栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:侵襲性アスペルギルス症の診断/重症の症候性三尖弁逆流症の治療/円形脱毛症の診断

MKSAP今回は結構間違えました。
といってもなかなか馴染みのない領域です。

侵襲性アスペルギルス症の診断  Diagnose invasive aspergilosis after transplantation

❶症例 
  29歳男性が、急性骨髄性白血病に対する同種血液幹細胞移植後2週間経過して外来を受診した。抗菌薬を投与しているにも関わらず乾性咳嗽と3日持続する発熱を認めていた。ドナーと患者はどちらもサイトメガロウイルス抗体価が陽性で、投与薬剤は、イミペネム・シプロフロキサシン・バンコマイシン・アシクロビル・フルコナゾールだった。
 身体所見では、T 38.5℃、BP 122/74mmHg、Pulse 98bpm、RR 18/minだった。皮膚所見では、点状出血は認めるが発疹は無かった。胸腹部に異常所見無く、静脈カテーテル刺入部に発赤や膿は認めなかった。
 採血結果では、Ht 24%、白血球数 100/μl、血小板 15000/μlだった。胸部X線では透過性低下領域が散在し、非造影CTでは、空洞を伴わない結節陰影を認めた。
 この患者の発熱の原因として最も適切な疾患はどれか?

 ❷侵襲性アスペルギルス症
 侵襲性肺アスペルギルス症は、肺移植後や造血幹細胞移植後の好中球減少期に最も一般的に見られる侵襲性真菌感染症である。侵襲性アスペルギルス症は、副鼻腔よりは肺に罹患しやすく、典型的な症状として発熱・乾性咳嗽・喀血・胸痛を伴うと言われている。中枢神経系への浸潤があると、頭痛・局所神経巣症状・精神症状などを発症する。
 本患者における侵襲性真菌感染のリスクとしては、①長時間続く重篤な好中球減少、②広域抗菌薬の使用にも関わらず発熱持続、③肺結節である。
 治療選択肢はボリコナゾールで、本患者が飲んでいたフルコナゾール予防内服ではCandidaはカバー出来るが、アスペルギルスはカバー出来ない。

❸その他の鑑別疾患
サイトメガロ肺炎:造血幹細胞移植の最初の数週間(生着前期)に、サイトメガロ肺炎が起こることは稀である。生着後期である数週〜数ヶ月に見られることがある。サイトメガロ肺炎で肺結節を来す事も稀。
ムコール症:急速に進行する真菌感染症で、最も一般的には、血液腫瘍や長期の好中球減少・
免疫抑制・重症熱傷や外傷、糖尿病性ケトアシドーシスと関連している。ステロイドやデフェロキサミンもまたリスクを増加させる。鼻脳型もしくは肺型が最も多いが、造血幹細胞移植後に発症する疾患としてが、侵襲性アスペルギルス症の方がムコール症より多い。
ニューモシスティス感染症ニューモシスティスは移植後急性に発症する疾患としては考えにくい。胸部X線では典型的には両側の間質影を来すが、肺異常影はバリエーションがあり、正常から浸潤影・囊胞・結節・胸水・気胸まで様々である。

Key Point
✓ 侵襲性アスペルギルス症は、移植療法(特に肺移植や血液幹細胞移植後の好中球減少時)後ではよく見られる真菌感染症で、発熱・乾性咳嗽・血痰が特徴的である。

Asano-Mori Y. Fungal infections after hematopoietic stem cell transplantation. Int J Hematol. 2010;91(4):576-587. PMID: 20432074

 

 

重症の症候性三尖弁逆流症の治療 Treat symptomatic severe tricuspid valve regurgitation

❶症例
  38歳男性が進行性の呼吸困難と浮腫を主訴に来院。過去に薬物注射歴があり、7年前に中止していた。最近数ヶ月間は、日常生活を過ごすにも呼吸困難が増悪しているのに気付いていた。同時期に、下腿浮腫と腹部膨満も増悪していた。
 身体所見では、体温は正常、BP 124/84mmHg、Pulse 75bpm、RR 16/minだった。下顎部に頚静脈怒張と著明なV波を認め、心音は整、心尖拍動を触知し、吸気中に胸骨左縁にLevine 2/6程度の低調な全収縮期雑音を聴取した。呼吸音も正常で肝腫大はなし。腹水と大腿付近までの浮腫を認めた。
 心電図は、4:1の心房粗動で右脚ブロック所見を認めた。経胸壁心臓超音波では、左室腔は正常で左室収縮能も保たれていた。右室は拡張し右室収縮能は低下していた。三尖弁の接合は不良で、弁尖の肥厚と重症の三尖弁逆流を認めた。右房も拡張し、推定右室収縮期圧はDopplarで25mmHgだった。血液培養は陰性。
 最も適切な治療はどれか?

 ❷三尖弁逆流症
 本患者は、右室拡張と収縮能低下といったVolume overloadの所見があり、呼吸困難と重度の右心不全症状を呈している。三尖弁逆流症は、肺高血圧による右室圧増加と機能的逆流によって起こる事がある。また、機能的三尖弁逆流は右室拡張を伴う心筋症で発生することがある。本患者では右室収縮期圧が正常であり、逆流は弁尖もしくは心筋収縮能障害に起因すると考えられる。
 重度の症候性三尖弁逆流症の唯一の決定的治療は弁置換または弁輪形成である。三尖弁手術のタイミングを決定することは難しいが、重度の逆流で、有症候性もしくは右室肥大・右室機能低下を来している患者で考慮すべき。

 ❸その他の治療方針は?
心房粗動に対する除細動:基本的には重度の三尖弁逆流や右房拡張がある場合に、洞調律維持が困難のため推奨されない。
ジゴキシン心不全(特に三尖弁逆流症由来)に対する薬剤投与はジゴキシンもその他の薬剤も十分効果があるとされるエビデンスはない。
抗菌薬投与:本患者の臨床症状に感染性心内膜炎を積極的に示唆するような、発熱・エコーでの疣贅などが存在しない為、抗菌薬治療は適切ではない。

Key Point
✓ 三尖弁手術は、重症の三尖弁逆流で、症状や進行性右室拡大・機能低下がある患者で考慮すべき。

Bruce CJ, Connolly HM. Right-sided valve disease deserves a little more respect. Circulation. 2009;119(20):2726-2734. PMID: 19470901

 

円形脱毛症の診断 Diagnose alopecia areata

❶症例

  21歳男性が、1ヶ月前から頭皮に小さな卵円形の脱毛が出現したとのことで来院。数年前に同様の症状があったが、今回とは異なる前頭部だったが、その後自然に毛髪は回復していた。他の部位の脱毛は無く、健康状態は良好で内服薬もなかった。家族歴では、母親が橋本病だった。
 身体所見では、頭皮は正常で炎症は落屑はなく所見は以下の通りだった。

f:id:tyabu7973:20120614162637j:plain

(本文より引用)
 最も適切な診断はどれか?

 円形脱毛
 円形脱毛症は、明瞭な円形で平滑な領域の脱毛で毛髪開口部も保たれているのが特徴的な自己免疫疾患である。発症は突然で一般的に若年で健康な人に起こる。他の脱毛症とは対照的に、罹患部位の皮膚には炎症や落屑を伴わない。
 感嘆符(exclamation point hair)毛と呼ばれる特徴的な毛髪が周囲に見られる。簡単に抜ける周辺の毛髪は”pencil-point” fractureとも呼ばれる。爪のpittingもしばしば見られる。自然回復も見られるが、再発もよくある。既往歴もしくは家族歴に自己免疫性疾患とりわけ甲状腺炎が多い。

 ❸他の鑑別疾患
 男性型脱毛症数年以上かけて緩徐に進行し、頭頂部や前頭部の脱毛が特徴的。突然出現する巣状・部分的な全脱毛でかつ周囲の毛髪は正常であるのは男性型脱毛とは考えにくい。
 全身性エリテマトーデスSLEは明瞭な斑状脱毛を来すが、一般的には炎症や落屑・色素脱出を伴う
 休止期脱毛多くの場合には、出産や手術、外傷などのストレスの多いイベント後数ヶ月間の間に発症する。び漫性脱毛が特徴で、部分的な全脱毛は来しにくい。
 頭部白癬頭皮の真菌感染症で比較的明瞭な脱毛を来す。円形脱毛症と比較すると、頭皮白癬部位には落屑をもっており、紅斑を伴う事も多い。

Key Point
✓ 円形脱毛症は明瞭な円形で平滑な脱毛領域が特徴的で、炎症や痂皮のない自己免疫疾患である。

Alkhalifah A, Alsantali A, Wang E, McElwee KJ, Shapiro J. Alopecia areata update: Part I. Clinical picture, histopathology, and pathogenesis. J Am Acad Dermatol. 2010;62(2):177-188. PMID: 20115945

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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