栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet ドイツの検診のパラダイムシフト/PCI後のDAPT至適期間/RA患者のTNF-α阻害剤テーパリング/閉経後女性へのホルモン療法と卵巣癌/偽性副甲状腺機能低下症

BMJ

ドイツの検診のパラダイムシフト 
Towards a paradigm shift in cancer screening: informed citizens instead of greater participation*1

 検診については世界各国で見直しが行われ、”検診の害”という部分に少しずつ焦点が当たってきています。未だ日本では早期発見・早期治療が何よりも素晴らしいという幻想に包まれていますが、実際にはそうではないことも多いことに注意しながら検診を考えていく必要があります。

 そんな中ドイツが検診についてパラダイムシフトとも思われる宣言をしています。具体的な内容としては、①検診ではしっかりと害を伝えること、②利益と害について情報提供出来る医師作りをすること、の二本柱です。今までの検診のアウトカムのメインに「検診率アップ」というアウトカムがありました。某日本の行政では検診を受けると商品券とかいう訳の分からないことになっています。でも、検診率がアップすることよりも、検診について適切な情報提供を受けている方の割合を増やすことが大事だろうというのが今回の宣言の主眼です。乳癌検診で過去に検証されたデータによると乳癌検診について適切な知識があるのは受診者の2-4%程度しかいないと言われています。乳癌検診の患者パンフレットについては過去に当ブログでも取り上げました。

tyabu7973.hatenablog.com


 また、同時に医師も検診の効果と害を理解していません。自身が理解していないので、受診者さんにも適切に伝える能力がないというのが大きな問題点の一つです。ドイツでは今後、正確な情報提供・医学生教育に力を入れていく方針です。

✓ 検診では利益と害の適切な情報提供により医療者・患者両方の成長が重要 
 

PCI後のDAPT至適期間 
Optimal duration of dual antiplatelet therapy after percutaneous coronary intervention with drug eluting stents: meta-analysis of randomised controlled trials*2

 この辺りもしばらく色々言われているテーマですね。現状ガイドライン推奨のPCI後のDAPT期間は、米国ではDES後12ヶ月のDAPT推奨欧州では、PCI後6-12ヶ月後のDAPT・ACSではルーチンで12ヶ月のDAPTを推奨しています。今回はDES留置後のDAPTの至適期間について10個のRCTのメタ解析が行われています。ただし、個人データは使用されていません。
 論文のPICOは、

P:PCI(DES)後患者32287人(STEMI 10%、NSTEMI 45%)
I/C:①DAPT 12ヶ月、②DAPT <12ヶ月、③DAPT >12ヶ月
O:①心血管死亡、②心筋梗塞、③ステント内血栓、④主要な出血、⑤全死亡
T:メタ解析
結果:
 <12ヶ月のDAPTは、主要な出血を減らし(OR 0.58:0.36-0.92)ましたが、その他の虚血や血栓アウトカムには関連しなかった。
 >12ヶ月のDAPTは、心筋梗塞を減らし(OR 0.53:0.42-0.66)、ステント内血栓を減らし(OR 0.33:0.21-0.51)ます。一方で主要な出血を増やし(OR 1.62:1.26-2.09)、全死亡を増やした(OR 1.30:1.02-1.66)。

  
 短期間のレジメンは少なくとも悪さはしませんが、長期間のレジメンは血栓心筋梗塞を減らすが出血・全死亡を増やすという結果です。do no harmの原則からすれば、short termの方が良いだろうなあと思います。あとは、どの程度まで短くして良いか(3ヶ月?6ヶ月?)、どの程度のリスクの方にDAPT>12ヶ月が望ましいかを検証する必要があります。

✓ DAPT<12ヶ月は12ヶ月と比較して、出血を減らし他のアウトカムは変わらなかった


RA患者のTNFα阻害剤テーパリング DRESS研究 
Disease activity guided dose reduction and withdrawal of adalimumab or etanercept compared with usual care in rheumatoid arthritis: open label, randomised controlled, non-inferiority trial*3

 RAに対する生物学的製剤が普及する中でどんな患者さんで中止できるのかを検証したtrialが徐々に増えてきています。今回もCOIありの研究ではありますが、アダリムマブ(ヒュミラⓇ)とエタネルセプト(エンブレルⓇ)中止について検証した研究です。
 論文のPICOは、

P:DAS-28-CRPで低活動性を達成しているRA患者180人
I:生物学的製剤の3ヶ月毎用量減量(レジメンに沿って)
C:通常治療
O:主要な増悪(Flare)
  定義は3ヶ月以上DAS-28-CRPで活動度↑
T:RCT/非劣性試験/Δ=20%
結果:
 平均59歳、リウマチ歴10年でDMARDは70%で使用されています。
 プライマリアウトカムの主要なFlareは、用量減量群は12% vs 通常治療群は10%と非劣性が証明された。
 最終的に介入群で20%がTNF-α阻害薬を中止可能であり、43%が用量を減量することが可能だった。
 但し軽症のFlareや軽度のレントゲンでの進行は介入群の方が多かった。


 今回も中止による非劣性試験です。まあとはいえ、最終的に中止できたのは20%ですから、なかなか中止できないと取ることも出来るかも知れません。炎症性腸疾患もそうですが、止め時が難しいと開始に躊躇してしまうというのが現状かなあという気もしています。

✓ RAに対するTNF-α阻害薬のレジメン通りの減量は通常治療群と比べて主要な増悪(Flare)を増やさない

 


■Lancet■

閉経後女性へのホルモン療法と卵巣癌 
Menopausal hormone use and ovarian cancer risk: individual participant meta-analysis of 52 epidemiological studies*4

 閉経後症状に対するホルモン療法の歴史は1940年から始まったと言われています。ところが1970年代にはいってホルモン療法で子宮癌が増えるという観察研究の結果がでたため、エストロゲンのみからエストロゲンプロゲステロンの合剤での治療に変更になっています。ところが、今度は合剤が乳癌を増やしたという観察研究結果が出てしまっています。更には2002年の研究では心血管イベントも増えるということになっており、現在では閉経後症状に対する使用はごく短期のみ認められているというのが現状です。今回は、卵巣癌はどうなのよ?というメタ解析です。
 論文のPICOは、

P:閉経女性12110人/52個の観察研究のうち前向き研究の個人データ
I:ホルモン療法あり
C:ホルモン療法なし
O:卵巣癌発症
T:メタ解析
結果:
 プライマリアウトカムは、ホルモン療法あり群はなし群と比較して、Relative risk 1.43(95%CI:1.31-1.56)
 治療を止めてから時間が経過するとリスクは減る。
 ホルモン療法の内容によっての違いは無し。

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(本文より引用)


 上記結果でした。ホルモン療法は、子宮癌・心血管イベント・卵巣癌のリスクになる事はほぼ明らかと言って良さそうですね。NNHも計算されていて、1000人治療を受けると1人の卵巣癌が増える計算でした。ただ、実際の所、イベント発症数がかなり少ないのでリスクの絶対数としてはそれほど多くは無いとも言えますね。

✓ 閉経後女性へのホルモン療法は卵巣癌発生を増やす


偽性副甲状線機能低下症 
An epigenetic cause of seizures and brain calcification: pseudohypoparathyroidism

 Lancetの症例報告。時折この手の頭部CT画像は見ますけどねえ。簡単に症例提示します。

 症例は21歳右利きの学生。2014年3月に初発痙攣発作後に神経内科を受診した。患者は自転車運転中に突然倒れ、5分間の強直間代性痙攣発作を来したことが目撃された。入院時、傾眠はあったものの見当識は保たれていた。既往歴も家族歴も薬剤使用歴も認めなかった。身体所見では、低身長(166cm)と夜尿症があったが他には異常なし。頭部CTでは外傷性脳挫傷は認めず、大脳基底核と前頭葉に石灰化を認めた。採血検査では、CK 1913U/Lと高値で、Ca 1.13と低下、リン酸 1.98と上昇していた。低カルシウム血症時に典型的に認められる手足の痙縮やChvostek徴候は認めなかった。脳波は基礎律動は、び漫性の徐波とそれに伴う脳波異常を認めた。本患者では、低カルシウムと高リン血症を認めたため、TSHとPTHを確認したところ、TSHは正常でPTHが増加しており、偽性副甲状腺機能低下症と診断した。

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(本文より引用)

 偽性副甲状腺機能低下症は、PTHの作用臓器抵抗を特徴とする遺伝性疾患で、1A・1B・1C・偽性偽性副甲状腺機能低下症などのサブタイプに分類される。低身長・発達遅延・短指症・軟部組織石灰化が特徴的で、低カルシウム・高リン血症を来す。治療は、高カルシウム尿症を避けPTH濃度を維持する為に、血清カルシウム値を正常化することが目標である。本患者は、痙攣の原因は低カルシウムと考えられたが、カルシウム補正に加えて抗けいれん薬処方を受けた。4週間前後で血清Ca・P・PTHは全て正常化し、痙攣を認めていない。

✓ 偽性副甲状腺機能低下症は若年発症の低カルシウム血症で痙攣初発であることが多い