例(31%)で有意差あり。両群の差は18%(95%CI:3-32%)だった。ステロイド治療は治療失敗を有意に減じ(OR 0.34:95%CI :0.14-0.87)たが、院内死亡率は、ステロイド群 6例(10%)、プラセボ群 9例(15%)と有意差は認めなかった。高血糖はステロイド群で11例(18%)、プラセボ群で7例(12%)だった。

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(本文より引用)

【結論】
 高度の炎症反応上昇を伴った重症市中肺炎の初期治療では、メチルプレドニゾロン使用がプラセボと比較して治療失敗を減らした。この結果が、他の試験でも検証されれば、ステロイドによる補助療法はこれらの重症肺炎に対して効果があるという証拠になるだろう。

【批判的吟味】
・RCTでITT解析あり、二重盲検もされておりRCTの体裁としてはバッチリ!という感じです。
・当初の組み入れが519人で実際にランダム割り付けされたのが120人であり、かなり除外されています。除外の理由にCRPが15以下ってのが結構ありました。
・まあ、なんてったってcomposite outcomeです。これにつきます。primary outcomeを8つもいれちゃあいけませんよ。
composite outcomeの注意点は、それぞれのoutcomeが同等に減ったかどうかというのが1つ重要なポイントです。
・で、実際に中身をみてみると、早期(72時間以内)の治療失敗は2群で差がありません。後期合併症で明らかな有意差が出ていますが、その大半が画像所見の悪化という部分です。ここが1人 vs 9人と大きな差が出ており、全体の50%を占めています。これはあかんです。画像的増悪と臨床的な意味合いがどの程度あるのかも検証されていません。
composite outcomeを考えるときにどんなことに気をつけますか?って研修医に考えてもらうときに教材に使いたいくらい。
・全体の平均年齢65歳、平均CRP 26、ICU入室 75%、呼吸器装着 8-17%、ショック 17-31%でした。
・抗菌薬は、CTRX+LVFX 60%、CTRX+AZM 20%で、肺炎球菌が20-26%、ウイルスが8-21%。
・ただ、副作用もあまり多くなかったのも事実で、CAPでもステロイドが有効な症例があるのかもしれないとも思います。

【個人的な意見】
 個人的には、このstudyだけで日常診療に変化はないと思いますが、興味深い結果でした。CRPがstudyのinclusionに使われているのにもびっくりしました。最近ようやく”CRP離れ”してきていたところで、これかあと思いつつ。そして、スペインの抗菌薬使用の現状も知りました。2次救急セッティングだと2剤併用はあまり無いなあとも思いました。

✓ 炎症反応の高い重症肺炎にはステロイド投与が、治療失敗のcomposite outcomeを改善する