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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 甲状腺機能亢進症での胸腺腫大/SSI予防にバンドルアプローチ/グリーフへの認知行動療法/麻疹症例/2型糖尿病への血糖厳密管理の長期予後

JAMA NEJM 論文 内分泌 呼吸器 感染対策 外科 精神 緩和 感染症 皮膚 循環器

■JAMA■

甲状腺機能亢進症での胸腺腫大 
Enlarged thymus in a patient with dyspnea and weight loss*1

 JAMAのClinical challengeです。症例は36歳の女性で、1ヶ月前からの労作時息切れを主訴に受診。最近2ヶ月間で6kg以上の体重減少と振戦、発汗過多、動悸あり。筋力低下はなく、身体所見では頻脈と手指振戦を認め、眼球突出なし。甲状腺のび漫性腫大あり。腱反射亢進。
 TSH 0.005mIU/L、fT4 7.77ng/dL、fT3 30.6pg/ml、TRAb 5.5であり、MMI 20mg/分2で治療開始。CTを撮像したところ、前縦隔部位に腫瘤を認め、胸腺腫瘍が疑われた。

Q.次に何をしますか?
 A1.腫瘍内科医に依頼
 A2.胸腺腫瘍の生検
 A3.胸腺腫瘍摘出のため外科依頼
 A4.経過観察し3-6ヶ月以内にCT再検

回答:A4
 診断はGraves病に合併した甲状腺過形成。恥ずかしながら、Graves病(Basedow病)に胸腺腫大を合併することを知りませんでした。多くの場合には過形成で悪性腫瘍の頻度は少ない為、経過観察が望まれます。画像的な悪性所見がなければ、まずはGraves病治療をしてみて縮小すれば精査不要とされています。ただ、過去のケースレポートでは、107例のGraves病の胸腺腫瘍の4例に癌が見つかっています。これを多いと考えるか少ないと考えるか意見が分かれるところかも知れませんね。

✓ Graves(Basedow)病には胸腺腫瘍を合併することがあり、多くは過形成である
 

SSI予防にバンドルアプローチ 
Association of a bundled intervention with surgical site infections among patients undergoing cardiac,hip,or knee surgery*2

 外科の周術期に何をすべきかは、CDCの推奨も出ていますが、いかにSSIを減らすか・・・といった部分では多くの施設が苦労しています。ICTとしてもなかなか何処の推奨を押し出すべきかは悩ましい所です。今回、単一介入ではなく、バンドルでの多角的介入の効果を検証したRCTが報告されていました。
 論文のPICOは、

P:心臓血管外科・股関節・膝手術42534件
I:バンドル(黄色ブドウ球菌スクリーニング、MRSA+ならムピロシン5日点鼻+クロルヘキシジン入浴5日、更に手術期予防的抗菌薬もMRSA+ならVCMを使用)介入後21ヶ月時点
C:介入前39ヶ月
O:MRSAかMSSAによる複雑性SSI
T:前向き観察研究
結果:
 バンドルアドヒアランスは83%だった。
 介入前の時期には101/28218例の黄色ブドウ球菌の複雑性SSIが発症した。
 介入後の時期には29/14316例の黄色ブドウ球菌の複雑性SSIが発症した。
 10000人辺りでは介入前 36人 vs 介入後 21人でRR 0.58(0.37-0.92)と有意に減少した
 NNT 666で1万件の手術で15人減らす。COIあり。

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(本文より引用)

 なるほどーと。今回珍しくこの手のもので感染減らしましたね。バンドルのアドヒアランスはpartialとfullとで評価されていますが、full adheranceは40%程度とかなり厳しいです。あとは黄色ブドウ球菌のみにしたのもちょっと・・・と思いました。あとは効果かなあ・・・こんだけ頑張ってこれくらいかというのが正直なところ。
 当院はMRSA絶賛激減中なので(入院患者だと年間43株)、あまり更に費用対効果が気になるところ。さらにはもっと出来る介入がほかにあるでしょ〜と突っ込んでおきます。

✓ 黄色ブドウ球菌に対するバンドル介入は複雑性SSIを有意に減らした


グリーフへの認知行動療法 
Increasing support for the treatment of complicated grief in adults of all ages*3

 JAMA networkからの論文紹介コーナー。今回はJAMA Psychiatryから。Treatment of Complicated Grief in Elderly Persons:A Randomized Clinical Trial*4グリーフを日本語でどう訳すかって難しいところで、悲しみっていうと軽いし、悲嘆反応だと伝わりにくいし、PFAでは喪に服すって訳してましたね。で、このグリーフは通常親しい人との別れの後には誰にでも訪れます。ただ、それが通常よりも遷延した場合にcomplicated griefとして対応が必要とされています。ただ、どのような対応が望ましいかは明確になっていません。過去の先行研究から認知行動療法や心理療法が検討されており、今回それを検討しています。

 論文のPICOは、

P:50歳以上のcomplicated grief 151人。ICG≧30の重症度(親族喪失6ヶ月以上経過)
I:認知行動療法 16セッション
C:心理療法 16セッション
O:20週後の時点での症状改善(CGIスコア)
T:RCT
結果:
 平均66歳、喪失後平均3.2年、45%にうつ病を合併
 症状残存率は、認知行動療法群 35%、心理療法群 64%と有意認知行動療法群が有意にスコアを低下させた
 NNT 2.5

 なかなかこの手の方へのRCTって組みにくいんだけど、かなり劇的な効果とも言えます。認知行動療法はやはり様々な部門の肝ですね。ここができるようになることは総合診療医に取って重要なスキルの一つかも知れないなあと思います。

✓ complicated griefに対する認知行動療法は心理療法と比較して心理スコアを有意に改善する



■NEJM■

麻疹症例 
In sight and out of mind*5

 なんだか最近米国でもかなり流行ってきているンでしょうか。NEJMのClinical Problem Solvingです。症例は21歳男性。一週間前から発熱・悪寒・嘔吐・頭痛症状あり。当日から皮疹が出現。当初から麻疹が鑑別に挙がっていたのですが、途中で診断から除外されていました。基本的にはrare疾患だからでしょうか。でも、麻疹は発熱・皮疹患者では鑑別診断として残すべきですと。詳細はネタバレになるので今回はあまり明かしません。

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(本文より引用)
 
 最近思うのですが、「蹄の音を聞いたらシマウマではなくてまず馬を考えよ」ってのは確かにそうなのですが、同時に「シマウマはいるよ!」とも思うわけです。シマウマについて知らなければ、どんなに考えてもシマウマの認識は出来ません。そういった意味では、臨床医は自分のcomfort zoneの疾患だけみるのではなく、challenging zoneの勉強を積極的に行うべきだと思います・・・とプライマリケア医に特に言いたい・・・

✓ シマウマはいるよ!


2型糖尿病への血糖厳密管理の長期予後 
Follow-up of glycemic control and cardiovascular outcomes in type 2 diabetes

 2型糖尿病の4大RCTとして、UKPDS・ACCORD・ADVANCE・VADTがあります、この中でintensive controlが心血管イベントを減らすとしたのはUKPDSでした。UKPDSは何故効果があるのか?というと、比較的診断から介入までが早期だった(legact effect)、最も長期にfollow upしている研究であることなどが理由として指摘されています。ただ、ACCORDやADVANCEのサブ解析で比較的早期DM群のみをサブ解析しても死亡は減らなかったというconflictな結果も得られています。そんな中、今回はVADT研究の長期予後follow up研究の結果が報告されていました。

 論文のPICOは、

P:退役軍人病院の2型糖尿病患者1791人
  平均5.6年のintensive contorol後、疾患データベースで長期予後follow
I:intensive control 5.6年(HbA1c <7.0%)
C:standard control
O:composite outcome(心臓発作・脳卒中心不全・心血管死亡・下肢切断)
T:RCTのfollow up研究 9.8年
結果:
 平均60歳、糖尿病歴11.5年、心血管疾患既往 40%
 退役軍人病院であり男性が97%
 最終的に長期follow でHbA1cはほぼ同等に。
 プライマリアウトカムは、HR 0.83(0.70-0.99)と有意に減少。1000人年で8.6人減らす。
 心血管死亡単独で見るとHR 0.88(0.64-1.20)と有意差なし。
 全死亡単独で見るとHR1.05(0.89-1.25)と有意差なし。

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(本文より引用)

  評価難しい所ですね。composite outcomeの問題点を考えるのに良い文献かもしれませんね。composite outcomeは、通常どのアウトカムも同等に減少していることが重要です。心血管イベントも全死亡も有意差つかないのに、compositeすると有意差がつくのは、イベント稼ぎと有意差を出す為に稼いだoutcomeがあるはずです。efigのそれぞれのアウトカムを眺めてみると、結局心臓発作も脳卒中心不全も心血管死亡も下肢切断も全て有意差なし・・・これぞcomposite magicです。

✓ 2型糖尿病患者に対する厳密血糖管理は、長期的に心臓発作・脳卒中心不全・心血管死亡・下肢切断の複合アウトカムを有意に減少させる