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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:一過性収縮性心膜炎の管理/大腸癌切除後のサーベイランス/偶発性副腎腫の管理

MKSAPです。
ようやくJPCAですね。
楽しみですが、6月はまだまだやること山積みでございます・・・

一過性収縮性心膜炎の管理  Manage resolving transient constrictive pericarditis

❶症例 
 64歳女性が、収縮性心膜炎で外来通院中。彼女は3ヶ月前に急性特発性心膜炎と診断された。4週間のイブプロフェン内服で治療され、胸痛は改善した。その6週間後、1週間前からの労作時呼吸困難が出現した。症状の程度はNYHA Ⅰ-Ⅲ。心エコーででは、軽度の心嚢液貯留があり、充満制限(restrictive filling)や心室相互作用(Ventricular interdependence)の所見を認めた。イブプロフェンが再開され、コルヒチンも追加された。2週間後の時点でNYHA classⅡまで改善した。胸部への放射線治療既往はなく、膠原病や腎不全、悪性腫瘍結核の既往は無い。内服薬はイブプロフェンとコルヒチン。
 身体所見では、耐温性状で、BP 120/70mmHg、Pulse 85bpm、RR 14/min。下腿浮腫無く、軽度の肝頸静脈反射、頚静脈怒張なし。肺野は異常なく、心雑音も認めなかった。
 検査所見では、RF 15U/ml、TSH 2μU/ml、抗核抗体は陰性だった。
 この患者の最も適切な管理はどれか?

 ❷一過性収縮性心膜炎
 本患者の臨床像は、一過性収縮性心膜炎で改善傾向であり、抗炎症薬によって症状は安定化しつつある。治療によって彼女の機能耐用性は改善し、心エコーでの収縮所見も改善した。この経過は一過性収縮性心膜炎の経過として矛盾しない。
 心膜繊維化、心外膜石灰化、抵抗性心不全などを来す典型的な収縮性心膜炎と異なり、一過性収縮性心膜炎は外科的手術無しで自然に改善する。この疾患概念は、膠原病感染症結核含む)、化学療法、外傷、心膜切開術、悪性腫瘍などが原因になることが知られている。

❸その他
心内膜心筋生検:心内膜生検は、拘束型心筋症と収縮性心膜炎を区別する為に有用。心室相互作用(ventricular independence)や充満制限(restrictive filling)の所見は、収縮性心膜炎を診断する有用な所見である。心膜心筋生検は多くの場合無用である。
心臓血管カテーテル検査:こちらも同様に拘束型心筋症を鑑別する為に有用。

心膜切除術:NYHA Ⅱ-Ⅲの心不全を呈している進行性の収縮性心膜炎に適応となる。改善傾向の一過性の収縮性心膜炎では適応にならない。

Key Point
✓ 一過性収縮性心膜炎は抗炎症薬で保存的に治療可能である。

Haley JH, Tajik AJ, Danielson GK, Schaff HV, Mulvagh SL, Oh JK. Transient constrictive pericarditis: causes and natural history. J Am Coll Cardiol. 2004;43(2):271-275. PMID: 14736448

 

 

大腸癌切除後のサーベイランス Manage post-colorectal cancer surveilance

❶症例
  71歳女性が最近の大腸内視鏡検査で上行結腸の大腸癌と診断された。腹部CTでは、腹部・骨盤部に明らかな転移所見を認めず。結腸右半切除術が施行された。病理検査結果ではStageⅡだった。追加の化学療法は推奨されず、患者も健康だった。
 この患者で最も適切なサーベイランスはどれか?

 ❷大腸癌切除後のサーベイランス
  最も適切なサーベイランス戦略は1年後の大腸内視鏡検査である。大腸癌既往患者では、癌の再発、異時性発症の両方のリスクが高い。コンセンサスガイドラインでは、Stage Ⅰ-Ⅳの結腸直腸癌患者の切除後の大腸内視鏡サーベイランスの適切な期間を明確に定義している。
 可能であれば、周術期前には他の関連病変を同定する為に、内視鏡±画像検査を行うべきである。大腸癌患者では2-7%に病変を認めることがある。引き続いて、切除後のサーベイランス大腸内視鏡検査は1年で推奨されている。

 ❸その他は?
 術前に原発巣が閉塞性で、術前に全結腸評価が困難な場合には、術後の全結腸検査が望まれる。これは関連病変の同定のためであり、大腸内視鏡検査は術後3-6ヶ月で行うべきで、その後1年後にサーベイランスを行う。1年後のサーベイランスが異常なかった場合に、それ以降のサーベイランス間隔は延長可能である。

Key Point
✓ 大腸・直腸癌で治癒的治療後の患者では、外科的手術前に大腸内視鏡検査を確認し、切除1年後に内視鏡サーベイランスを行うべき。

Rex DK, Kahi CJ, Levin B, et al. Guidelines for colonoscopy surveillance after cancer resection: a consensus update by the American Cancer Society and US Multi-Society Task Force on Colorectal Cancer. CA Cancer J Clin. 2006;56(3):160-167. PMID: 16737948

 

偶発性副腎腫の管理 Manage an adrenal incidentaloma

❶症例

 61歳男性が、右上腹部痛を主訴に来院し、CTを撮像したところ、7cmの右副腎腫瘍を認めた。体重変化や食欲は変化なく、高血圧・動悸・頭痛・発汗過多なし。内服薬剤なし。
 身体所見では、体温 36.7度、BP 122/76mmHg、Pulse 74bpm 整、RR 16/min、BMI 29だった。多血症・筋力疲労・脱力感・斑状出血なし。
  検査所見では、血清電解質・コルチゾール・ACTH値・24時間尿中メタネフリンは正常だった。デキサメタゾン抑制試験も正常。
 過去のCTで7cmの副腎腫瘍が認められ、腫瘍のCT値は77Hounsfield unitsで左副腎腺腫は正常だった。腹腔内にリンパ節腫脹や他の腫瘍は認められなかった。

 最も適切な治療はどれか?

 ❷偶発性副腎腫
 本患者は、右副腎摘出を受けるべきである。画像検査が普及するにつれ、過去には認識されなかった無症候性の副腎腫瘍(偶発性副腎腫)が認識されるようになり、50歳以上の2-3%、70歳以上の7%に認められると言われている。
 若い世代の副腎腫は臨床的により重要となる。副腎腫の評価は、原発巣か転移巣の確認である。原発腫瘍の評価の為には、機能性か否かを決定することが重要である。およそ10%の偶発性副腎腫は機能性だが、ほとんどは明らかな臨床症状を来していない。
 本患者では偶発腫があるが、臨床的にも生化学的にも過剰な副腎ホルモンやカテコラミン分泌は認められない。腫瘍のサイズは7cmでCT値が77HUであり、悪性が示唆される。4cm以下の腫瘍では悪性腫瘍の割合は2%、6cm以上では25%と言われている。6cm以上の腫瘍では、切除が最も適切な方法である。

 ❸他の方法
 腫瘍生検副腎腫瘍の生検は、検査前確率が高く悪性を示唆する腫瘍の場合には、偽陰性の可能性が高く、外科的切除が必要になる。
 レニン・アルドステロン高血圧や低カリウム血症、臨床的に高コルチゾール血症を疑う所見が無い場合に、原発性アルドステロン症やCushing症候群の可能性は低い。この場合にはレニン・アルドステロン比や24時間尿中コルチゾール値を測定することは有用ではない。

Key Point
✓ 6cm以上の偶発性副腎腺腫で、CT値が高い場合には、悪性の可能性が高く、外科的切除が最も適切な管理方法である。

Nieman LK. Approach to the patient with an adrenal incidentaloma. J Clin Endocrinol Metab. 2010;95(9):4106-4113. PMID: 20823463

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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