栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

ACPJC:スタチンは認知機能に影響しない

ACPJCピックアップ。
スタチンはたくさんあちこちで使用されている分やり玉に挙がりやすいですね。とはいっても、Statinizaitonには断固反対ですが!

f:id:tyabu7973:20150609121410j:plain

Do statins impair cognition? A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.

Ott BR, Daiello LA, Dahabreh IJ, et al.

J Gen Intern Med. 2015;30:348-58.

臨床上の疑問:
スタチンは認知機能低下をもたらすか?認知症がある人無い人それぞれの比較。

方法:
 
組み入れ基準:スタチンとプラセボ・治療無し・通常治療を比較した研究で、米国・欧州の10人以上の研究。スタチンの種類は、アトルバスタチン・ロバスタチン・プラバスタチン・ロスバスタチン・シンバスタチン
 ②アウトカム:認知機能(様々な評価方法)
 ③検索方法:MEDLINE、EMBASE/Excerpta Medica、CENTRAL、3 Cochrane reviewsから過去のRCTが検索された。
 ⑤検索結果:英語言語、25のプラセボRCT(8つがプラバスタチン、8つがシンバスタチン、6つがアトルバスタチン、6つがロバスタチン、3ロスバスタチン)、18の RCTs(n=45564人、18-86歳)の研究でベースラインの認知機能障害が無い患者で、12研究は生来健康な患者対象。
 4研究(n=1153、平 均68-78歳)がAlzheimer型認知症を対象とした研究で、3研究(n=119、平均年齢8-50歳)は他の認知機能障害患者での研究だった。適切な割り付けがされたのが9研究、23研究で二重盲検、21研究がfollow up率80%以上だった。

結果:

f:id:tyabu7973:20150609121423j:plain

(本文より引用)

 ベースに認知機能障害がない患者では、スタチンとプラセボでは認知機能スコア・認知症・混乱・認知機能障害・認知症関連有害事象に差を認めなかった
 Alzheimer型認知症患者でも、スタチンとプラセボでは認知機能スコアに差を認めなかった

結論:
 認知機能障害の有無にかかわらず、スタチンは認知機能低下を来さなかった。

 スタチンが心血管死亡を減らすことは周知の事実であり、元々は動脈硬化リスクを軽減して認知症リスクも減らすと考えられていました。ところが、近年スタチン由来の認知機能低下が指摘されるようになり、スタチンの認知機能に与える影響が注目されるようになりました。FDAもいくつかのスタチンに認知機能低下に関する注意事項を記載しています。

 難しいのは、認知機能障害の評価は従来のもので良いのか?という点です。例えば、比較的若年でスタチンを使用する患者さんの間で、特に知的労働者では、通常できるタスクが出来なくなったとパフォーマンスの低下を訴えることがありますが、これは通常の認知機能障害の検査では検出することが出来ません。この様な訴えを無視することが出来るでしょうか?

 この様な訴えを解決する為にNaranjo scaleなどが開発されています。また、最も良いのはBlinded N of 1 trialを行う事です。まあ自身でのtrialになりますが、様々な副作用の再現性を確認するのに役立ちます。 

治療をためらうあなたは 案外正しい

治療をためらうあなたは 案外正しい