栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet 修正ITT解析後のアウトカムへの影響/重症患者のせん妄と死亡リスク/アモキシシリンの結晶化/精神的要因/edoxaban血中濃度と出血や塞栓予防効果 ENGAGE AF-TIMI48研究

BMJ

修正ITT解析のアウトカムへの影響 
Derivation from intervention to treat analysis in randomised trials and treatment effect estimates: meta-epidemiological study*1

 先日も某WSで話題になっていた修正(modified)ITT解析。通常のITT解析に比べて近年mITT解析が増えています。本来はRCTの評価の為にはITT解析で行うべきであり、mITTをすることで実際のアウトカムにどの程度影響が出るかについては検証されていません。本当にアウトカム解析がmITTで良いのかが分からないわけです。そこで、今回2006-2010年のsystematic reviewのうちmITTのRCTを含むメタ解析を43個ランダムにピックアップして、通常のITT解析と比較しています。

 43個のメタ解析のうち310のRCTを検証したところ、84個がITT解析、118個がmITT解析、108個がITT解析なしに分類されました。そもそもmodified ITT解析のstudyでも118個のうちmodifiedと記載されているのは7件のみで、他は単なるITT解析とだけ記載されているのも問題です。

 結果ですが、mITTとITTを比較すると、OR 0.84(0.74-0.95)とITT解析よりも効果を大きく見積もることが示唆されました。また、mITT解析の研究と関連する要因として、企業からの資金提供がありました。これは要注意。要は不都合のある症例を解析から外してしまっている可能性があるわけです。

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(本文より引用)

 やはり、原則RCTはmodifiedではなく通常のITT解析を行うべきです。メタ解析時にはmITT群とITT群で感度分析を行う必要があるかも知れません。一つだけ注意は非劣性試験でこの場合は解釈は逆であり、プロトコールをきちんと遵守した症例での解析を行わないと効果を大きく見積もってしまう可能性があります。

✓ mITT解析は通常のITT解析よりも効果を大きく見積もってしまう。論文を読むときには注意が必要


重症患者のせん妄と死亡リスク 
Outcome of delirium in critically ill patients: systematic review and meat-analysis*2

 まあ、今更感もありますが、重症患者のせん妄と死亡の関係はconflictingな結果だったのだそうです。今回はその決着を付けるべくsystematic revirewが行われました。 
 今回検索対象は、Pubmed、Embase、CINAHL、Cochrane library、PsynchINFOで重症例、せん妄でを2015年1月まで検索し言語制約は設けなかった。結果として42個の研究(16595人:RCT2件、観察研究40)が検索された。アルコール離脱・脳卒中・頭部外傷、心臓血管外科手術症例は除外され、今回の大半の除外理由になっています。また、本文中にFunnel plotが掲載されていますが、偏りが認められPublication biasがありそうな印象でした。
 
 結果として、ICU患者の31.8%にせん妄が発症。プライマリアウトカムである院内死亡は、RR 2.19(1.78-2.70)とせん妄は有意に死亡を上昇させました。ただ、I2=72%と異質性もかなり認められており、もう少し質の高い研究が必要かもしれないと言う結論でした。また、ICU滞在日数や入院期間、人工呼吸装着時間も延長することも分かっています。

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(本文より引用)

✓ 重症患者のせん妄は院内死亡を2.2倍程度増やすかもしれない



■Lancet■

アモキシシリンの結晶化 
Macroscopic amoxicillin crystalluria*3

 これは知らなかったのでシェアしてみます。症例は62歳女性。GBSの感染性心内膜炎でAMPC静注薬高用量(200mg/kg/日)で治療開始されています。GMも併用。数日後に尿混濁と尿中結晶析出を認め、pH 5.5だった。検鏡するとこんな感じの結晶が見られたんだそうで・・・痛そうです。

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(本文より引用)
 
 アモキシシリン(AMPC)は、尿中に結晶化して析出されることが知られていますが、頻度は不明です。アモキシシリン結晶は多くの場合には高用量使用で見られ、pHは低く尿比重が高いと言われています。おそらく水分摂取不良によるかもしれない・・・AMPCの結晶はマクロでもミクロでも認められるのだそうで・・・マクロって嫌ですね。多くの場合は無症候の様ですが、時によっては血尿や急性腎障害、尿管閉塞の原因になる事もある模様。

 実際、AMPC 200mg/kg/日って50kgの人だと10g/日ですから、あり得ない数字では無いですよね。もちろん日本人はAMPC静注薬は存在しない為、同じ事がABPCでも起こるかは不明ですが、合併症の一つとして覚えておいても良いかもしれません。

✓ アモキシシリン高用量静注薬使用で尿中に結晶が析出されることがある


精神的要因 
The art of medicine First, do no harm*4

 Suzanne O'sullivan先生という英国の神経内科医のPerspectiveです。神経内科の先生なので、医者になって最初に経験した患者さんは痙攣患者だったのだそうで。痙攣の原因としてO'sullivan先生は、pseudoseizureを疑ったものの、最終的に主治医チームはepilepsyとしてICU入室し挿管・人工呼吸器管理となったんだそうです。
 
 その後20年間神経内科医として日々診療に従事する中で、多くの痙攣患者を診察してきた経験から、週に一人はnon-epileptic seizureがいるよ!とO'sullivan先生は書いています。そして、難治性epilepsyとして紹介されてくる70%の症例は最終的にはpsychogenicでepilepsyではなかったと言う経験もされています。多くの内科医は「内科疾患の除外 r/o=disease」という文化で育っていますが、「r/o disease≠ r/o disability」です。

 神経疾患に関わらず、関節痛の30%は原因不明、一般人口の20%にIBSがあるなど、私達は相対する症状の原因には非organicな症状が多く含まれています。そして多くの場合医師は「精神的なものです」と伝え、患者はそれを聞いて怒り出すという構図があるわけです。さらには、今回話題になったepilepsyの場合にはpsychogenicが疑われても最終的にはepilepsyを除外出来ないという理由からAEDが始まることも多いとされています。epilepsyの見逃しはエラーで、psychogenicの見逃しはエラーでは無いのでしょうか?場合によってはpsychogenic seizureの方が予後が悪く、見逃しは看過されないと思います。

 医師も患者も心因性という考えを恥ずかしがったり、ネガティブに捉えたりしていることが、原因の一つかも知れません。私達の疾患アプローチも修正していく必要があるのでしょうか。

✓ 心因性と呼ばれる疾患に対するアプローチ方法に変革が迫られている


edoxaban血中濃度と出血や塞栓予防効果 ENGAGE AF-TIMI48研究 
Association between edoxaban dose, concentration, anti-Factor Xa activity, and outcomes: an analysis of data from the randomised, double-blind ENGAGE AF-TIMI 48 trial*5

 なんかAKB的な名前のstudyが発表されていますが、中身は至って真面目なものです。新規の抗凝固薬NOAC(最近ではDOACともいうらしいですが)について、容量調節が不要と勧められていますが、果たして本当にそうなのだろうか?というのが今回の臨床上の疑問です。
 今回の論文のPICOは、

P:21歳以上の心房細動患者でCHADS2 2点以上
I/C:①Edoxaban 60mg+プラセボ、②Edoxaban 30mg+プラセボ、③VKA+プラセボ
O:脳卒中・全身性塞栓・死亡のcomposite outcome、②主要な出血
T:RCTのサブ解析
結果:
 過去のRCTのデータを元にしたサブ解析。
 半量に減量する基準は、CCr 30-50ml/minまたは体重60kg以下またはp糖蛋白阻害薬(ベラパミル等)
 減量患者5356人、非減量患者15749人で比較すると、虚血性脳卒中・出血・死亡率が減量群で高かった
 比較は高用量群・低容量群それぞれで行われており、
 血中濃度・Xa活性のトラフ値は半量にするとそれぞれ30%、23%低下します。

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(本文より引用)

  患者さんの条件において更なる減量をするとどうなるか?という研究ですね。なかなか解釈が難しいなというのが印象です。というのも減量全体でみると割合的には脳卒中も死亡も増えているからです。ワーファリンと比較した群では差が無いというのが今回の結果。うーむ、難しいな。
 結論としては、Edoxabanは有効治療域が狭いからリスクに合わせて容量調節した方が良いかもしれない・・・というところでしょうか。

✓ Edoxabanは出血リスクに合わせて容量調節をしてもアウトカムは変わらないかもしれない