栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:特発性脾破裂/違和感を持てるか!?/Budd-Chiari症候群

一週間お疲れ様です。
今週末は闘魂外来ですね、楽しみです。

特発性脾破裂 Atraumatic splenic rupture

 外傷は診る機会がほとんどないので、脾破裂なんて物騒なものにお会いすることはめったにないのですが。非外傷性特発性脾破裂なんて概念があるんですねえ。まあ、伝染性単核球症の時に脾破裂に注意しましょうね、みたいなあれですかね。非外傷性の場合には、感染や悪性腫瘍が基礎疾患にあることがほとんどで、正常脾臓に破裂が診られることは極めて稀です。
 基礎疾患をまとめたものがありましたので文字起こししておきます。

①先天性脆弱性脾嚢胞、血管奇形
②後天性脆弱性
 感染性疾患:細菌感染(感染性心内膜炎・敗血症結核・チフス)、ウイルス感染(伝染性単核球症・風疹・A型肝炎サイトメガロウイルス・ムンプス)、寄生虫疾患(マラリア
 血液疾患:白血病悪性リンパ腫、異常ヘモグロビン症、真性多血症
 代謝疾患:アミロイドーシス、Wilson病
 腫瘍性疾患:原発性脾腫瘍(血管肉腫)、転移性脾腫瘍
 脾梗塞
③凝固異常:抗凝固療法、血栓溶解療法
④脾動脈瘤・血管炎:膵炎、結節性多発動脈炎、Wegener肉芽腫症
⑤癒着:膵炎、腹部手術
⑥身体要因:妊娠、遊走脾、咳嗽
⑦特発性
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsa/73/4/73_971/_pdfより和訳)

 いやあ、鑑別疾患多数だな、これは。”筋性防御を伴う左上腹部痛”が特徴的な臨床症状。後腹膜臓器の破裂なのでしつこい嘔吐にも注意。貧血が進行するなどにも注意が必要です。

 ✓ 特発性脾破裂は左上腹部の筋性防御を伴う急性の腹痛の鑑別疾患。基礎疾患は多岐に渡る

 

 

違和感を持てるか!? Sense of discomfort

 英語にするとSenseなんだなあ・・・センスがあるかないかで片付けられてしまうと辛いんだけど、でもこの臨床的センスは本当に重要です。自分もあまりセンスが無い方で、センスありありの方々の診療を間近にすると、毎回”すごいなあ・・・”とうらやましく思います。

 えっと、何の話かと言いますと、病歴・身体所見・検査結果・・・なんでも良いのですが、医師にとって異常を抽出する能力(嗅覚?センス?)は重要だという話題です。ある種の違和感を感じられるか?そんなん当たり前でしょ?と思うのですが、果たして当たり前なのかなあと。普段、病歴を聞いても、身体所見をとっても、その異常に気付けないままスルーしてしまうことって結構ありますよね。同じ人から病歴を取っても取る人が取ると全く別のストーリーだったりする。診断に至る過程の中で、システマティックに病歴聴取していく部分と、ある意味でのひらめき・センス的な部分と双方の共同作業が重要です。後者を学ぶ事はとても難しいのだけれど、決して持って生まれたセンスというわけではなく、何度も何度も丁寧に患者さんを診ていく中で、”あれ?いつもの胃腸炎と違うな・・・”とか、”既往に喘息ってあるけど、これって違うよな・・・”と気付く作業が大事なんだろうなあと痛感しています。

 検査が好まれる理由って、異常所見の抽出が客観的だったり、他人が異常を指摘してくれる(画像の読影とか病理とかね)からかなあと思ったりします。異常所見の抽出だけだったら、医者いらないですからね。

✓ 違和感を感じられる臨床医へ!

 

Budd-Chiari症候群 Budd-Chiari syndrome

 鑑別には出ては来るんだけど、なかなか診断する機会は少ないですよね。清書によれば慢性型と急性型がある模様です。急性型は重篤で致死率も高いとのことですが、本邦では極めて稀とのこと。閉塞・狭窄部位は肝静脈主幹部もしくは肝部下大静脈と言われ、腹水・下腿浮腫・門脈圧亢進・側副血行路怒張などが主症状です。

 Uptodateをさらっと診てみると、そもそもBudd-Chiari症候群自体は大変多彩な原因によって引き起こされる症候群であり、骨髄増殖性疾患や悪性腫瘍、過凝固状態、Bechet病などが言われており、下大静脈の膜様構造物というのはその中のごく一部という認識の模様です。

 画像検査では、腹部超音波・CT・MRIなどが用いられますが、最も一般的なCT所見では、

①造影CTの遅延相(造影剤注入40-60秒後)に3つの主肝静脈の造影遷延もしくは造影不良
②肝実質の末梢部位と中枢部位のコントラストが強調され、斑状・虫食い状所見
③尾状葉の速やかな造影クリアランス
④下大静脈の静脈腔の狭窄もしくは欠損

 が挙げられています。nonB、nonCの肝硬変や慢性肝機能障害患者さんを診療する際には注意して見る必要があります。
✓ Budd-Chiari症候群の特徴的なCT所見は押さえておく

Budd-Chiari Syndrome