栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:画像陰性の脳梗塞/意思疎通の困難な方の疼痛評価/気尿

今週のカンファまとめておきます。
個人的にはすごく感動しました。あんな診療したいなあ。

画像陰性の脳梗塞 MRI negative cerebral infarction

 t-PAや血管内治療など脳梗塞の治療に注目が集まっている昨今。緊急MRIじゃんじゃん撮ろうぜ!的なアプローチがよく見られます。そして、問題なのは、MRIで異常が無ければ脳梗塞では無いとされてしまうことです。特に後方循環系の脳梗塞は通常の片麻痺・構音障害などのパターンで来ませんから、その診断はいかに臨床診断できるか?にかかっています。2008年のNICE guidelineのSTROKEの定義を見ると、

・突然の脳の障害による局所神経所見
・症状が24時間以上持続する
・脳血管性以外の原因がない

3項目を満たしたものを脳卒中と定義しています。即ち画像によるconfirmationは必須では無いのです。頭部MRIの走査特性については、様々な研究がありますが、有名なLancetの2007年の前向き研究では、平均発症時間6時間の脳梗塞患者で頭部MRIの感度は83%、特異度96%と言われ、17%は初回MRIでは異常所見が無いことが分かります。

 MRIの感度と発症からの時間の関係で言えば、
・12時間以上で感度92%
・3-12時間で感度81%
・3時間未満で73%
と早期には感度が低下します。また、3時間未満に加えて、脳幹梗塞、来院時NIHSS 4点未満などが偽陰性の原因と報告されています。
 
 極論で言えば、脳卒中の症状・身体所見があるか?それ以外の原因(低血糖てんかん)はないか?症状が24時間以上継続するか?CTで出血・SAHがないか?を全てクリアーすれば、頭部MRIで所見があろうと無かろうと脳梗塞の診断になります。
 
 日本は人口当たりのCT・MRIの普及率はダントツですが、その分臨床診断が出来ない医師が育っては元も子もない気がします。画像陰性でも、きちんと症状から脳梗塞を診断しましょう。そんなプレゼンを聞いて、すごく嬉しくなりました!成長しているなあ。

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 ✓ 脳梗塞は臨床診断を。画像診断への過度の依存はやめよう。

 

 

意思疎通の困難な方の疼痛評価 Pain assessment for unconsciousness people

 院内で緩和ケアを提供する事が増えています。癌・非癌に関わらず等しく緩和的アプローチが必要ですが、高齢者が多くなり、認知症がベースにあったりして、明確な意思疎通が困難な方も増えています。主治医チームが評価しても果たして痛みがあるのだろうか?苦痛があるのだろうか?と悩むことも多かったりします。
 
 進行期の認知症患者さんの疼痛評価のために開発されたスケールがあり、PAINAD(Pain Assessment in Advanced Dementia) scaleと言います。詳細は以下。

http://www.learnpallcare.org/uploads/3/3/9/2/3392794/9685424_orig.png

http://www.learnpallcare.org/uploads/3/3/9/2/3392794/9685424_orig.pngより引用)

 呼吸の仕方や、漏れ出てくる声、表情、精神的に安定しているかなどが評価対象です。 J Am Med Dir Assoc. 2003;4(1):9.

 でも、結局最終的に大事なのは家族の評価だったりします。普段との違いを最も感じ取れるのは家族だからです。私達が感じ取れない変化を家族の方から聞いてみましょう。

 ✓ 声なき声に耳を傾ける。意思疎通の困難な患者さんの苦痛評価と緩和を考えよう

 

気尿 Pneumaturia

  まあ、あまり出くわすことの無い主訴だとは思いますが、ちょっと整理しておきます。気尿とは、膀胱内に空気が混じる現象を指します。実は蛋白尿があると尿が泡沫状を呈することがあり、鑑別が難しい事もありますが、最も分かりやすいのは排尿時にガスが出るという場合です。

 気尿を診た場合の鑑別として、
・膀胱腸瘻や膀胱膣瘻などの瘻孔
・最近の膀胱内処置
・気腫性膀胱炎など
を考える必要があります。
 
 膀胱腸瘻や膀胱膣瘻の場合には、炎症(特に憩室炎やCrohn病等)もしくは腫瘍性病変、外傷、放射線療法後等を考える必要があります。

✓ 気尿を診た時の鑑別を覚えておこう