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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM スクリーニング検査は有用か?/虚血性腸炎レビュー/重症敗血症へのEGDT/心疾患疑い患者での機能検査とCTA/直腸癌への腹腔鏡手術と開腹手術

JAMA NEJM 論文 予防 循環器 消化器 感染症 集中治療 検査 外科

■JAMA■

スクリーニング検査は有用か? 
How useful are screening tests?*1

 スクリーニング検査については、昨今様々な意見がでています。米国ではUSPSTF(United States Preventive Services Task Force)が中心となって、検診スクリーニングについての推奨を提示しています。

 まず、根本的なところから。スクリーニング検査は死亡を防げるか?という命題。Stanford大学のJohn Loannidis医師はNoと答えています。彼らは、USPSTFが推奨を発表している50疾患のうち、コモンな19疾患を選択して死亡率を検証しました。12が悪性腫瘍、5つが心血管疾患、2つが糖尿病、1つがCOPDでした。これらの疾患について48のRCT、0つのメタ解析が見つかっていますが、4つのメタ解析のみが死亡率を減少したと言う結果でした。
 この4つは、
①男性の腹部大動脈瘤の腹部超音波によるスクリーニング
②女性の乳癌に対するマンモグラフィー
③④大腸癌に対する便潜血・S状結腸内視鏡スクリーニング
 の4つです。ただし、これらも疾患死亡率は下げるものの全死亡は下げませんでした。また、残りのメタ解析では疾患死亡も下げない結果でした。多くのRCTの結果も同様で、30%のみが疾患死亡を下げ、11%だけが全死亡を減らしたという結果でした。ただ大事なのは、検診のアウトカムは死亡だけでは無いという点、QOLを改善することや合併症を減らすことも重要なアウトカムであることは忘れてはいけません。一方で、難しいのは癌検診を受ける多くの患者は、その癌による死亡を恐れているという事実もあります。

 次に問題になるのは、スクリーニングによる害は?という命題。実は、多くの場合スクリーニング自体が疾患の早期診断には繋がらない事も分かってきています。また、進行期の疾患に対する治療が進歩することで、早期診断による利益は更に少なくなります。スクリーニングによりOverdiagnosisとOvertreatmentは増加し、偽陽性による精神的な不安感をもたらします。スクリーニング自体が本来介入不要な良性病変を安易に見つけてしまう可能性が高いです。特に甲状腺癌や前立腺癌などの生命予後が良い癌ではその傾向は顕著となりますよね。
  
 それにもかかわらず、多くの医師は未だにスクリーニング検査や年1回の健康チェックを行っています。これらはきちんとしたエビデンスに基づいたものとは言えないのが現状です。人間ドックとか正直何の為??というところですよね・・・

✓ スクリーニング検査を考えるには、その臨床効果と害を考慮する必要がある。エビデンスのあるスクリーニングは非常に少ない

 

虚血性腸炎レビュー 
ACG Clinical Guideline: Epidemiology, Risk Factors, Patterns of presentation, diagnosis, and management of colon ischemia(CI)*2

 これはJAMAではなくてACGのreviewでした。GRADE systemを利用したガイドラインでした。それでは内容を見ていきましょう。
■Difinition■
 ・Colonic ischemiaは「細胞代謝を保持する最低限の血流が保てない」ことによって発症する。Ischemiaはギリシャ後のiskhaimos(血流停止)が起源。
 ・血流は消失しなくても相対的な低下で発症し、血流低下後に再潅流障害が起こることもある
 ・虚血後の再潅流障害が起こるか否かは、急性/側副血行路/虚血時間などが関与する
 ・可逆的・不可逆的どちらの変化も起こり得る。可逆的な場合にはcolonopathyとcolitisからなる病変で、3日以内に症状・上皮下浮腫は消失し、潰瘍は数ヶ月程度残存している。

■Epidemiology■
 ・ICD-9に該当する診断コードがなく、詳細な疫学データは知られていない。ischemic colitisだと炎症を想起させてしまう為、専門家によっては、colic ischemiaという言葉を好む専門家もいる。
 ・頻度は10万人辺り17.7件(米国保険ベース、入院患者対象)だが、頻度は更に多いと予測されている。
 ・女性が多く全体の57-76%。40歳未満はほぼ全例が女性。日本では性差なし?
 ・死亡率は報告にもよるが4-12%、再発率は5-6年で10%程度と言われている。

■Pathophysiology■
 ・病態生理としては、①全身の循環動態の変化、②腸間膜血管の解剖的もしくは機能的変化。
 ・臨床ではあまり利用されていないが、type1(原因はっきりしない)、type2(低血圧などの原因あり)の2つに分類される。
 ・血管造影上の異常所見とCI症状に相関はなかったとも言われている。

■Risk factors■
 ・根拠となる研究は5つの大規模症例対照研究。
 ・血管疾患・糖尿病・IBS既往・便秘はリスクになる
 ・CKDやCOPD患者がCIになると死亡率が高い。

■Clinical presentation■ 
 ・CIの診断は臨床症状。具体的には、突然の腹痛・軽症腹痛・切迫便意・24時間以内血便など。
 ・血便患者では非上行結腸性CIを考える。
 ・上行結腸性CIはIRCIとも呼ばれ、非上行結腸性より死亡率が高い。血便は少ない。
 ・疼痛は大抵血便より先行し、腹部圧痛部位は罹患大腸の部位と一致することが多い
 ・症状経過では、発症24時間以内に症状がピークになり、半数以上が2-3日以内に症状は改善。

■Segmental nature of CI■
 ・下行結腸が最も罹患しやすいが、他の大腸にも起こり得る
 ・IRCIや全結腸型は敗血症が原因である事が多い。
 ・分節性に罹患する場合には、大腸の3血管支配である、SMA・IMA・上直腸動脈に起因する。肝弯曲部とS状結腸が境界領域。

■Recurrent and Chronic CI■
 ・CIの再発がどの程度かは良く分かっていない。原因は自然軽快する疾患でかつ多くの研究でfollow upしていない為。
 ・ある5年の追跡研究では、再発率が6.8-16.0%と言われいている
 ・慢性CIという疾患概念があるか否かは現時点ではcontroversy。

■Laboratory testing■
 ・採血は重症度評価のために必要。
 ・Hb低下・Alb低下・代謝性アシドーシスは重症を予測し、死亡率増加・外科的介入の予測因子となる。
 ・CIは誤診されやすく初診時から適格に診断されたのは全体の9%程度

■Imaging■
 ・造影CTは施行すべきで、診断は大腸壁肥厚・浮腫で可能。
 ・IRCIや急性腸間膜虚血疑いではCTAや血管造影を行うべき。
 ・CTで分かるのは他疾患除外と罹患部位同定
 ・中等度〜重症CIでは入院前にCT検査を行うべき。
 ・大腸癌はCIと関連しており、近位大腸にCIを引き起こす。最近大腸内視鏡検査を施行していなければ後日CFを。

■Colonoscopy■
 ・CI疑い患者では48時間以内にCFを施行すべき(早いな・・・)
 ・重症CIではCFより前にCTを優先。
 ・CFの場合には、壊疽制腸炎以外では生検を推奨。
 ・診断に最も有用なのはCF。内視鏡所見では紅斑 83.7%、浮腫 69.9%、表在潰瘍 57.4%である。
 ・Colon Single Stripe Sign(CSSS)はCIに特異的な所見で、びらんを伴う紅斑バンド+縦走潰瘍のこと。2003年に報告された時には、全て5cm以上の長さだった。

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(本文より引用)

■Severity and treatment■
 ・大抵のCIは治療がなくても自然軽快。
 ・ショック症例では外科的治療を考慮。
 ・中等層〜重症のCIに対しては抗菌薬投与を検討。
 ・治療の推奨を出せるようならRCTやシステマティックレビューがない。
 ・80.3%は内科的治療で軽快。死亡率は6.2%。

✓ 虚血性腸炎は臨床症状で診断可能だが、比較的ヘテロな疾患。大抵は経過観察のみで自然軽快する軽症疾患

 


■NEJM■

重症敗血症へのEGDT
Trial of early, goal-directed resuscitation for septic shock*3

 EGDTに対するRCTは去年米国からProCESS研究オーストラリアからARISE研究が発表され、それぞれネガティブstudyでした。今回英国からProMISE研究というEGDT検証第三弾がでていました。当初からこの3研究が出た時点で、メタ解析をしましょうという予定になっているRCTです。
 論文のPECOは、

P:来院6時間以内の敗血症患者1260人
   「SIRS基準2項目以上」かつ「1L輸液で血圧<90mmHg」か「乳酸>4mmol/L」
E:EGDT群(SvO2モニター)
C:通常ケア群
O:90日死亡
T:RCT
結果:
 平均65歳、昇圧剤使用は55%の敗血症症例。肺が35%前後、尿路が20%前後。
 CV挿入率は、EGDT群92%、通常ケア群 50%。
 プライマリアウトカムである90日死亡は、EGDT群で184/623人(29.5%)、通常ケア群 181/620人(29.2%)で、RR 1.01(0.85-1.20)と有意差を認めなかった

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(本文より引用)


 というわけでEGDT積極遵守群のRCT3つ目もネガティブスタディーでした。そういった意味では、バイタル重視、補液重視の初期蘇生は通常ケア群まで浸透し、デバイスなどを積極的に利用しても死亡率改善には役立たない可能性があると思われました。

✓ 積極的EGDT遵守群は通常ケア軍と比較して、敗血症の脂肪を減らさなかった


心疾患疑い患者での機能検査とCTA PROMISE研究 
Outcomes of anatomical versus functional testing for coronary artery disease*4

 心疾患を疑う患者での評価検査は何が有用かというのは特に外来セッティングでは迷うところです。運動負荷・エコー・Holter・シンチ・CAGなど多数の選択肢があるのも良いのか悪いのか。今回、その疑問に答えるべく、心疾患疑いで病院を受診した方の検査内容と死亡や心筋梗塞などの関係を調査しています。
 論文のPECOは、

P:心疾患疑いで過去に既往なく緊急性のない外来患者10003人
   男性>54歳・女性>64歳もしくは男性 45-54歳・女性 50-64歳でCVDリスクが1つ以上
   12ヶ月以内に精査歴のある人は除外
E:CTA(冠動脈CT)優先群
C:機能検査(シンチ)優先群
O:Composite outcome:死亡・心筋梗塞狭心症入院・手技合併症
T:RCT、follow up1年
結果:
 平均60歳、胸痛が70%で検査前確率は約50%程度と見積もられた。CTA群は94%がCTを施行、機能検査群では、67%が核医学検査(シンチ)、22%がストレス負荷超音波。
 プライマリアウトカムは、CTA群で164/4996人、機能検査群で151/5007人で認め、調整HRは1.04(05%CI:0.83-1.29)と有意差を認めなかった。CAG率はCTA 12%、機能検査では8%。被曝は当然CTA群の方が多い。


 さて、これで見ると検査はどちらでも良さそうです。もちろん、判断には専門性が必要とされますから、信頼できる循環器科医と相談することが重要です。被曝も多い事は明確であり、今後はどのような層にどのようなスクリーニングを行うべきかが焦点になってきます

✓ 心疾患疑いの患者さんの次に行うべき検査は胸部CT・機能検査どちらでもよいが、胸部CTの方が被曝が多い


直腸癌への腹腔鏡手術と開腹手術 
A randomized trial of Laparoscopic versus open surgery for rectal cancer

 この手のテーマのstudyはたくさんあるのかと思ったら、大規模RCTとしては世界初なのだそうです。当たり前に思える事でも検証されていないことにびっくりしました。ひとまず見ていきます。
 論文のPECOは、

P:直腸癌1044人 転移なし・局所浸潤なし・T4・T3は一部除外・高温から15cm以内
E:腹腔鏡手術群
C:開腹手術群群
O:3年後の直腸癌再発率
T:RCT、非劣性試験、Δ=5%、follow up 3年
結果:
 平均66歳、術前の放射線治療 59%、化学療法 33%
 プライマリアウトカムは、腹腔鏡群 vs 開腹手術群の差が 0.0(-2.6 to 2.6)と有意差はなく、Δ=5%もクリアーし非劣性が証明された。
 再発率に差は無く、生存率も両群共に有意差を認めなかった。

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(本文より引用)

 ということで、きちんとした大規模RCTで癌再発率・死亡ともに開腹手術に非劣性である事が証明されました。腹腔鏡手術は巷では話題になっていますが、適応を選んで適切な手術を行うことで開腹手術に劣らない手術成績をのこせるということになります。

✓ 直腸癌の手術では、腹腔鏡手術は開腹手術に非劣性である