栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:早期関節リウマチの治療/アナフィラキシーの治療/West Nile熱の診断

MKSAPです。今週はやや疲れ気味。
それにしてもWest Nile!知らんがな!と突っ込みたい(笑い)
内科医の幅を感じさせる設問です。

早期関節リウマチの治療  Manage aerly rheumatoid arthritis

❶症例 
  58歳女性が、2ヶ月前からの下肢痛・こわばりを主訴に外来を受診された。疼痛は、母指球に限局し、朝90分ほどのこわばりを伴った。アセトアミノフェンや冷却で鎮痛を試みたが改善しなかった。他の内服薬は内服していなかった。
 身体所見では、バイタルは正常。下肢の診察では、両足の中足骨骨頭に軽度の腫脹と疼痛を認めた。その他には異常所見を認めなかった。

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(本文より引用)
 画像所見では異常所見を認めなかった。
 この患者の最も適切な管理はどれか?

 ❷関節リウマチ
 本患者では、MTXによる治療が最も適切である。一度関節リウマチが疑われれば、直ちに診断を確定し、適切な積極的治療を開始すべきである。2010年のACRの関節リウマチの分類によると、この患者のスコアは、3点:関節炎の分布(4-10個の関節)、1点:症状持続時間(≧6週間)、2点:リウマチ因子軽度上昇、1点:CRP上昇で合計7点だった。
 6点以上は関節リウマチの分類基準を満たし、他の鑑別疾患で説明がつかなければ関節リウマチの診断となる。X線で異常所見が無い事は疾患の除外にはならず、関節リウマチの初期には画像所見は正常である。

❸治療選択肢
DMARDs:MTXなどによるDMARDsによる治療は、関節破壊の進行を緩やかにし、機能制限を予防し、長期のコントロール困難な炎症などの合併症を予防する。関節リウマチでは、一度関節破壊が起こると不可逆的であり、積極的なDMARDsを用いても難しい。速やかにDMARDsを追加・増量していくことはより効果的である可能性がある。
コルヒチン:コルヒチンは結晶沈着性関節炎の炎症を軽減するが、関節リウマチの治療には用いられない。

NSAIDs:NSAIDsは、関節リウマチの疼痛に対する補助的役割を果たす薬剤だが、関節リウマチの疾患コースを変えない。
足底板:足底板は機械的なストレスを軽減するが、潜在的な炎症を改善しない。

Key Point
✓ 関節リウマチ患者では、早期に積極的なDMARDsによる治療を行うことで、関節破壊の進行を遅らせ、機能制限を予防し、長期のコントロール困難な炎症などの合併症を予防する。

Aletaha D, Neogi T, Silman AJ, et al. 2010 Rheumatoid arthritis classification criteria: an American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism collaborative initiative. Arthritis Rheum. 2010;62(9):2569-2581. PMID: 20872595

 

 

アナフィラキシーの治療 Treat anaphylaxis

❶症例
  21歳男性が、蜂刺され後の息切れを主訴に救急外来を受診された。軽度の頭痛と顔面のむくみを訴えた。
 身体所見では、体温 38.0℃、BP 98/60mmHg、Pulse 100bpm、RR 24/minだった。患者は不穏で、両肺野で喘鳴を聴取した。stridorはなく顔面・舌・咽喉頭腫脹は認めなかった。皮疹無く、胸部X線では過膨張の所見だった。
 この患者で最も適切な治療はどれか?

 アナフィラキシー
  最も適切な治療は、筋注もしくは皮下注射のエピネフリンである。また、アルブテロールなどの吸入β2刺激薬も用いられる。アナフィラキシーの初期治療にはBLSや高用量酸素投与、心臓モニター管理、経静脈路確保なども含まれる。これらの管理は、無症候でも過去に重症アレルギー歴がある場合や最近アレルゲンに接触した患者、また、軽度の局所反応のみの患者でも適応になる。
 本患者は昆虫刺傷による過敏反応、アナフィキシーの既往あり。気道閉塞や気管支攣縮、分布性ショックなどの合併も考慮する必要がある。現時点で気管支攣縮を疑う所見のみだが、他のアナフィラキシー症状も経過観察していくべき。
 よって、初期治療はエピネフリンの筋注or皮下注が第一選択で、喘鳴に対してはアルブテロールなどのβ2刺激薬を吸入する。アナフィラキシーの既往がある患者では、エピネフリン自己注射キットを携帯し、過敏反応がある事を知らせるアラームを装着しておく必要がある

 ❸治療の選択肢は?
人工呼吸器管理:本患者では、気道狭窄や呼吸不全の徴候はないため人工呼吸器管理は不適切である。もし気道狭窄が疑われ、エピネフリン投与でも改善しない場合には速やかな気管内挿管が求められる。気道狭窄を疑う所見として、吸気時のstridor、顔面や舌の腫脹、流涎、会話不可能などがある。アナフィラキシー患者では、しばしば気管内挿管そのものは非常に難しい場合もあり、その場合には輪状甲状切開が必要とされることもある。
ヒスタミン薬・ステロイド
どちらもアナフィラキシー患者のアウトカムを改善せず、気管攣縮が疑われる患者では直ぐに投与すべき薬剤ではない。使用する場合には一般的には遅発性アレルギーの予防であり、それさえも十分なエビデンスがあるわけではない
エピネフリン静注抵抗性の低血圧の場合にはエピネフリン静注も考慮する必要がある。本患者の低血圧は軽度であり経静脈的エピネフリンは適応にはならない。使用自体は、不整脈や血圧の乱高下、心筋梗塞脳卒中などが危惧される。

Key Point
✓ アナフィラキシーの初期治療はエピネフリンの筋注もしくは皮下注射である。

Sheikh A, Shehata YA, Brown SG, Simons FE. Adrenaline for the treatment of anaphylaxis: cochrane systematic review. Allergy. 2009;64(2):204-212. PMID: 19178399

 

West Nile熱の診断 Diagnose West Nile virus myelitis

❶症例

 32歳男性が、5日前からの発熱・悪寒・筋肉痛で緊急入院となった。職業は野生生物学者で、多くの時間を田舎の野外で過ごしている。3週間前には右足をダニに咬まれ除去。皮疹は認めなかった。
 身体所見では、体温 38.8度、Pulse 115bpm 整。見当識障害は無く、項部硬直なし。神経学的所見では、右下肢の著明な筋力低下があり、底屈・背屈がMMT 2/5、膝の屈曲・伸展がMMT 2/5、股関節の屈曲・伸展はMMT 3/5だった。右膝蓋腱・アキレス腱反射は消失し、左は正常。感覚は保たれ、その他の神経所見は異常を認めなかった。
  検査所見では、血算生化は異常所見なく、頭部CTは造影していないが正常だった。髄液検査が施行され、白血球 227/μlで好中球 45%、髄液蛋白 75mg/dL、グラム染色は陰性だった。

 本患者の診断で最も適切な髄液の追加検査はどれか?

 ❷West Nile熱の診断
 本患者は、急性発症の非対称的弛緩性麻痺を呈しており、West Nileウイルス性脊髄炎が疑われる。West Nile熱ウイルス(WNV)のIgM抗体が診断の為に必要である。
 WNVは米国内陸部全体で認められ、脳炎を来す微生物として重要である。自然界では鳥類がウイルス宿主であり、いくつかの種類の蚊は、高ウイルス血症状態の鳥類を刺すことでウイルスを獲得し人へ感染を媒介することが知られている。ポリオ様の脊髄炎症状はWNV神経侵襲性疾患を有する患者の12%で認められると報告されている。神経筋症状は、軽度の片側筋力低下から呼吸不全まで幅広い。WNV脊髄炎は単独で発生することもあるし、脳炎や髄膜炎と合併することもある。
 WNV IgM抗体は、WNV神経侵襲性疾患を呈している際には、髄液の90%以上で検出可能である。一方、WNVウイルス血症期間は短いため、CSFのウイルス培養の陽性率は10%未満、WNV PCRも60%未満と陽性率は低い。

 ❸他の鑑別診断
 サイトメガロウイルスCMVは多発神経根症の原因にはなるが、多くの場合には進行したHIV感染症で起こる事が多く、感覚障害や尿閉が特徴的。
 エーリキア症エーリキア症は髄膜脳炎を来す事はあるが、局所の麻痺を起こすことは少ない
 ライム病Borrelia burgdorferiはライム病の病原体で、神経症状は典型的には感染後1ヶ月以上経過してから起こる。早期播種性ライム病は、無菌性髄膜炎、脳神経症状、神経根症状が出現するが、脳炎や脳脊髄炎の発症時期は晩期である。

Key Point
✓ 髄液中のWest Nileウイルス(WNV)のIgM抗体は、WNV神経疾患の症状が出現時には90%以上で陽性となる。

Sejvar JJ, Bode AV, Marfin AA, et al. West Nile virus-associated flaccid paralysis. Emerg Infect Dis. 2005;11(7):1021-1027. PMID: 16022775

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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