栃木県の総合内科医のブログ

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MKSAP:StageⅠ直腸癌の標準治療/肺炎随伴胸水の管理/粘液水腫性昏睡

MKSAPまとめです。
さてさて早め早めで。

Stage Ⅰ 直腸癌の標準治療 Treat stage Ⅰ rectal cancer

❶症例 
 62歳女性が、6ヶ月前からの間欠的な腹痛と時折排便時に少量の新鮮血があるとのことで受診された。他に症状は無く既往歴・家族歴もなかった。
 身体所見では、体温 36.8℃、BP 125/85mmHg、Pulse 80bpm、RR 14/min。腹部所見は、軟、張りなし、臓器腫大なし、蠕動音正常。その他も異常所見はなかった。
 大腸内視鏡検査が施行され、肛門から7cmの直腸に3cm大の腫瘤を認めた。生検でAdenocarcinomaが検出され、超音波内視鏡結果では、浸潤は粘膜から粘膜下層だった。腫瘍は直腸壁までは進展せず、リンパ節転移も認めず、T2N0と考えられた。HRCTでは胸腹部骨盤に明らかな転移巣を認めなかった。

 この患者の診断のために最も適切な治療はどれか?

 ❷Stage Ⅰ 直腸癌
 本患者の直腸癌の病期は、T2N0M0でStageⅠだった。適切な治療は外科的切除である。手術としては、直腸と直腸間膜の完全な除去を確実に行う為に、直腸間膜全切除を伴う低位前方切除術。直腸間膜は、局所領域リンパ節が含まれた脂肪織であり、これらの部位のリンパ節の詳細な病理学的評価は疾患の病期確定に重要である。術後も純粋にStage Ⅰのままであれば追加治療は不要である。

❸その他の治療方針
 術後の病理結果による再評価で、腫瘍がより進展していたり(T3やT4)、局所リンパ節腫脹が判明(N1やN2)した場合には、術後化学放射線療法や化学療法が必要になる事もある。
 術前の化学療法や放射線療法、および併用療法は適応にならない。ラジオ波焼却切除が転移性疾患の焦点部位切除の為に用いられるが、原発巣には通常行われない。

Key Point
✓ Stage Ⅰの直腸癌の標準治療は外科的切除である。

Garcia-Aguilar J, Holt A. Optimal management of small rectal cancers: TAE, TEM, or TME? Surg Oncol Clin North Am. 2010;19(4):743-760. PMID: 20883951

 

 

肺炎随伴胸水の管理 Manage a parapneumonic effusion

❶症例
  58歳男性が、2日前からの発熱、悪寒、咳嗽、進行増悪する呼吸困難感と左側胸部の胸膜痛を主訴に救急外来を受診し入院した。既往歴や内服薬は特にない。
 肺炎の診断となり、血液培養2セット、肺炎球菌・レジオネラの尿中抗原が採取され、CTRX+AZMによるempirical治療が始まった。患者は内科病棟に入院。
 身体所見では、体温 38.2℃、BP 130/80mmHg、Pulse 115bpm、RR 28/min、SpO2 87%(RA)だった。左肺野の著明な呼吸音減弱と打診での濁音を認めた。
 立位胸部X線では左下肺の中間地点まで胸水貯留を認めた。

 

 この患者の最も適切な対処方法はどれか?

 ❷肺炎随伴胸水とは?
  市中肺炎に胸水を合併した場合、胸腔穿刺を考慮する必要がある。起立もしくは側臥位のレントゲンで1cm以上の液面があれば穿刺可能とされる。これは起因菌検索目的と膿胸や複雑性肺炎随伴性胸水の除外の為に行うべきである。
 複雑性肺炎随伴性胸水や膿胸の診断が遅れることは、胸水を被包化し、胸腔鏡や外科的手術などの侵襲的な対処が必要になる可能性がある。
 胸水の存在によって、empiricalな抗菌薬治療のレジメンが変化することはない。
 市中肺炎で入院した患者の20-40%に胸水の合併があるが、治療中にわずかに出現する程度の胸水は、抗菌薬治療に反応すれば胸腔穿刺は不要なこともある。

Key Point
✓ 市中肺炎患者で胸水貯留がある患者では、肺炎の起因微生物の特定及び肺炎随伴性胸水・膿胸の除外のために胸腔穿刺を行うべきである

Colice GL, Curtis A, Deslauriers J, et al. Medical and surgical treatment of parapneumonic effusions: an evidence-based guideline. Chest. 2000;118(4):1158-1171. PMID: 11035692


 

 

粘液水腫性昏睡 Myxedema coma

❶症例
  62歳女性が、昏睡で緊急入院。娘によると患者は2日前から進行性の無気力、倦怠感、見当識障害、失調を認めていた。既往歴は、10年前に甲状腺機能亢進症があり、放射線ヨードによるアイソトープ治療が為されているのと高血圧がある。喫煙・飲酒はなく、内服薬はレボチロキシンとヒドロクロロチアジドだが、最近の服薬アドヒアランスは不良だった。
 身体所見では、昏睡状態でぐったりしており、従命に応じることは出来なかった。体温 35.9℃、BP 105/65mmHg、Pulse 75bpm、RR 10/minだった。胸部聴診では、胸骨左縁に2/6の収縮期雑音を聴取し、呼吸音ではcracklesを聴取したが、他は異常所見を認めなかった。甲状腺腫大やリンパ節腫脹なし。皮膚は乾燥し冷感があり、顔・口唇・手に軽度の浮腫を認めた。腹部所見は異常所見なし。

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 (MKSAPより引用)

 血清コルチゾール値は結果待ち。胸部X線では軽度の両側肺底部の浸潤影と心拡大があり、頭部CTでは異常所見を認めなかった。

 最も適切な初期治療はどれか?

 ❷粘液水腫性昏睡
 粘液水腫性昏睡の患者は、無反応もしくは反応性が低下し、低血圧、低血糖、徐脈、低体温になる粘液水腫性昏睡は内科的緊急事態であり、適切な支持療法(敗血症や肺炎の治療、人工呼吸管理、心疾患の評価と治療)がもとても重要になる。

 ❸粘液水腫の初期治療
 粘液水腫性昏睡の初期治療として、最も効果的な甲状腺ホルモン投与レジメンはコンセンサスを得たものは無い。
 経静脈的レボチロキシンは伝統的に用いられ、初回はボーラスで200-500μgを静注し、その後経口摂取出来るようになるまで、50-100μg/日投与を継続する。これらの高容量補充療法は、甲状腺ホルモンの臓器補充の為に必要と言われているが、一方で不整脈との関連もあり、特に心疾患既往がある患者では慎重に使用を検討する必要がある。

 ❹その他の治療選択肢
 単独で甲状腺ホルモンを補充するのが十分ではないこともある。二次性甲状腺機能低下症を来している患者の中には、下垂体機能低下症を合併している患者がいて、二次性副腎機能低下症を有することがある。副腎不全が除外され、副腎機能が適切であることが確認されるまでは、粘液水腫性昏睡患者には、ヒドロコルチゾンなどのステロイドをストレス量で投与すべきである。
 リオチロニンの補給は、現時点でレボチロキシンに対する決定的な優位性が証明されていない為、コントラバーシーである。リオチロニンを使用する場合には、低容量から開始し、レボチロキシンと併用して慎重に投与すべきである。

Key Point
✓ 粘液水腫性昏睡の初期治療として適切なのは、経静脈レボチロキシンステロイドである

Kwaku MP, Burman KD. Myxedema coma. J Intensive Care Med. 2007;22(4):224-231. PMID: 17712058

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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