栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM アミオダロンによる角膜障害/染色体異常スクリーニングにcfDNA検査/医学生の教育と選択/遺伝子規定身長と冠動脈疾患/敗血症におけるSIRSの感度

■JAMA■
今週はお休みします〜。
替わりにNEJMたくさん読みます・・・

■NEJM■

アミオダロンによる角膜障害 
Amiodarone-induced vortex keratopathy*1

 アミオダロン内服は個人的には長期処方を開始したことはありませんが、今回アミオダロン使用による角膜障害の症例報告が出ていました。

 症例は50歳女性、数週間前から両眼にhaloや光周辺に輪が見えるという主訴でプライマリケア医を受診。眼外傷の既往や角膜手術の既往は無かった。2年前から心房細動に対してアミオダロン内服を開始。身体所見では、両眼の視力は最高で20/20で、細隙灯検査では渦巻き状角膜と呼ばれる特徴的なアミオダロン誘発性渦角膜症を呈していた。他の眼球構造は異常なく、アミオダロンの副作用と考えられた。ほとんどの場合には視力障害は起こらないが、haloが見えたり、光周辺に輪が見えたりすることもある。他の癌毒性としては、アミオダロン誘発性白内障や視神経障害の報告はある。
 本症例では患者さんに病状を説明し、サングラスをかけることで年1回の眼科通院を支持したところ、眼所見は正常化し、視野症状も消失していた。

 えーと、日本ではアミオダロンの保険適応外使用ですね!

✓ アミオダロン長期内服によって角膜障害が起こる可能性があるが、特別な対処は不要
 

染色体異常スクリーニングにcfDNA検査 
Cell-free DNA analysis for noninvasive examination of trisomy*2

 21トリソミーの出生前診断にカンする話題です。今まではhigh risk妊婦さんに関する採血によるCell-free DNA検査(染色体検査)でしたが、今回はスクリーニングとしてlow risk妊婦さんも含めた一般妊婦検診としてのcfDNA検査の効果を検証しています。

 論文のPECOは、

P:18歳以上の妊娠10-14週の妊婦さん15841人
   双子以上除外/自身の卵子使用している場合のみ/癌患者除外
E:cfDNA検査
C:通常スクリーニング
O:21トリソミーの診断へのAUC
T:後ろ向き観察研究/多施設多国籍
結果:
 企業スポンサー・企業データ解析
 平均31歳、妊娠週数12週間
 プライマリアウトカムは、①cfDNAでAUC 0.999 感度100%、特異度 99.9%、②通常スクリーニング群でAUC 0.938 感度78.9%、特異度94.6%だった。
 cfDNA検査は通常スクリーニングよりも走査特性よく21トリソミーの除外・診断に使用可能な検査だった。

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(本文より引用)


 これは脅威の感度特異度です。除外にも診断にもばっちり使えます。しかもlow risk患者で偽陽性が増えるようなことも一切無かったとのこと。今後standardになっていくことは間違いないと思います。あとはこの結果を実際にどのように利用していくかですね。

✓ 21トリソミーの診断・除外にcfDNA検査は極めて有用である


医学生の教育と選択 
Getting the right medical students - Nature versus Nurture*3

 現在は医学生教育には普段からは携われていませんが、それでも後期研修医指導で色々と思う事はあります。また、某専門医試験でもコミュニケーションスキルの試験がありますが、これはもっと早い段階で評価・研鑽を受けるべきだよなあとも思うわけです。

 冒頭では、「おどおどして専門用語ばかり使う医学部4年生」を見ながら、指導医達が「どうしてこんなやつを入学させたんだ?」とのたまう場面が出てきます。医師のコミュニケーションスキル評価は昔から低く、しばしば問題視されています。対策として、もちろん入学してからの教育ということもありますが、それ以前に入学の段階でどのような人材を医学部にリクルートするか?というのが課題になっています。

 米国では、最近では人間性のある人物をスクリーニングできる(もしくは人間性に問題のある人間を篩い落とすことが出来る)入学試験を開発中なんだそうです。ただ、一方で人間性のみでも問題であり、よりsmartな人材である必要もあります。優先度はどちらが高いのでしょうか?

 医学部生はアカデミックな理由(要は学術レベルが低い等)で医者になれないことは非常に稀で3%程度と言われています。つまりsmartの部分は教育で担保される部分が大きいのです。一方で人間性の部分に卒前卒後も含めて多くの課題を残しています。今後は、入学時点で人間性のある学生を選択し、医学部時代には早期患者暴露を通して、早期にコミュニケーションスキルの教育を重点的に行い、それでも人間性に問題のある学生は進級・卒業できない仕組みを作ることが重要だと述べられています。卒後には、患者との時間を十分確保出来る医療体制が重要になります。最期の卒後の話はまさにその通りで、時間が足りないことによる弊害がコミュニケーションを阻害することは、実体験でも感じるところです。
 
 人間的なコミュニケーションスキルを発揮するには、十分な時間的余裕と気持ちの余裕は不可欠です。某救急の先生が、「夜中ににっこり対応」的なことを言いますが、それはシフト制業務が成せる業という部分でもあります。日勤で仕事をして夜中中仕事し、翌日も夜まで仕事というシフトで、コミュニケーションスキルも何も無いかなと思ってしまいます。労働環境の問題か・・・

✓ 医師のコミュニケーションスキルの研鑽は、入学時〜医学部時代〜卒後のそれぞれのフェーズで重視すべきである


遺伝子規定身長と冠動脈疾患 
Genetically determined height and coronary artery disease*4

 「身長と冠動脈疾患」という話題を今回初めて知りました。過去の研究の個人データメタ解析によると身長が6.5cm低くなる毎に冠動脈疾患が8%増加することが知られているのだそうです。様々な交絡因子が予測され、過去に交絡因子補正は様々成されていますが、この関係は崩れていないんだそうで。
 今回は、単なる身長を評価するだけでは無く、身長のvariantの10%を規定する遺伝子多型を利用して、その遺伝子と冠動脈疾患の関連について後ろ向き観察研究で検証しています。

 論文のPECOは、

P:身長と冠動脈疾患を比較した研究の個人データ。冠動脈疾患症例65066例とコントロール128383例
E:身長関連遺伝子あり
C:身長関連遺伝子なし
O:冠動脈疾患発症
T:後ろ向き観察研究
結果:
 今回の検証で身長関連遺伝子ありで身長が実際に6.5cm低くなると冠動脈疾患の発症率は13.5%(5.4-22.1%)増加
 一部は脂質上昇と関連していたものの、遺伝子多型は独立して冠動脈疾患との関連が疑われた


 全く知らない領域の話でした。身長低いとこんなところで損をするなんて。なんだか釈然としないです(笑)
 どうやら遺伝子的に身長と動脈硬化両方に関連するメカニズム・pathwayがありそうだという仮説が立てられています。今後、この領域にも新知見や新薬開発の予感ですね。

✓ 身長が低くなると冠動脈疾患が増えるが、関連するのは身長規定遺伝子の多型の可能性


敗血症におけるSIRSの感度 
Systemic inflammatory response syndrome criteria in defining severe sepsis*5

 敗血症の際にSIRS2項目以上という基準がありますが、実際に2項目の根拠は乏しかったりします。今回SIRSの項目が死亡とどの程度関連するのかを検証した後ろ向き観察研究が報告されていました。データはオーストラリアとニュージーランドからで、両国の全ICUの90%をカバーするhigh quality dataを用いて検証されています。流石オーストラリア。

 論文のPECOは、

P:2000-2013年にICU入室した患者のうちsevere sepsis患者109663人
   severe sepsisの定義は感染+臓器障害(SOFA score ≧3)、ICU入室24時間以内
E:SIRS2項目以上(SIRS positive)
C:SIRS2項目未満(SIRS negative)
O:全死亡
T:後ろ向き観察研究
結果:
 109663人がsevere sepsis患者でSIRS陽性患者は96385人(87.9%)、SIRS陰性患者は13278人(12.1%)だった
 経時的に死亡率は低下傾向で、SIRS positive群は36.1%→18.3%、SIRS negative群は27.7%→9.3%だった。
 死亡率はSIRS1項目追加される毎に死亡率のOR 1.13(1.11-1.15)と有意に上昇した

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(本文より引用)


 SIRSが死亡ときれいな正の相関関係が証明されました。一方で、全体の12%はSIRS陰性敗血症だったということも忘れてはいけませんSIRS陰性が多いのは高齢者です。それはそうかも知れませんね。SIRS 2項目をカットオフにする根拠は乏しく、SIRS1項目上昇する毎に死亡リスクが高くなるんだなということ。さらに、SIRS陰性もあるよーと。結局、今回の結果から何を最も学ぶべきか・・・SIRSに頼りすぎるなというところでしょうか。

✓ SIRSはあくまで指標であり、頼りすぎないこと