栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:下垂体卒中/家族は最大の観察者/Kluver-Buci症候群

一週間お疲れ様です。
日々学びです!学びまくりです!

下垂体卒中 Pituitary apoplexy

  どうでも良いですが、”アポる”ってapoplexyからきてるんでしょうねえ。語源はギリシャ語の様です。

 下垂体卒中は下垂体の血流障害によって、突然の頭痛・視力障害・眼痛・眼筋麻痺・意識障害などを来す症候群です。症状からは、急性緑内障発作と間違われることもあり、注意が必要です。一般的には下垂体出血が多いですが、梗塞も含まれます。下垂体卒中を来しやすい基礎疾患としては、下垂体腺腫があること・妊娠中・分娩後・高血圧などがあります。過去には繰り返した症例の報告もあり、妊娠・出産によって増大・縮小を繰り返すものもあった様です。負荷試験によって発症する事も知られており、下垂体に負荷をかける様な、LH-RH負荷試験やTRH負荷試験、インスリン負荷試験での報告があります。

 CTでルーチンに下垂体を見る癖をつけておかないと見落とすことがあります。また、病歴で疑っておかないと、単純CTでは同定できないこともあり、トルコ鞍拡大程度しか分からないこともあります。疑った場合には頭部MRIが有用ですが、出血の時期によって写り方が違うことには注意が必要です。

 ✓ 画像読影にはルーチンが大事。頭部CT読影のルーチンに下垂体の確認を。

 

 

家族は最大の観察者 Family is best observer for diagnosis

 失神の病歴聴取の際にも強調しましたが、とにかくWitnessがとても重要です。そして、言うまでもなく、患者の最大の観察者は同居している家族です。私達は家族からの話にどのくらい耳を傾けているでしょうか?家族からの情報アドバンテージって何でしょう?ざっと箇条書きしてみたいと思います。

 ① 患者の普段を知っていること(家族の”普段と違う”はだいたい正しい)
 ② 症状が起こった場に居合わせていること(現場の情報は家族しか知らない)
 ③ 小さな変化に気付く可能性があること(長年介護している方などは本当に細かく観察している)
 ④ 過去の症状との比較ができること(以前入院した時もこうだったとか)
 ⑤患者家族とのコミュニケーション向上(じっくり話をすることで、診療を提供する上で良好な関係作りに繋がる)

 もちろん身近過ぎることで、感情的な情報のバイアスがかかってしまったり、必要以上に重篤と感じてしまい易いなどの問題点はありますし、患者と家族との関係性が分からないと情報の信憑性・価値が判断しにくいという欠点もあります。
 ただ、どちらにしても患者本人からの病歴のみならず、家族からの情報も診断には必須ではないかなと考えています。何度も「あー、確かに家族は最初からそう言ってたよね・・・」という経験はあります。Dr.HOUSEとは逆だなあ・・・

✓ 家族からの情報は非常に有用であり、ゆめゆめおろそかにする無かれ。

患者はだれでも物語る―医学の謎と診断の妙味

患者はだれでも物語る―医学の謎と診断の妙味

 

 

 

Kluver-Bucy症候群 Kluver-Bucy syndrome

 初めて聞く名前でした。自分の全く知らない知識を教えてもらえるカンファレンスって本当に貴重です。それが院内で定期的に開催されるなんて・・・。まあ、きっと医学部では勉強していそうですし、私が知らないことが多いだけかも知れませんが。
 
 H.KluverとP.C.Bucyさんは、1937年にサルの両側側頭葉を切除したところ、
 ①視覚失認
 ②口唇傾向
 ③視覚性過敏反応
 ④情動変化
 ⑤性活動の増加
 ⑥食習慣の変化
という特異的な症状を報告しました。後に、Terzianらがてんかん発作の為に両側側頭葉切除した患者で、Kluver-Bucy症候群を報告しています。具体的な症状に「危険な物や無意味な物でも、見たもの全てを口に入れてしまう」といった症状があり、これが口唇傾向(hyperorality)です。また、「一度手に取って調べた物を何度も調べ回す」といった視覚性過敏反応なども特徴的であり、どちらも介護者負担を増やすことが大きな問題となっています。

 原疾患としては、外傷・脳炎・てんかんADEM等多くの基礎疾患の報告があり、病態生理としては、扁桃体の障害が関連するのではないか?と指摘されています。

✓ Kluver-Bucy症候群は、口唇傾向や視覚性過敏反応が特徴の症候群で、様々な中枢神経疾患が原因と成り得る