栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

ACPJC:鉄剤静注薬は他の剤形と比較して重篤な合併症を増やさない

ACPJCピックアップ。今回はネタ不足。
前から言われている鉄剤内服vs静注です。

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The safety of intravenous iron preparations: systematic review and meta-analysis.

Avni T, Bieber A, Grossman A, et al. 
Mayo Clin Proc. 2015;90:12-23.

臨床上の疑問:
鉄剤静注薬は他の剤形と比較して安全か?

方法:
 
組み入れ基準:鉄剤静注 vs 鉄剤なし・プラセボ・経口鉄剤・鉄剤筋注・その他の治療と副作用について報告された研究が対象。
 ②除外基準:静注製剤同士や容量・投与スケジュールの比較研究は除外
 ③アウトカム:重篤な薬剤有害事象
(SAEs=Common Terminology Criteria for Adverse Events grades 3 to 5)

 感染心血管イベント・神経症状・呼吸器症状・消化器症状・血栓塞栓症・重篤な反応
 セカンダリーで全ての薬剤有害事象・全死亡も調査
 ④検索方法:MEDLINE、LILACS、KOREAMED、NLM gateway、Cochrane Library、American Society of Hematology、European Haematology Association、American Society of Nephrology、European Renal Association、European Dialysis and Transplant Association、American Heart Association の議事録、Clinical Trial databaseから過去のRCTのシステマティックレビューが検索された。
 ⑤検索結果:103のRCT(n=19253人、平均follow 8週間)が 組み入れられた。静注 vs 鉄剤無し(14RCT)、vs プラセボ(20RCT)、vs 経口鉄剤(56RCT)、vs 筋注鉄剤(4RCT)、vs その他(9RCT)という結果だった。鉄剤のタイプは様々。ランダム割り付けは61研究で適切、盲験化が適切だったのは52研究で、二重盲検は20研究だった。

結果:

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(本文より引用)

 静注鉄剤投与は他の剤形・治療と比較して重篤な有害事象と通常の有害事象は変わらなかった。たた、点滴時の反応(infusion reaction)のみが有意に多かった。

結論:
 静注鉄剤は重篤な有害事象を増やさないが、点滴反応(infusion reaction)のみ増やす可能性がある。

 静注鉄剤の安全性に問題ないことは、使用頻度が高い、血液内科・腫瘍内科・腎臓内科では周知されているが、プライマリケア領域などでは、副作用などから使用が制限されているという事実がある模様です。

 今回のレビューの限界として、今回のstudyに組み入れられた鉄欠乏症患者のバリエーションが広く、産婦人科的適応の患者や慢性腎不全、化学療法後の貧血、むずむず脚症候群の患者も含まれているというところでしょうか。また、実際の治療レジメンもかなり幅が広い為、一概に同じ土俵で比較して良いかが迷うところです。

 ただ、実際には研究データのheterogenesityは非常に少なかった事が驚くべき事でした。ただ、一般的には、内服でも静注でも治療効果はほとんど差がないことも知られており、敢えて第一選択から静注で行く必要はないかも知れません。

鉄欠乏性貧血―鉄の基礎と臨床

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