栃木県の総合内科医のブログ

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論文:院外CPA患者に対する心肺蘇生の電話連絡システム

院外CPA患者に対する心肺蘇生の電話連絡システム
Mobile-Phone dispatch of laypersons for CPR in out-of-hospital cardiac arrest*1

N Engl J Med 2015; 372:2316-2325June 11, 2015DOI: 10.1056/NEJMoa1406038

【背景】
 バイスタンダーによって行われる心肺蘇生(CPR)は、院外心停止患者の生存率上昇に関連する。携帯電話使用者の位置を瞬時に特定するGPSシステムを使って、院外心停止患者の近くにいるCPRの訓練を受けた市民ボランティアを現場に派遣することによって、バイスタンダーによるCPRの実施率が上昇するかどうかを検討した。

【方法】
 スウェーデンストックホルムで、2012年4月~2013年12月に盲検ランダム化比較試験が行われた。救急・消防・警察が派遣されると起動されるGPSシステムを用いて、院外心停止患者から500m以内にいる訓練を受けたボランティアの位置を特定した。続いてそのボランティアを患者のところに派遣する群(介入群)と、派遣しない群(対照群)に割り付けられた。プライマリアウトカムは、救急・消防・警察の到着前のバイスタンダーによるCPR実施とした。

f:id:tyabu7973:20150620222827j:plain(本文より引用)

【結果】
 CPRの訓練を受けた市民ボランティア5989人が最初に登録され、試験期間中に9828人が登録された。院外心停止 667件でGPSシステムが起動され、ボランティアが割り付けられたのは介入群 46%(306 例)、対照群 54%(361 例)だった。バイスタンダーによるCPRの実施率は、介入群 188/305人(62%)、対照群 172/360人(48%)だった。

【結論】
 CPRの訓練を受けた市民ボランティアを派遣するためのGPSシステムは、院外心停止患者におけるバイスタンダーによるCPRの実施率の有意な上昇に関連した。

【批判的吟味】
・平均72歳、自宅発症 70%、目撃あり57%、電話でのCPR指示 6%、救急隊到着までの時間 平均8分
・プライマリアウトカムである、CPR実施率は上昇していましたが、30日生存は有意差がつきませんでした。介入群 32/286人(11.2%)、対照群 28/326人(8/6%)と有意差はつかないものの良い傾向でした。これはサンプルサイズの影響ではないか?と考察されています。
・ボランティアへの連絡はメールで届く様ですが、実際20%は500m以内にはおらず、実際に現場に行ったのは59%でした。
・更に、救急・警察・消防より前に到着出来たのは23%、実際に先にCPRを行っていたのは13%。介入群で介入による恩恵がどの程度受けられたかはかなり悩ましい所です。まあでも現実を表しているとも言えます。
・今回こんなstudyができたのはSwedenの救急システムが一括して管理されていることにもある様です。

【個人的な意見】
GPSで位置把握されて・・・というボランティアは大変だろうなあと。
・でもそれだけ国民みんなで救える命を助けようという気概が伝わって来ます。
・興味深かったのは、救急が呼ばれた時に警察・消防も同時に患者宅に向かうシステムになっており、更に、救急隊が到着前には警察官や消防士がCPRを行うことになっています。すごいなあ。

✓ CPRを提供出来るボランティア市民が、心肺蘇生要請の電話連絡を受けることはCPR施行率を上昇させる