栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:尿酸による尿管結石患者の治療/低酸素脳症後ミオクローヌス/急性憩室炎治療後の管理

MKSAP勉強になります。
知らない病気は診断できません。

尿酸による尿管結石患者の治療  Treat a patient who has uric acid stones

❶症例 
 54歳男性で、過去に5回の尿管結石既往のある患者が外来を受診された。これらの尿管結石のうち2回は尿酸結石だった。彼の3回目の尿管結石後に、クエン酸カリウムの内服が開始された。既往歴は2型糖尿病、高血圧、脂質異常症あり、痛風既往なし。高蛋白食を食べることが多く、水分摂取は多くなかった。内服薬は、メトホルミン・メトプロロール・アムロジピン・アトルバスタチン・アスピリンだった。
 身体所見では、BP 136/82mmHg、Pulse 68bpm、BMI 32だった。CVA叩打痛はなく、身体所見には異常所見なし。
 採血結果は、

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(MKSAPより引用)

 水分摂取量増加と食事習慣の変化に加えて、最も適切な治療はどれか?

 ❷尿酸による尿管結石
 尿酸結石による尿管結石は典型的には、尿量低下と高尿酸尿症によって引き起こされる。高尿酸尿症は、蛋白質食や腫瘍崩壊症候群の様な急速なプリン代謝に起因する可能性がある。その他の危険因子として、痛風・尿酸過剰産生・糖尿病・メタボリック症候群・慢性下痢などが含まれる。
 本患者では、水分摂取量低下・尿中尿酸高値・尿量低下などのリスクがあり、どれも尿酸による尿管結石のリスクに成り得る。クエン酸カリウム(ウラリットⓇ)による尿のアルカリ化によりph>6.0を達成することで多くの場合には十分再発を減らすことが出来る。本患者のようにアルカリ化しても再発する場合には、積極的な経口水分補給と動物性蛋白質(肉・魚介類・酵母等)制限による食事療法を加えつつ、尿酸産生および排泄を低下させる為にキサンチンオキシダーゼ阻害剤を開始する。

❸その他の治療選択肢
アセタゾラミド:アセタゾラミドは尿をアルカリ化するが、慢性的な使用は代謝性アシドーシスを来すため、一般的には使用しにくい。肝腎機能正常で外来治療可能な場合の治療選択肢には成り得る。一般的にはクエン酸カリウムの量や回数の調整を行う。
炭酸カルシウム:炭酸カルシウムは高シュウ酸尿症によるシュウ酸カルシウム結石の治療に用いられる。
サイアザイド系利尿薬:血清尿酸値を上昇させ、痛風を来す可能性があり、本患者への使用は不適切である。

Key Point
✓ 再発性の尿酸結石に対する治療は、尿のアルカリ化に加えて、アロプリノール内服である。

Goldfarb DS. In the clinic. Nephrolithiasis. Ann Intern Med. 2009;151(3):ITC2. PMID: 19652185

 

 

低酸素脳症後ミオクローヌス Diagnose posthypoxic myoclonus

❶症例
  22歳男性が筋肉の痙攣の精査で受診。3ヶ月前に薬物過量服薬後の原発性呼吸停止で入院した。呼吸停止後の蘇生処置は呼吸停止2分後から開始された。3週間は人工呼吸器装着の上昏睡状態だったが、昏睡から回復した後に、四肢の特に下肢優位にび漫性筋痙攣を認めた。徐々に認知機能は改善したが、筋痙攣の為に手を用いることが出来ず、歩行は出来なかった。
 車椅子に静かに座った痩せた男性で、安静時には痙攣も振戦も認めなかった。腕を持ち上げると近位筋の筋痙攣を認め、指鼻指試験も施行できない。立位では、下肢と体幹の筋痙攣があるが、突然筋緊張がなくなり立てなくなってしまう。
 最も適切な診断はどれか?

 ❷造影剤腎症リスク
 腎毒性のある造影剤の尿細管暴露は、CKD患者の造影剤腎症リスクを上昇させる。造影剤腎症リスクが高い患者では造影剤暴露を避けることが望ましい。もし、造影剤が必要な場合には、低濃度造影剤や輸液を行い、尿量を確保することが重要である。等張液補液は造影剤腎症リスクが高い患者のリスクを減らす為に施行される。

 低酸素脳症後ミオクローヌスとは?
 長期の脳の低酸素や無酸素は、この患者に見られるような全身性のミオクローヌスを来す症候群を呈することがあり、古典的にはLance-Adams症候群として知られている。低酸素脳症後ミオクローヌスの臨床的特徴は、力強く衝撃様の筋痙攣で、活動や刺激によって誘発され、持続的な姿勢保持を取ると突然脱力するようなネガティブミオクローヌスを来す。ネガティブミオクローヌスは、持続的な筋肉の姿勢保持を障害する為、直立姿勢と歩行が出来なくなる。
 低酸素脳症後ミオクローヌスの起源は、大脳皮質の過剰興奮といわれ、低酸素・無酸素脳症後に障害を受けやすい。原因としては、心停止や心肺蘇生の遅れが多く、治療が非常に困難で予後不良で差ある。治療としては、バルプロ酸・レベチラセタム・クロナゼパムなどの抗痙攣療法に用いる薬剤が使用される。

 ❹他の鑑別疾患は?
小脳変性症:脊髄小脳変性症症候群は、常染色体優性遺伝のパターンを呈し、平均40-50歳台で発症する慢性・進行性の小脳失調が特徴である。典型的には歩行不安定と四肢の協調運動障害を来すが、活動によって増悪するような筋痙攣は来さない。
ミオクローヌスてんかん特発性全般てんかん症候群の一つで、覚醒時のミオクローヌス発作と全身性強直間代性発作の両方が特徴的なてんかん発作である。ミオクローヌス発作が集積すると、全身性強直間代性発作まで進展することがある。発症は青年期。
Wernicke脳症:特徴的な運動失調と眼筋麻痺(外眼筋等)、錯乱、末梢神経障害、痙攣発作と関連している。ビタミンB1欠乏症によって引き起こされ、一般的にはアルコール依存症のある患者に発症するが、それ以外には、長期間飢餓状態になる様な肥満手術後の患者や繰り返す嘔吐のエピソードがある患者、長期間のビタミン補充無しの経静脈的栄養を受けている患者で発症しやすい。

Key Point
✓ 最も適切な診断は低酸素脳症後ミオクローヌスで心停止や心肺蘇生が遅れたことが原因になる。

Venkatesan A, Frucht S. Movement disorders after resuscitation from cardiac arrest. Neurol Clin. 2006;24(1):123-132. PMID: 16443134

 

 

急性憩室炎治療後の管理 Manage recently resolved acute diverticulitis

❶症例


  57歳女性が、合併症のないS状結腸の急性憩室炎の入院治療後6週間経過して外来を受診された。入院中の治療として、経静脈的抗菌薬投与を受けて解熱し、症状は改善した為、72時間以内に経口摂取を開始した。その後、7日間の経口抗菌薬処方を受けて退院。外来受診時には、元気で特に症状を認めなかった。

 最も適切な管理はどれか?

 ❷急性憩室炎
 合併症のない急性憩室炎は、グラム陰性桿菌と嫌気性菌をカバーする広域抗菌薬による7-10日治療を行うべきである。経静脈的抗菌薬投与による入院は、経口摂取ができない患者の選択肢である。症状が改善し、経口摂取が可能となれば、経口抗菌薬への変更が適切である。

 ❸検査方法
 大腸内視鏡検査憩室炎治療後には、大腸癌やCrhon病などの憩室炎との鑑別が難しい疾患の除外の為に大腸内視鏡検査を行うべきである
 部分的結腸切除憩室炎の再発を減らす為に施行されることがあるが、予防的手術のタイミングには議論の余地がある初発の急性憩室炎患者の3人に1人は再発するといわれている。若年者(<50歳)・免疫不全状態・複数の併存疾患があるなどの高リスク因子が無ければ、再発リスクは低く初回の憩室炎の治療として切除は積極的には推奨されない。
 プロバイオティックス腸内細菌叢の変化は、急性もしくは慢性の憩室炎の病因と関連する可能性があるが、憩室炎の抗菌薬治療後にプロバイオティックスを使用することが、憩室炎再発への影響がどうなのかを検討した研究はなし。

Key Point
✓ 急性憩室炎の治療後に、大腸疾患の精査で憩室炎と誤診しやすい大腸癌やCrohn病を除外する目的に大腸内視鏡検査を行うべきである。

Hemming J, Floch M. Features and management of colonic diverticular disease. Curr Gastroenterol Rep. 2010;12(5):399-407. PMID: 20694839

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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