栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:ジソピラミドによる抗コリン作用/Bickerstaff型脳幹脳炎/AG非開大性アシドーシス

今日はEBM Tokyo WSで都内出張です。
そろそろ週末出張の一息つきたいところですが・・・

ジソピラミドによる抗コリン作用 Anti-colinergic effect of disopyramid

 抗コリン作用を持つ薬剤は多数知られており、高齢者に使用する場合にはその副作用に十分注意する必要があります。そして意外な薬に抗コリン作用がある事もありますよね。一応ざっくりリストをUptodateから抜粋してみます。

抗コリン作用を来す薬剤リスト:
薬剤種類 例:
ヒスタミン Chlorpheniramine, Cyproheptadine, Doxylamine, Hydroxyzine, Diphenhydramine, Meclizine, Promethazine
抗精神病薬 Chlorpromazine, Clozapine, Mesoridazine, Olanzapine, Quetiapine, Thioridazine
三環系抗うつ薬 Amitriptyline, Amoxapine, Clomipramine, Desipramine, Doxepin, Imipramine, Nortriptyline
抗パーキンソン薬 Trihexyphenidyl, Benztropine
眼科薬 Atropine, Cyclopentolate
鎮痙薬 Clidinium, Dicyclomine, Hyoscyamine, Oxybutynin, Propantheline
植物 Jimson Weed (Datura stramonium), Deady Nightshade (Atropa belladonna), Henbane (Hyoscyamus niger)

(Uptodateより改訳)
 今回はそれ以外にピットフォールになりそうな薬剤を経験したのでご紹介します。
 
 薬剤は、リスモダンⓇ(ジソピラミド)です。Ⅰa群の抗不整脈薬として知られており、通常は長期使用はしない薬剤ですが、開業医の先生方から心房細動などに長期処方されている様子が散見されます。
 添付文書を確認すると、

”本剤には抗コリン作用があり、その作用に基づくと思われる排尿障害、口渇、複視等があらわれることがあるので、このような場合には減量又は投与を中止すること。”


と記載がありますが、この手の排尿障害等は完全に無視され、泌尿器科でコリン作動薬が処方され・・・というPrescribing cascadeをたどりますので要注意。心臓屋さんの間では有名なんだそうで。

 ✓ ジソピラミドの抗コリン作用に注意。何かしらの症状が出現した際に一度は薬剤性を考えてみよう。

 

 

Bickerstaff型脳幹脳炎 Bickerstaff brainstem encephalitis

 名前は知っていても実際に診断するのは難しいですね。Bickerstaff型脳幹脳炎は、1951年にBickerstaffとCloarkによって「意識障害、外眼筋麻痺、運動失調を中核症状とする中枢神経疾患」として報告されています。類縁疾患として、GBSの亜型と言われるFisher症候群があり、こちらは「外眼筋麻痺、運動失調、腱反射消失を三徴とする疾患」と報告されています。
 
 実は、この2疾患の異同については、かなり議論があった模様で、1990年代にはどちらもGQ1b抗体陽性となり、共通の病態が存在するのではないか?と言われています。Bickerstaff型脳炎は中枢神経疾患、Fisher症候群は末梢神経疾患というのが当初の位置づけでしたが、今では、「Bickerstaff型脳幹脳炎は、中枢神経障害を合併したFisher症候群の亜型」と捉えられています。

 画像診断全盛の現在ですが、これらの疾患は原則画像診断(CT・MRI)では異常が検出されません。丁寧な診察による異常所見の抽出が重要になります。今回も当初、片麻痺?という話になりましたが、意識障害と失調による所見でした。skew deviation、眼振・体幹失調、意識障害。実際目の当たりにすると結構怖いことです・・・
 研修医時代からこの本にはお世話になりました。

神経内科ハンドブック 第4版―鑑別診療と治療

神経内科ハンドブック 第4版―鑑別診療と治療

 

 ✓ Bickerstaff型脳幹脳炎とFisher症候群は類縁疾患、眼球運動障害と失調を見たら疑え!

 

AG非開大性アシドーシス Normal anion gap metabolic acidosis

 日常的にAG開大性代謝性アシドーシスはよく見るわけですが、非開大性ってそんなにみる機会がないなあと感じました。

 教科書的な病態としては、

①消化管からのHCO3-排泄過剰
 下痢・膵胆管ドレナージ・消化管ドレナージ・コレスチラミン投与・回腸/結腸漏・回腸導管等
②腎からのHCO3-排泄過剰
 尿細管性アシドーシス(Ⅰ型・Ⅱ型・Ⅳ型)・Fanconi症候群・副甲状腺機能亢進症・炭酸脱水素酵素阻害薬・カリウム保持性利尿薬・ST合剤
③その他の機序
 ケトアシドーシスからの回復期・大量輸液(希釈性アシドーシス)・アミノ酸製剤投与・トルエン中毒

が言われています。すぐに気付けて補正できるとすれば薬剤でしょうかねえ。SBOで胃管から大量排液後などでは気付く必要があるかもしれませんね。

✓ AG非開大性代謝性アシドーシスの鑑別をおさらい