栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:真菌性副鼻腔炎/髄膜炎の髄液follow up/攻めるのか攻めぬのか

カンファは段々良い雰囲気になってきました。
良い雰囲気のカンファが良いカンファかは分かりませんが・・・
私の役割は呆けっぱなしか。

真菌性副鼻腔炎 Fungal rhinosinusitis

 真菌性副鼻腔炎は、単なる現局性感染から急速に進行する致死的疾患まで幅広い疾患概念です。真菌の胞子は常に副鼻腔や肺に吸入されているので、上下気道にコロニー形成をすることは一般的な状態です。感染と定着を区別する必要があります。
 
 侵襲性真菌性副鼻腔炎は、急性または慢性に分類されます。急性の侵襲性真菌性副鼻腔炎は、免疫抑制状態にある患者に多く、数日から数週間の経過で血管の菌糸浸潤によって組織梗塞を来すと言われています。一方、慢性の侵襲性真菌性副鼻腔炎では免疫抑制状態の患者は少なく、12週間以上の長期間にわたって緩徐に進行し組織破壊を起こすのだそうです。

 侵襲性真菌性副鼻腔炎の原因微生物には、AspergillusFusarium、Mucorales、dematiaceous moldsが知られています。症状としては、通常発熱、顔面痛、鼻汁、鼻出血を有し、視力低下や精神機能の変化を来すこともあります。また、顔面のしびれや複視は脳神経合併による症状として認められることがあります。

 CT画像検査では、骨のびらんや海綿静脈洞、頸動脈への進展を来す事があるが、真菌感染を示唆するのに十分な感度・特異度を持った画像所見はありません。MRIは脳神経や海綿静脈洞への浸潤を評価する為には有用かも知れません。


 診断には、最終的に副鼻腔の組織病理学的検査が必要で、鼻腔内視鏡検査が有用です。生検検体の培養は通常陽性になることが多く、治療の為には培養検査が必須になります。Aspergillusとmucormycosisを区別する必要があります。

 

 ✓ 免疫不全患者では、侵襲性真菌性副鼻腔炎に注意が必要

 

 

髄膜炎の髄液検査follow up Follow up of spinal fluid analysis

 髄膜炎が流行っていますが、髄液検査を繰り返すか否かの話題が出ていました。初期の段階で明確に細菌性か無菌性かを区別することは意外に難しく、悩ましい結果になることがあります。特に先行抗菌薬が入っていたりすると益々悩ましい結果です。
 
 Uptodateをサラッと見てみると、初期に区別が付かなければひとまず各種培養採取しつつempiricalな抗菌薬投与開始という方法と、一旦経過観察しつつ6-24時間以内に髄液検査再検という方法がある様です。培養が陰性であれば基本的には細菌性は否定的と考え、抗菌薬は中止可能ですが、もし症状が持続する場合には、髄液検査を再検せよとのコメントでした。

 一方、細菌性髄膜炎の治療経過で髄液検査をfollow upするか否か?という話題。実は日本の細菌性髄膜炎ガイドラインでは再検するように書いてあります。Uptodateには、165人の細菌性髄膜炎患者の治療前後の髄液検査の有用性を検証した観察研究がありました。残念ながら髄液検査では2人の患者の再発を予測できず、13人では検査不要だったとの判断になっています。筆者らは最終的に髄液検査の再検よりも臨床症状の方が重要だったと結論しています。

 上記の研究も受けて、それでも繰り返す必要がある状況を以下に示されています。

・適切な治療開始後48時間以内に明らかな改善の徴候がない
・通常抗菌薬耐性(PRSP)の髄膜炎に対する初期治療+デキサメタゾン投与開始2-3日後に、治療効果が期待できない
・他の誘因なく8日以上発熱が持続している

 Clin Infect Dis. 2004;39(9):1267.

 まあ、それはそうだよね、という結果。なんかfollow upする様に教わった気もしますが、原則は不要と考えて良さそうですね。

 ✓ 基本的には髄液検査のfollow upは不要だが、再検査を行うべき状況も押さえておく

 

攻めるのか攻めぬのか To try or not to try

 ちょっと誤解を恐れずに書きますね。上手く書けるかどうか・・・例えばですね、肺炎球菌性肺炎を診断したとします。超典型的。病歴も急性で胸膜痛を伴っていて、大葉性肺炎。喀痰でもグラム陽性双球菌が見えて、尿中肺炎球菌抗原陽性。当院のLocal antibiogramでは、新CLSI基準で言うとほぼ100%がPSSPです。

 で、治療どうするか?という段階で皆様はどうしますか?「PCGで行きます!」というのは攻めの姿勢。「CTXで行きます」というのは攻めずの姿勢。どちらが間違いということは無い訳です。ガイドラインにもどちらも併記されています(LVFXもMEPMも書いてありますが・・・)。

 もちろん、患者さん個々の状況によるので、一概には言えないのですが、個人的には攻めの姿勢があっても良いと思うわけです。肺炎球菌性肺炎をPCGで治療したことがない研修医には是非その切れ味を味わって欲しい!あれだけ頑張って病歴取って、身体所見診て、グラム染色して・・・というプロセスで最終的に使う抗菌薬一緒って寂しい気がしませんか?

 一方で、攻めの姿勢でガシガシ行っている研修医を診るときには、「攻めずの姿勢もあるよ〜」と話すこともあるわけです。まるで矛盾する様ですが、同じエビデンスを元にしても、最終的な行動は患者さん一人一人や周囲の状況によって異なることを知って欲しいという気持ちです。ま、個人的には結構攻めなのですが・・・

 これってPlayerとManagerによって違うかなあと思います。基本的には、「do no harm」の原則は大事にして欲しいと思います。抗菌薬を例に取りましたが、「画像検査をするか否か」、「内服に切り替えるか否か」、「治療をやめるか継続するか」など多くの現場でスタンスの違いが出てきます。もちろん、そのスタンスの基礎になるのはきちんとした知識・エビデンス丁寧な問診・身体所見患者さんとのコミュニケーションスキルになりますよね。

✓ 攻めの姿勢と攻めずの姿勢を使い分ける