栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet CKDへのメトホルミン使用/ワーファリンと新規抗凝固薬の消化管出血頻度/急性期脳卒中超急性期リハビリの効果/季節性インフルエンザへのタミフル/COPDレビュー

BMJ■ 

CKDへのメトホルミン使用 
Using metformin in the presence of renal disease*1

 2015年1月に英国のMHRA(Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency)が、
 ①eGFR<45でメトホルミンを使用しないように
 ②eGFR 45-60で慎重に使用するように
と勧告
しています。この勧告通りに従うことで、メトホルミンの使用量は減るだろうとされています。一方で、メトホルミンは各種経口血糖降下薬の中で、唯一心血管死亡を減らす効果が証明されている薬剤です。腎機能障害がある患者でのメトホルミン使用で最も危惧されるのは乳酸アシドーシスですが、最近のコクランレビューでも、前向き観察研究結果をまとめると、メトホルミンと乳酸アシドーシスには関連が無いという結果になっています。

 腎機能障害による非推奨・減量はconservative推奨であり、エビデンスに基づいたものではありません。メトホルミンを制限するガイドに基づくと使用量が減るのは目に見えています。HbA1c値のみを下げることが証明された薬剤を推奨するくらいなら、きちんと効果の証明された薬剤を使用しましょう!というのがメッセージです。とはいえ、現実的には腎機能障害例で使用して万が一トラブルが起きると・・・と思うと使いにくいですよね(涙)。

✓ 腎機能障害例でのメトホルミン禁忌・減量についての根拠は明確では無い
 

ワーファリンと新規抗凝固薬の消化管出血頻度
Comparative risk of gastrointestinal bleeding with dabigatran, rivaroxaban, and warfarin: population based cohort study*2

 NOACが普及して、その出血の少なさが売りになっていますが、果たして実臨床ではどうかな?という検証BMJで報告されています。Open label dataを使用した後ろ向き観察研究です。
 論文のPECOは、

P:2010-2013年に新規ワーファリン導入もしくはNOAC導入した13万人のうち、透析・機械弁・施設入所・僧帽弁狭窄症を除いた9万人のデータを利用
E/C:ワーファリン vs ダビガドラン、②ワーファリン vs リバロキサバン
O:消化管出血
T:後ろ向き観察研究
結果:
 ワーファリン vs ダビガドラン 
 心房細動症例の消化管出血頻度は、ワーファリン 2.87(2.41-3.41)/100人年、ダビガドラン 2.29(1.88-2.79)/100人年
 非心房細動症例の消化管出血頻度は、ワーファリン 4.10(2.47-6.80)/100人年、ダビガドラン 3.71(2.16-6.40)/100人年
 

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(本文より引用)


 ワーファリン vs リバロキサバン
 心房細動症例の消化管出血頻度は、ワーファリン 3.06(2.49-3.77)/100人年、リバロキサバン 2.84(2.30-3.52)/100人年
 非心房細動症例の消化管出血頻度は、ワーファリン 1.57(1.25-1.99)/100人年、リバロキサバン 1.66(1.23-2.24)/100人年

f:id:tyabu7973:20150510004503j:plain(本文より引用)

 プロペンシティーマッチスコアでの調整での比較では、心房細動症例でワーファリン vs ダビガドラン HR 0.79(0.61-1.03)と有意差なし、ワーファリン vs リバロキサバン HR 0.93(0.69-1.25)と有意差なし


 NOACとワーファリンでは、消化管出血に有意差はありませんでした。COIのない研究です。サブ解析で、年齢毎の評価をしていますが、76歳以上の高齢者では、NOACの方が有意に出血を増やす結果でした。

 この結果をどう考えるかですが、まあワーファリンとほぼ同等だし、ワーファリンで良いんじゃない?という様に考えましたが、皆様はいかがでしょうか?

✓ ワーファリンとNOACの消化管出血頻度は有意差は無かった

 


■Lancet■

急性期脳卒中超急性期リハビリの効果 
Efficacy and safety of very early mobilisation within 24 h of stroke onset(AVERT): a randomised cotrolled trial*3

 脳卒中発症後どのタイミングでリハビリを開始すべきかという話題です。「早ければ早い程よいんでしょ?」みたいなノリがありますが、本当にそうなのでしょうか?現在の世界各国の脳卒中関連ガイドラインでは、22/30で超早期リハビリを勧めています。ただ、一方で十分検証されたエビデンスに基づいた推奨というわけではなく、病態機序としては、頭部挙上によるペナンブラの血流減少や運動による頭蓋内圧亢進、転倒や外傷による脳出血などのリスクが高まる可能性が危惧されています。
 というわけで、今回の論文のPECOは、

P:発症24時間以内の脳卒中患者2104人、18歳以上で全56カ所のSCU担当
E:超早期リハビリ
C:通常SCUケア
O:3ヶ月後mRS 0-2の割合
T:ランダム化比較試験
結果:
 平均 72歳、mRS 0点が75%前後と軽症例多い、初発例が80%前後
 超早期リハビリ群は実際18.5時間から介入、通常SCUケア群は22.4時間と介入開始が4.8時間早かった
 超早期リハビリ群と通常SCUケア群を比較すると、mRS 0-2点の割合は通常SCUケア群の方が有意に多かった(調整OR 0.73(0.59-0.90)

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(本文より引用)

  過去のガイドラインの推奨とは異なる結果でした。ガイドラインを変える必要があるかもね〜と。
とはいえ、実際のリハビリ開始時間5時間弱しか変わりません。もう少し追加検証で同じ結果が出るのか複数のRCTでの証明が必要かもしれませんね。

✓ 脳卒中に対する入院後超早期リハビリ開始は、3ヶ月後の神経機能予後を悪化させるかもしれない


季節性インフルエンザへのタミフル
Oseltamivir treatment for influenza in adults: a meta-analysis of randomised controlled trials*4

 何だかもう永遠のテーマみたいな感じにになってます。ロシェがデータ隠したりするからいけないんだとは思いますが、こんなに効果についていちいちケチが付くのも可哀想な気もします。今回は、2014年までに行われた全てのRCTのPublish,unpublishデータを対象として、個人データを用いてメタ解析を行っています。小児の論文は除外し成人症例のみ。
 論文のPECOは、

P:発症36時間以内のインフルエンザ様症状の患者
   定義は、①くしゃみ・咽頭痛・咳嗽の1つ以上、②38℃以上の発熱、③頭痛・筋肉痛・疲労感・発汗の1つ以上の①-③を全て満たす症例4328人(9RCT)
E:タミフル5日使用
C:プラセボ5日使用
O:症状改善までの時間
T:メタ解析
結果:
 9つのRCT 4328人の症例データを解析。
 プライマリアウトカムの症状改善までの時間は、タミフル群がプラセボ群と比較して17.8時間(9.3-27.1時間)短くなった。
 サブ解析では、インフルエンザ迅速検査やウイルスPCRで確定された症例は、タミフル群がプラセボ群と比較して25.2時間(16.0-36.2時間)症状改善までの時間が短くなった。
 副作用としては、確実に多いのは嘔気・嘔吐で全体の3-5%程度に生じ、NNH 20-25程度と見積もられた。


 まあ、何にせよ効果はあるんですよね。症状は1日前後早く良くなる。これはもう確定で良いんじゃないかなあ。ただ、同じくらいはっきりしていることとして、嘔気・嘔吐もかなりの頻度ででると言うこと。ここもきちんと説明する必要があるでしょうね。あと、もう一つは臨床診断では無く検査で診断が付いた症例の方が、タミフル効果が期待できると言うことでもあります。まあ、でも若年健常人にはタミフル使わなくなったなあ・・・

✓ タミフルの効果は約1日弱症状を早く改善するが、嘔気・嘔吐の副作用は有意に増える


COPDレビュー 
Early chronic obstructive pulmonary disease: definition assessment, and prevention*5

 COPDレビューが出ていました。メジャージャーナルを読むようになると主要疾患のレビューはあちこちで定期的に報告されているので、目新しい話があるわけではありませんが、ざっくりとまとめてみます。

 COPDは世界の死亡原因第3位で、多様な原因からなるヘテロな疾患であると言うのが昨今の評価です。以前は喫煙者の疾患という認識でしたが、最近では非喫煙者のCOPDも増えています。

 まず、COPDの定義ですが、SABA吸入後FEV1.0/FVC<0.7とされていますが、これには2つの問題点があると言われています。1つめは、カットオフ値の問題です。0.7と定義されていますが、加齢とともにFEV1.0がFVCよりも生理的に低下する為、若年者では見逃しが多く高齢者では過剰診断が多くなると言われています。

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(本文より引用)

もう一つは、気流制限を来す喘息などの他疾患をどこまで除外するかという問題です。現在は、COPDの診断には気管支拡張症や喘息などは除外することが必須とGOLDで定義されていますが、asthma componentを合併したCOPDという疾患概念も確立しており、ヘテロな症候群をどこまで定義付けするかが難しい問題とされています。

 COPDのリスクの50%はタバコで説明できるものの、残りは説明できないとされています。COPD発症の背景には、単なる喫煙歴だけでは無く、胎児期や生育期に十分肺成長が得られなかったり、喫煙以外の肺機能を低下させる要因も重要と言われています。

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(本文より引用)
 
✓ COPDは単一な喫煙関連の肺疾患では無く、様々な基礎疾患の集合体である