栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

ACPJC:心血管疾患既往のない軽症高血圧に対する血圧降下療法と脳卒中発症率・死亡率

ACPJCは結構毎週の抄読会で取り上げた論文が多くて、ややminorジャーナルからのエントリー中心です。

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Effects of blood pressure reduc- tion in mild hypertension: a systematic review and meta-analysis.

Sundstro ̈ m J, Arima H, Jackson R, et al; Blood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration. 
Ann Intern Med. 2015;162:184-91.


臨床上の疑問:
心血管リスクのない軽症高血圧患者において、血圧降下療法は心血管イベントと関連するか?

方法:
 
①研究デザイン:ステマティックレビュー。
 ②検索範囲:18歳以上の軽症高血圧患者(sBP 140-159mmHg、dBP 90-99mmHg)で心血管疾患既往がない患者に対する、降圧薬を中心とした降圧療法とプラセボもしくはごく少量の降圧療法を比較したRCTが対象。患者のうち80%以上が軽症高血圧であれば組み入れ。
CPAPと他の生活習慣改善や薬剤介入を比較した研究は除外。

 ③アウトカム:心血管イベント(虚血性心疾患による死亡・非致死的心筋梗塞脳卒中心不全による入院・死亡)、心血管死亡、全死亡、副作用による治療中止
 ④検索方法:MEDLINE、CINAHL、Cochrane Central Register of Controlled trialsと過去のRCTのシステマティックレビューが検索された。Blood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration(BPLTTC)の患者個人データが解析された。
 ④検索結果:3つのRCT(n=8905、糖尿病なく、降圧薬治療なし、平均follow 4-5年)がシステマティックレビューの中から見つかり、BPLTTCのデータベースから8つのRCT(n=6361、平均年齢 64歳、糖尿病合併 96%、降圧薬治療 61%、平均BMI 29、平均follow up 4.4年)が組み入れられた。プラセボはn=14457人、少量降圧薬治療群 809人で、全てのデータは盲験化され評価された。

結果:

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(本文より引用)

 

結論:
 過去に心血管疾患の既往のない軽症高血圧患者では、降圧薬治療はプラセボと比較して、脳卒中と死亡率を減らす。

 あまりきちんと知られていないかもしれませんが、軽症高血圧(sBP 140-159/dBP 90-99mmHg)に対する薬物治療介入の効果はcotroversyな部分があります。そして何よりこの程度の高血圧の患者が最も多いこともポイントです。2012年にCochrneがまとめた軽症高血圧の治療効果の結果は、”死亡も心血管イベントも減らさない”という結構衝撃のものでした。ただ、このシステマティックレビューは4つの研究のものだけで、期間も1978-1991年、糖尿病患者は含まれず、薬剤はサイアザイド・β遮断薬・レセルピンである、など現状の降圧治療を反映しているとは言えない結果でした。

 そこで、今回Sundstromらは、BPLTTCデータベースから8つのRCTの結果もまとめて統合し、2007年までの結果を見たところ、統計学的に心血管イベントを減らす結果となっています。2012年のレビューと比較すると、血圧を3.6/2.4mmHg減らすことで、脳卒中・心血管死亡・全死亡を減らす事が判明しましたが、脳卒中に対するNNT 173(4-5年)であり、治療効果はかなり弱いことが判明しています。

 こうゆう結果をみると、過去に心血管疾患に罹患していない軽症高血圧の方の血圧コントロールには優しくなれそうです。

 

軽症高血圧―最新知見からのアプローチ

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