栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet NEJMのCOIポリシー批判/FDA報告書内容を企業が報告しているか/DES後DAPT期間/狭心症疑い患者へのCTA/心房細動へのジゴキシン

BMJ

NEJMのCOIポリシー批判 
Conflict of interest: forward not backward*1

 NEJMが先日発表したNEJMのCOIポリシーについて先週のLancetに引き続いてBMJが噛みついています。BMJ編集長のGodleeさんのeditor's choiceでした。

 細かくは本文を読まなくてはいけないかもしれませんが、http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMms1502498に記載されています。NEJM編集長は
 「研究者と企業を分かるのは得策ではなく協力すべきだ」
とコメントしています。ここに対してBMJは「完全にmistakeだ!」と批判しています。
 「確かに研究者と企業の協力は必要だが、その研究者にeditorialやinterviewをやらせてはいけない。biasがかかった発表の聴衆はbiasを排除できない為危険」
と。エビデンスを作る、研究を行うことは企業と協力することは避けて通れないご時世ですが、エビデンスを評価し公正な判断を下す側とは明確に役割を区別する必要があります。

 今回の批判にはNEJMの元編集長3人も加わっています。現在BMJが打ち出した「reviewerにCOI無い人を採用する」というポリシーは以前のNEJMのポリシーだったのだそうです。Lancetの編集者はいいとこ取りで、「真実は双方の間にある」的な発言をした様ですが、どちらにしても物議を醸していることは間違いなく、今後も議論は必要です。COIについて、絵に描いた餅や机上の空論にならずにバイアスを排除できる情報提供が必要ですね。

✓ NEJMのCOIに対するポリシーは修正が必要かもしれない


FDA報告書内容を企業が報告しているか? 
Comparison of content of FDA letters not approving applications for new drugs and associated public announcements from sponsors: cross sectional study*2

 FDAの薬剤認可はなかなか厳しく、不認可の場合にはその理由が企業に帰されています。今回そのFDAの不認可理由を企業がきちんと報告しているかどうかを検証しています。対象は2008-2013年に認可されなかった薬剤61剤において、FDA報告書を受けた企業が公的にPress リリースなどの情報公開を行っているかを調査しています。

 結果として29薬剤(48%)が安全性と効果について両方記載したプレスリリースを公表していました。一方、安全性のみで効果については記載しなかったのが13%、プレスリリースが全く無いのが11剤(18%)。

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(本文より引用)


 まあ、要は全公開していないということですよね。難しいですねえ。企業は販売を考えなくてはいけないので、全てを公表するわけにはいかないという論理も分かります。一方で、安全性に関わる部分は公表・共有されなくてはいけないという原則も分かります。

✓ FDA非認可薬剤の非認可理由は十分公表されているとは言えない


 

■Lancet■

DES後DAPT期間 
Mortality in patients treated with extended duration dual antiplatelet therapy after drug-eluting stent implication: a pairwise and Bayesian network meta-analysis of randomised trials*3

 さて、あちこちで話題にはなっていると思いますが、DAPT継続期間についてのメタ解析です。PCI後症例に対してDAPT導入されて以来、その継続期間をどうするかは話題でありました。最近はより短くて良いのではないか?という意見が主流になりつつあり、2014年には韓国で1年 vs 3年で再発率・死亡率に差が無いことが分かり、欧州のガイドラインでは、第2世代DESは1年→6ヶ月に変更となっています。ただ、その後DAPT期間を短くしたところ死亡が増えたというstudyもあり、現在はcontroversyな領域の話題となっております。と言うわけで今回ネットワークメタ解析が行われました。 
 論文のPICOは、

P:薬剤溶出性ステント留置患者
I/C:①長期間 vs 短期間、②6ヶ月 vs 1年以上、③6ヶ月以内 vs 1年、④1年 vs 1年以上
O:死亡率
T:ネットワークメタ解析
結果:
 10個のRCT、31666人の患者のデータを解析対象としてメタ解析を行った。
 ①長期間 vs 短期間は、短期間の方がHR 0.82(0.69-0.98)と有意に死亡率が低かった。NNT 325。異質性なし。
 ②6ヶ月 vs 1年以上、③6ヶ月以内 vs 1年、④1年 vs 1年以上は1年と1年以上を比較したもののみがHR 0.82(0.69-0.98)と有意差を認めた。

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(本文より引用)
 ネットワークメタ解析でもほぼ同様の結果。

 ネットワークメタの手法自体は完全に理解しているとは言いがたいですが、少なくとも1年以上継続することの意味は少ないかもしれません。かといって6ヶ月で良いというデータも無い模様。最近の毎度のおきまり文句ですが、リスクの層別化・個別化しようぜ!という結論。

✓ DAPT推奨期間はリスクの個別化が重要。1年以上はむやみに継続すべきではないかもしれない


狭心症疑い患者へのCTA 
CT coronary angiography in patients with suspected angina due to coronary heart disease(SCOT-HEART): an open-label, parallel-group,multicentre trial*4

 最近CTAが撮れるようになってから、冠動脈疾患の診断に利用されるようになってきましたが、その利用が実際の臨床アウトカムに影響を与えるのかどうかは明らかになっていません。今回、冠動脈疾患疑いで紹介された患者さんに対して、CTAを検査として用いる場合とそうで無い場合に狭心症診断にどの程度寄与するかを検討しました。
 論文のPICOは、

P:冠動脈疾患で紹介された18-75歳の患者 4146人
  ACSは除外され安定している患者のみ。CKD患者も除外
I:通常ケア+CTA施行群
C:通常ケア群
O:6週間後に冠動脈疾患による狭心症の診断
  診断は循環器科専門医が狭心症について4段階で評価
T:RCT
結果:
 平均57歳、男性56%、過去の冠動脈疾患9%、喫煙率53%で背景は両群で有意差なし
 ベースラインの狭心症はtypical anginaは35%、Atypical 24%、Non-anginal 41%
 85%で負荷心電図は行われており62%は正常だった群
 冠動脈疾患による狭心症の診断は、CTA群で6%→11%に増加、通常ケア群では7%→7%と変化なし
 また、CTAを行う事で、CAGや負荷画像検査のキャンセルが有意に増加
 臨床アウトカムでは1.7年follow upでCTA群で死亡が少ない傾向だった(HR 0.616:0.378-1.006 有意差なし)

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(本文より引用)

 CTAが臨床にどのような影響を与えるかを数値化しています。こういった見える化は重要ですね。
 自信を持って狭心症です!と診断できる患者が増えると言う結果。臨床アウトカムは減る傾向ではありますが、統計学有意差はでていませんでした。あとは被曝による害の検証も長期的には検証が必要でしょうか_

✓ 冠動脈疾患疑いの患者さんにCTAを用いることは、冠動脈疾患による狭心症診断に寄与する


心房細動へのジゴキシン 
Digoxin use in patients with atrial fibrillation and adverse cardiovascular outcomes: a retrospective analysis of the Rivaroxaban once daily oral direct Factor Xa inhibition compared with vitamin K antagonism for prevention of stroke and embolism trial in Atrial fibrillation(ROCKET AF)*5

 ジゴキシンについてはこのブログでも以前も取り上げていますが、なかなか解釈が難しい所です。今回もジゴキシンによる効果がどの程度あるかを、過去のROCKET AFという心房細動に対するVKA vs NOACを評価した研究のサブ解析で検討しています。現時点での多くのstudyは心不全に対するジゴキシンの効果ですが、心房細動に対する効果を検討した研究も少ないのが特徴です。

 論文のPICOは、

P:CHADS2≧2点の心房細動患者14171人
I:ジゴキシン使用患者 5239人
C:ジゴキシン非使用患者
O:全死亡、心血管死亡、突然死
T:RCTのサブ解析
結果:
 元々のstudyのうち37%がジゴキシン使用者。もともとの背景因子では、ジゴキシン使用は、若年・女性・持続性心房細動・心不全既往が多いという結果。
 様々な背景・交絡因子を調整した後も、ジゴキシン使用は全死亡と関連 HR 1.17(1.04-1.32)、心血管死亡はHR 1.19(1.03-1.39)、突然死 HR 1.36(1.08-1.70)

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(本文より引用)
 また、ベースラインのみならず、経過中のジゴキシン新規開始が関連するかを評価したところ、追加で開始することで、全死亡はHR 1.22(1.08-1.37)と有意に死亡率が上昇
 心不全既往のあるなしで結果は変わらなかった。


 過去の研究を見ても
 ・AFFIRM(23%心不全):ジゴキシンと死亡は関連ないが、心不全既往の無い患者ではジゴキシンで死亡率上昇。
 ・RACEⅢ:ジゴキシン使用で死亡増えず
 ・RIKS-HIA心不全既往のない心房細動患者へのジゴキシンは死亡率上昇
→と、conflictな結果ではありますが、どの研究も害があるか無いかであり、メリットは見いだせていません。
 もちろん、ジゴキシンを開始するという意味で心不全患者では重症だったり、心房細動患者でも頻脈が認められている可能性もあり、十分交絡因子が排除できているとは言えない状態でしょう。今後、きちんとRCTで検証すべきと結論づけられています。

✓ 心房細動患者に対するジゴキシン投与および新規開始は全死亡を増加させる