栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 急性腰痛ヘルニアへのステロイド/心房細動患者での脳梗塞予防/非AD認知症でのアミロイド陽性率/腹腔内感染症ソースコントロール後抗菌薬投与期間/神経サルコイドーシス

■JAMA■

急性腰椎ヘルニアへのステロイド 
Oral steroids for acute radiculopathy due to a herniated lumbar disk*1

 急性腰椎ヘルニアは生涯罹患率10%とも言われるcommon diseaseで、多くの患者では自然軽快します。ただ、回復までに多少時間がかかるため、回復を早める対応が何かないだろうか?と検証する取組があり、硬膜外ステロイド注射か椎間板除去術が行われています。今回は、その中で経口ステロイドの効果があるのかを検証したRCTです。
 論文のPICOは、

P:発症3ヶ月以内の腰椎ヘルニア 269人
  18-70歳、Oswestry Disability Index(ODI)≧30点、MRIで診断確定
  除外項目:筋力低下症例(高度・進行)、腰部注射・手術、糖尿病
I:ステロイド内服群(PSL 60mg 5日→40mg 5日→20mg 5日)合計15日
C:プラセボ
O:3週間後のODI
T:RCT
結果:
 平均46歳、ODI 51点、発症平均30日程度
 プレドニン群 -19.0、プラセボ群 -13.3で、両群の差は-6.4点(-10.9 to -1.9)と有意にODI改善した。
 疼痛スコアは、プレドニン群で3週後に0.3点、52週後で0.6点と変化はわずか。

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(本文より引用)

 微妙なところです。ステロイド使用により、プライマリアウトカムであるODI有意に改善していますが、臨床的にどの程度意味があるのかは微妙なところですね。疼痛スコアも改善せず。ステロイド関連の有害事象は無かった様ですが、自然に軽快するなら待つかなあ。

✓ 腰椎ヘルニアに対する内服ステロイドは機能障害スコアを改善する


心房細動患者での脳梗塞予防 
Stroke prevention in atrial fibrillation*2

 心房細動患者での脳梗塞予防に関するレビューです。ざっくりまとめます。興味のある人は是非本文をお読み下さいませ。
■Intro■
 心房細動があると脳梗塞リスクは無い人の5倍程度と言われている。80歳代の脳梗塞の20.2%、50歳代の脳梗塞の4.6%に心房細動が関与していると言われている。心房細動関連脳卒中は、非関連と比べて入院期間が長く、死亡率も高く、機能予後が悪い。これは重症化しやすいということ。心房細動による脳卒中は、ワーファリンやNOACでリスクを減らせることは周知の事実。今回は脳梗塞予防の観点からレビューされている。
 
■Search strategy■
 2015年3月までにMEDLINEで発表された、心房細動・脳卒中リスクなどのキーワードで検索された論文のシステマティックレビュー。

■Risk factors for stroke■
 心房細動の脳卒中リスク増加には複数の機序が判明している。
①左房内うっ滞
②僧帽弁狭窄症(血管壁異常)
③凝固異常
 最も脳卒中に関連しているリスク因子は、心不全・高血圧・糖尿病・年齢・脳梗塞既往と言われているが、これは20年以上前の観察研究由来であり、現在もこれらの病態が脳卒中リスクになっているか否かについては批判があり。
 Stroke in Af working Groupの研究では、心不全・女性はリスクになるかははっきりせず、TIA脳梗塞既往は RR 2.5、年齢 RR 1.5、高血圧 RR 2.0、糖尿病 RR 1.7と報告された。

■Risk stratification schemes■
 よく使用されているのは、CHADS2 scoreCHADS2-vasc score。ただし、どちらもhigh risk予測はいまひとつ。
 CHADS2-vascはlow risk同定に良い
 ガイドラインの多くはlow riskを同定するのに使用するように推奨。
 元々の由来を知っておくことは重要で、CHADS2はもともと入院患者によるAf registryのスコアで3点以上をhigh riskとしていた。
 CHADS2-vascはEuro Heart Survey Cohortが大元。Cの心不全はEFに関係なく心不全全般を含み、米国・欧州・NICEガイドラインで推奨されている
 他にもATRIA(Anticoagulation and Risk Factors in Atrial Fibrillation) stroke scoreやCHA2DS2-vasc score(微妙に違います)、Qstroke scoreなどがありますが、Validation不十分
 今後の課題はhigh risk患者の同定方法で、現時点で今一つで良いbiomarkerはないか検討されている

■Risk factors for bleeding■
 様々なスコアがあるが、妥当性まで評価されているのは、①HASBLED、②HEMORR2AGES、③ATRIA
 この中で最も評価され、NOAC・アスピリン・無治療でも評価されているのはHASBLED(HASBLEDは抗血小板薬の出血リスクも検討されているンですね)
 ただし、HASBLED high scoreを抗凝固しない理由にすべきでは無く、むしろ他の出血リスクのコントロールを積極的にしましょうと。なるほど。(START criteriaにも含まれていますしね)
 丁寧なモニタリング、転倒予防、Polypharmacyへの介入、血圧管理など。
 転倒リスクが高いので・・・と抗凝固差し控えがあるが、過去の研究データからの算出によると、年295回以上転倒しないとrisk>benefitにならない
 今後は出血リスクも組み込んだスコアが必要だが、現時点では別々に評価を。

■Net clinical benefit of oral anticoagulants■
 抗凝固薬にはVKA(ビタミンK拮抗薬:ワーファリンⓇ)、non-VKA(トロンビン阻害・Xa阻害)がある。
 Af患者でVKA使用するとStroke・全身性塞栓が64%減る
 NNTに換算すると、Stroke既往ありで12/年、Stroke既往なしで37/年
 死亡に対する効果もNNT 62/年
 残念ながら、アスピリンはAf関連strokeに対する予防効果はメタ解析の結果no benefit
 原則INRは2-3(よく1.6-2.6が多用されていますが、あれは高齢者のサブ解析結果が基で十分検証されていない)
 NOACについては、最近計42000人のメタ解析が出て、stroke・全身性塞栓を19%減少させ、死亡は10%低下、消化管出血は25%増加させた
 NOACは4種類あるが、患者によって使い分けるべし。
 効果をhead to headで検証したRCTはなく、今後の検証待ち。
 SAMe-TT2R2scooreというスコアによってワーファリン第一選択でいくかNOACでいくかを分ける方法がある様です。これはPT>65-70%を達成できるかを予測するスコアでESCでもこの方法を勧めている

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(本文より引用)

■Guidelines for AF treatment■
 2006年のAHA/ESCのガイドラインではhigh risk→VKA、moderate risk→VKA・アスピリンとしたがうまくいかず。
 更にはhigh risk群の50%にしか抗凝固薬が開始されなかった
 2012年のESCガイドラインでは、low risk患者の同定に重きを置いており、一つでもリスクがあれば抗凝固。
 抗凝固拒否ならDAPT(no evidence)、出血リスクにはHASBLED推奨
 2014年のCCSガイドラインでは、①65歳以上か?、②65歳未満であればCHADS2、③65歳未満かつCHADS2 0点で他のリスクはないか?で決定する方法。ただしこのやり方ではESCの方法と比較して脳梗塞発症が増えてしまったと。

■Specific considerations■
 ①CKD:
  AfにCKDを合併していると、心筋梗塞脳卒中・出血リスクが増大する
  Af患者の20%は2年で腎機能悪化
  多くの研究ではCKD患者が除外されている
 ACS
  ACSPCI+Afについて、2014年ガイドラインでは、初期に抗凝固+DAPT→1年経過以降は抗凝固のみ。
 ③左心耳閉塞:
  多くの血栓は左心耳由来。
  PROTECT Af trialでは、デバイスによる左心耳閉鎖は安全性・効果はVKAに非劣性。
  PREVAIL trialでは、脳卒中リスクはVKAに劣らず
  現時点ではstroke high riskで抗凝固療法が禁忌の患者に適応

✓ 心房細動と脳梗塞の関連について整理しておく


非AD認知症でのアミロイド陽性率 
Prevalence of amyloid PET positivity in dementia syndromes*3

 アミロイド沈着がPETでも分かるようになってきている模様ですが、現時点でその診断における価値は明らかになっていません。PETを用いてアミロイド沈着を評価した29件のstudyで個人レベルデータを集めてアミロイド陽性率と認知症のサブタイプの関係を調べています。多くの研究は観察研究でした。
 論文のPECOは、

P:PETでアミロイド沈着を評価した認知症患者
  内訳は、Alzheimer型認知症 1359人、FTD 288人、脳血管性認知症 138人、DLB 51人、基底核変性症 61人
E/C:年齢/APOE蛋白/教育レベル
O:PETでのアミロイド陽性率
T:メタ解析/システマティックレビュー
結果:
 疾患毎のアミロイド陽性率は、Alzheimer型認知症で88%
 APOE蛋白陽性だと95%、陰性だと77%という結果。
 FTDでは12%、血管性認知症 30%、DLB 51%、基底核変性症 38%、コントロール 24% 

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(本文より引用)


 確かに、Alzheimer型認知症ではアミロイド沈着頻度が高いのは良く分かりましたが、それでも12%は陰性であり、高齢者では更に陽性率が低下していきます。PETによるアミロイド沈着の評価は比較的精度は良いですが、APOE蛋白陰性者では注意が必要です。あとはやはりアミロイド沈着しないような介入と、それによる認知症発症予防効果を調べていかなくてはいけないですね。

✓ Alzheimer型認知症では、PETによるアミロイド沈着陽性率は88%前後

 



■NEJM■

腹腔内感染症ソースコントロール後抗菌薬投与期間 
Trial of short-course antimicrobial therapy for intraabdominal infection*4

 IDSAはソースコントロール後の腹腔内感染症に対する抗菌薬使用期間を4-7日程度で設定しています。ところが、実臨床では、ソースコントロール後平均で10-14日程度抗菌薬が継続されています。もっと長いかも知れませんが・・・そこで、今回、腹腔内感染症でソースコントロールが出来た後の抗菌薬治療期間についてのRCTが掲載されていました。
 論文のPICOは、

P:腹腔内感染症患者518人が対象
  ①38℃以上、②WBC≧11000、③食事摂取量<50%の3項目の内一つ以上を満たす16歳以上が対象
  全例ソースコントロールは出来ている
I:ソースコントロール後 4日間抗菌薬
C:症状改善後2日まで抗菌薬(最大10日) 改善の定義は、①<38.0℃、②WBC<11000、③食事>50%
O:30日後のcomposite outcome(SSI・死亡・腹腔内感染再発)
T:RCT/23施設
結果:
 遵守率 介入群81%、対照群 72%
 平均 52歳、APACHE score 10点、大腸疾患 33%・虫垂13%、経皮ドレナージ 33%・切除 20%
 プライマリアウトカムは、介入群 58/260(22.3%)と対照群 56/257(21.8%)で有意差なし
 実際の抗菌薬使用期間は介入群4日、対照群 8日だった。

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(本文より引用)

 実は結構ICT泣かせの領域の問題なので、勉強になりました。やっぱりそんなにダラダラいらないよなあ・・・という印象。使用抗菌薬は、TAZ/PIPCが最多で55%、次にメトロニダゾール・シプロフロキサシン・バンコマイシンと続きます・・・広域だなあ。まあ、まずはソースコントロールが重要です。

 研究の限界としては、アドヒアランスの問題。だいたい80%程度です。で、中間解析で終わってしまった部分でしょうか。あとは抗菌薬副作用やソースコントロール後の入院日数などの評価が不十分でした。まあ、逆に20%前後はSSI・死亡・腹腔内感染再発しているため、これらへの介入をどうしていくかも課題です。

✓ 腹腔内感染症に対してソースコントロール後に投与する抗菌薬は4日で80%程度の治療効果


神経サルコイドーシス 
Hemichoreoathetosis in neurosarcoidosis*5

 これはまたレアなものを・・・NEJM のImages in clinical medicineです
 39歳黒人男性が、2週間前から徐々に悪化し、突然発症する左手の不随意運動を主訴に来院。既往歴には、高血圧とコントロール不良の糖尿病があったが、現在はコントロールされている。身体所見では、左上肢のChoreaと指のアテトーシスを認めた(ビデオ付き)。入院後施行された頭部造影MRI T1では、両側前頭葉と基底核付近、左軟膜神経節に高信号域を認めた。追加権さでは、上眼瞼付近に青紫色の丘疹があり、生検を施行したところ、類上皮組織球サルコイドーシスの所見だった。

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(本文より引用)

 本患者における神経症状はサルコイドーシス患者での典型例ではない。Choreaもアテトーシスも神経サルコイドーシスとしては稀な症状であり、大脳基底核が関連している可能性がある。鑑別診断として、浸潤性リンパ腫、脳腫瘍、非定型脳炎、脳血管障害などが挙げられる。その後、グルココルチコイド・MTX投与が開始され、6ヶ月後には諸症状は改善していた。その後はMTXによる維持療法を行い、MRIでも病変は改善している。
 まあ、かなり稀でした。hemichoreaっていうと糖尿病を思い出してしまいますが、色々鑑別はありそうですね。

✓ 神経サルコイドーシス病変によるhemichoreaがある