栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM ワーファリン関連脳出血への対応法/外科医の手術技術の評価/心筋梗塞後のNSAID使用/乳児からのピーナッツ導入/米国小児の入院を要する市中肺炎

■JAMA■

ワーファリン関連脳出血への対応法 
Anticoagulant reversal, Blood pressure levels, and anticoagulant resumption in patients with anticoagulation-related intracerebral hemorrhage

 ワーファリン関連の脳出血が起きてしまった時にどのように対応したら良いのかのデータが少ない!とのことで、今回①INRベースの方法、②抗凝固再開の2点について研究されました。著者らはCOIがあります。ドイツ19施設で脳出血神経内科に入院した連続レジストリーデータを用いて解析しています。

 論文のPECOは以下の2つがあります。

①INRベースの方法
P:ワーファリン関連脳出血患者853人(ワーファリン内服中・入院時INR>1.5)
E/C:①INR<1.3までのリバース時間比較、②4時間以内の収縮期血圧
O:血腫増大(初回画像検査より33%以上の増大)
T:後ろ向きコホート
結果:
 ①4時間以内にINT<1.3を達成できるとOR 0.27(0.15-0.43)有意に血腫増大を抑制。
 ②4時間以内に血圧<160mmHgだと更にOR 0.17(0.11-0.33)と更に血腫増大を抑制。
 上記2項目はサブ解析で院内死亡減少とも関連 OR 0.60(0.37-0.95)

②抗凝固再開について
P:上記脳出血の患者のうち生存者719人
E:抗凝固を再開する
C:抗凝固を再開しない
O:1年後の虚血イベント
T:後ろ向きコホート
結果:
 虚血イベントについては、再開群で9/172例(5.2%)、非再開群で82/547例(15.0%)と有意に再開群の方が少なかった
 出血イベントについては、再開群で14/172例(8.1%)、非再開群で36/547例(6.6%)とほぼ同等の結果だった。

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(本文より引用)

 後ろ向きコホートではありますが、大変興味深い日常臨床に示唆的な結果が出ましたね。もちろん本来は前向きに検討すべきとは思いますが、4時間以内に行うべきの1つのメルクマールとして、INR<1.3、血圧<160mmHgは良いかもしれませんね。あとはついつい中止にしてしまいたくなりますが、出血がおちつけば再開の方がメリットが多そうです。最近抗血小板薬と消化管出血の関係もそうでしたが、やはりリスクは高い群なわけでadverse eventが落ち着けば再開するというのが冷静な判断・・・ということになりそうです。

✓ ワーファリン内服中の脳出血では、4時間以内にINR<1.3と収縮期血圧160mmHg以下を達成すると予後が良い。また、抗凝固を再開することは、虚血イベントを減らし出血イベントは同等。


外科医の手術技術の評価 
Efforts seek to develop systematic ways to objectively assess surgeon's skills*1


 巷では外科医の手術技術に大きな注目と波紋がありますが、米国での取組はもうちょっと先を行っている気がします。今回editorialで外科医の評価についてコメントされていました。

 今まで外科医の評価の項目として、①手術技術、②非手術技術の2つがありました。近年はコミュニケーションスキルや説明能力などの②の改善が為されてきましたが、①の評価方法やシステムはあまり進歩が無かったとされています。とは言っても手術件数や主観的評価など一定の評価はされている訳ですが。近年米国でも手術技術の不適切な症例が問題になったことがあり、「量は質を担保しない」という意見が出てきています。そもそも手術成績による評価で専門医認定を受けるということ自体も、多くの交絡因子を含んでおり正確な術者の技能評価とは言えません。
 
 そこで、最近はいくつかの手法で手術技術を評価するという試みが行われています。例えば今検討されているのは、motion analysisを用いてerror detectする手法などです。確かに動きの無駄や不適切さが明らかになりやすいかも知れません。今後重要なのは、適切な技能評価方法とその妥当性の検証ということになりそうです。この辺りはある程度ユニバーサルな基準があっても良い様におもいます。

✓ 外科医の手術技術の評価方法はより実践的かつ個別評価出来るように工夫されている


心筋梗塞後のNSAID使用 
Association of NSAID use with risk of bleeding and cardiovascular events in patients receiving antithrombotic therapy after myocardial infarction*2

 NSAIDsが心筋梗塞リスクなど心臓に悪いことはよく知られていますし、基本的に使用しないというのが基本スタンスかなと思います・・・が。多くの臨床の現場では、え??ってくらい簡単にNSAIDsが用いられます。日本ではOTCで購入できる時代に突入し、事態はより複雑になりつつあります。

 今回後ろ向きコホート研究で、心筋梗塞後の患者さんにどの程度NSAIDsが使用されているかを検証した研究が発表されていました。

 論文のPECOは以下の通りです。

P:2002-2011年に初回の心筋梗塞で入院した30歳以上のデンマーク成人61971人
E:退院後30日以内にNSAIDs処方あり
C:退院後30日以内にNSAIDs処方なし
O:Primary:出血イベント(脳出血・消化管出血・泌尿器系出血による入院・死亡)、Secondary:心血管イベント(心血管死亡・非致死的心筋梗塞脳卒中TIA・全身性動脈塞栓)
T:後ろ向きコホート
結果:
 34%の患者が少なくとも1錠以上のNSAIDsを処方されていた。
 5288人(8.5%)の出血イベントと18568人(29.2%)に心血管イベントが発症していた。
 NSAIDs投与による出血イベントは、HR 2.02(1.81-2.26)、心血管イベントは、HR 1.40(1.30-1.49)有意に増加していた。


 結構衝撃のデータでして。これデンマークのstudyなのですが、デンマークではNSAIDOTCでは買えない様なので、医師が処方しているということになります。処方実態は実に3人に1人はMI後でも1年以内にNSAIDを処方されているということでした。最も多いのはイブプロフェン・次はジクロフェナクでした。サブ解析を見ると、処方期間の長さとイベントはあまり関係が無く、処方の有無が重要という結果も出ていましたので、短期間ならOKみたいなメッセージは無さそうです。もちろん交絡はあるかと思いますが、結構びっくりでした。
 
✓ 心筋梗塞後1年以内にNSAIDが処方されると、出血イベント、心血管イベントが有意に増える


■NEJM■

乳児からのピーナッツ導入 
Randomized trial of peanut consumption in infants at risk for peanut allergy*3

 ピーナッツアレルギーに対するランドマークstudyが出ていました。アメリカにおけるピーナッツアレルギーの現状はかなり深刻なんだそうで、食物関連のアナフィラキシーとしては最多原因となっていて、小学校はおろか飛行機でももはやピーナッツは出ないんだそうです。どこかのお姫様とは違いますね。

 で、2000年にAAPが「3歳まではピーナッツ禁」という声明を発表。ところが、その後もピーナッツアレルギーは増え続け、1997年に0.4%だったアレルギー患者は2010年には2%まで増加しており、2008年にAAPは「2000年の推奨は取りやめ」という声明を再度発表しています。そんな状況を受けての今回のピーナッツstudyです。ちなみに仮説として、イギリスとイスラエルのピーナッツアレルギー頻度が10倍違うことと、幼小児のピーナッツ摂取量が全く異なる事から、幼小児期に摂取した方がアレルギーが減るのでは?という仮説が立てられました。

 というわけで、今回の論文のPECOは以下の通り。

P:4-11ヶ月の小児で重度の湿疹か卵アレルギーのある640人
  ピーナッツのprick testで、無反応 542人、軽度反応 98人をそれぞれ無作為割付け。
E:60ヶ月までピーナッツを6g/週以上摂取
C:60ヶ月までピーナッツ禁
O:5gピーナッツ負荷試験によるピーナッツアレルギーの有無
T:単一施設のRCT/ITT解析あり
結果:
 食事内容は定期的にチェックされ、最終的に介入群ではピーナッツ 7.7g/週、コントロール群ではピーナッツ 0g/週の摂取量だった。
 prick反応陰性の非アレルギー患者において、60ヶ月時点でのピーナッツアレルギー頻度は、介入群 1.9%、コントロール群 13.7%と有意に介入群で少なかった
 prick反応陽性のピーナッツアレルギー患者において、60ヶ月時点でのピーナッツアレルギー頻度は、介入群 10.6%、コントロール群 35.3%とやはり有意に介入群で少なかった

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(本文より引用)
 重篤な副作用は両郡で有意差は無く、介入群ではピーナッツ関連のIgG抗体が、コントロール群ではピーナッツ関連のIgEが上昇していた。


 ということで、かなり有意ピーナッツ食べた群の方がアレルギーが減ったという結果でした。editorialでもlandmark studyだ!とコメントされ、今回は一次予防でも二次予防でも1歳未満の早期にピーナッツ摂取をする事がアレルギー予防に効果があることが証明されたわけです。

 課題はいくつかありますが、まあそんなにピーナッツ食べなくちゃだめですか?とか、食べるのをやめたら効果がなくなるのか?とか、まだまだ単一施設だしねなんてことが言われています。とはいえ、かなり画期的な結果ですし、これっておそらくピーナッツのみに当てはまる特殊な状況では無さそうなので、今後のアレルギー疾患への予防対応策が大きく変わっていく可能性があります。

✓ 1歳未満にピーナッツを摂取することは、その後のピーナッツアレルギーを減らすことにつながる


米国小児の入院を要する市中肺炎 
Community-acquired pneumonia requiring hospitalization among U.S. children

 SNS上でも結構色々な方が話題に出していたので、目新しいものではないかもしれませんが、小児の市中肺炎の疫学データが掲載されていました。メンフィス・ナッシュビルソルトレークシティの3病院で18歳未満の小児での入院を要する市中肺炎について、主に起因微生物について血液献体や喀痰などの呼吸器献体が採取されました。

 結果ですが、2010年1月〜2012年6月に2638人が組み入れられ、そのうち2358人(89%)で胸部X線で肺炎像を認めた。年齢の中央値は2歳で、497/2358(21%)が集中治療を必要とし、3例(<1%)が死亡していた。細菌・ウイルス検査用の検体が採取できた症例は全部で2222例であり、そのうち1802例(81%)で、何かしらのウイルスもしくは細菌が検出された。1472例(66%)で1種類以上のウイルスが、175例(8%)では細菌が、155例(7%)で、細菌とウイルスの両方が検出された。ウイルス別では、RSウイルス・アデノウイルス・ヒトメタニューモウイルスが多く、それぞれ5歳未満の方が、5歳以上より多く検出されていた。一方で、マイコプラズマは5歳以上の方が多いという結果だった。

 市中肺炎に罹患した小児で最も多い微生物はウイルスだったという結構衝撃的なデータでした。成人だとウイルス性の肺炎をあまり見ないと思っていましたが、認知していないだけかもしれませんね。ウイルス特異的な検査が出来るようになってくると、この辺りのプラクティスが変わるかもしれません。

✓ 米国小児市中肺炎の疫学データで最も多い微生物はウイルスだった