栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 小児のDKAに対するインスリン療法/痛風発作へのNSAIDs/急性期梗塞への血栓溶解療法/女子大学生への性的暴力防止計画/救急隊到着前CPRの効果

■JAMA■

小児のDKAに対するインスリン療法 
Insulin dosing in pediatric diabetic ketoacidosis. Where to start?*1

 JAMA Networkの文献から。今回取り上げられていたのは小児のDKA治療におけるインスリン量をどうするか?という小児科領域の話題です。実際にはこの状態の小児と相対することは多くないのですが、大人でも当てはまるなあと思ったのでシェアしておきます。
 取り上げられていたのは、
Low-dose vs standard-dose insulin in pediatric diabetic ketoacidosis: a randomized clinical trial
JAMA Pediatr.2014:168(11):999-1005
 でした。論文のPICOは

P:12歳以下DKA患者50人 
I:low dose(0.05U/kg/時)25人
C:standard dose(0.1U/kg/時) 25人
O:血糖≦250になるまでの時間
T:単一施設RCT/非劣性試験
結果:
 low dose群で一時間あたり45.1mg/dL低下、standard dose群で一時間あたり52.2mg/dLずつ低下と同等。アシドーシス改善までの時間も同等。
 低カリウム血症はlow dose群 20%、standard dose群 48%とlow doseが少ない。また、低血糖はlow dose群4%、standard群 20%と有意にlow dose群が少なかった。

 規模は小さいので、大規模RCTで検証する必要がありますが、現行のDKAに対するインスリン持続点滴の容量は多い可能性があります。これは成人DKA治療の際にも似たようなことを考えていました。ちょっと量が多いのかもしれません。do no harm。

✓ 小児DKA患者に対するインスリン持続点滴はlow doseでも効果は同等で有害事象が少なくなる可能性がある


痛風発作へのNSAIDs 
Nonsteroidal anti-inflammatory drugs for treatment of acute gout*2

 何を今更当たり前のことを・・・?という感じかもしれませんが、実は痛風発作への治療は複数選択肢があり、まとまった見解は得られていませんでした。今回JAMAのClinical Evidence Synopsisでは、Cochrane reviewを取り上げて痛風発作に対する治療法の効果比較を検証したSystematic reviewを紹介しています。RCT 23個、合計 2200人の研究で平均年齢54歳。プライマリアウトカムとしては、①NRSで評価した疼痛スコア、②副作用中止率としています。

 比較されたのは、NSAIDsに対してプラセボアセトアミノフェン、COX2阻害薬、コルヒチン、ステロイド、IL-1阻害薬、組み合わせなど。エビデンスレベルの高いstudyは多くは認めなかった。
 NSAIDs vs COX2阻害薬では中等度クオリティで4つのRCTがあったが、効果は有意差なく副作用中止はNSAIDs群の方が RR 2.39(1.34-4.28)多かった。
 NSAIDs vs PSLも中等度クオリティで2つのRCTがあったが、こちらも効果は有意差なく副作用中止も両群変わらなかった。現時点でNSAIDs vs コルヒチンとCOX2 vs PSLの研究が無い様です。

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(本文より引用)

 現時点ではEULAR・ACRともに、コルヒチン・NSAIDs・ステロイド・COX2を同等に扱っており、患者の基礎疾患等に応じて使い分けなさいと。

✓ 急性痛風発作に対する対処方法は、実はどれも横並び


 

■NEJM■

急性期梗塞への血栓溶解療法
Thrombectomy within 8 hours after symptom onset in ischemic stroke*3

 脳梗塞急性期に対する血管内治療の進歩がめざましいです。1999年にPROACTⅢ研究が始まり注目が集まり、2013年に一気に3研究(IMSⅢ・MR RESCUE・SYNTHESIS)が発表され、残念ながらコントロール群と比較してアウトカムを改善しませんでした。ところが、今年に入って一気に5つの血管内治療が報告され、軒並み良い成績で試験が早期終了になっています。今回、NEJMには、SWIFT-PRIME研究とREVASCAT研究が報告されており、後者のREVASCAT研究について紹介します。
 論文のPICOは、

P:18-80歳までの画像で近位部狭窄が明らかになっている前方循環梗塞
  発症前mRS 0-1点、NIHSS ≧6点をinclusion
I:血管内デバイスによる血栓吸引
C:通常ケア
O:90日後mRS
T:RCT/ITT解析あり
結果:
 平均66歳、NIHSS 17点、発症から224分、t-PA率 72%、M1狭窄が全体の90%
 プライマリアウトカムである90日後のmRS0-2点の割合は介入群 43.7%、通常ケア群 28.2%、OR 2.1(1.1-4.0)有意に改善した。NNTは6。
 出血率は両群で変化なし。

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(本文より引用)

 ひとまず、かなり有意な差が出てしまい試験は早期終了となっています。プロトコールは途中で変更あり。今回この研究にentryしたのは年間500例以上脳卒中を担当し、60例以上で血栓吸引を行っているexpertの医療機関を対象としています。若干気になるのは、死亡は有意差はつかないもののやや増えている傾向だということ。難しいですね。まあ、でもNNTも軒並み一桁ですし、今後の標準治療に組み込まれていくでしょうね。

✓ 急性期脳梗塞に対して通常治療に加えて血栓吸引を行う事は90日後の神経予後を改善する


女子大学生への性的暴力防止計画 
Efficacy of a sexual assault resistance program for university women*4

 最近日本でもコンパの時に・・・など悪徳サークルの話題が出ることもありますが、一般的に大学生というの特に性的暴力を受けるリスクが高い集団だと言うことが分かっています。何とか予防できないか?ということで、今回介入研究がされています。
 論文のPICOは、

P:カナダの3大学の女子大学生 1年生893人が対象
  精神科コースに所属している学生を対象にe-mailで宣伝しリクルート
I:3時間の性的暴力対処コースを計4回行うresistance群
C:通常のプログラムのコントロール群
O:1年以内の性的暴力の発生率
T:RCT、mITT
結果:
 もともと3241人で適格性を確認し1529人が本人の意思で参加を拒否
 平均18歳、hetero sexual 8%、過去の性的暴力歴 23%、自己防御訓練を受けている人 33%
 プライマリアウトカムの性的暴力はコントロール群で42/442人(9.8%)、介入群で23/451人(5.2%)と有意に介入群で少ない結果だった。未遂も含めて全体でも性的暴力の被害を受ける人の割合は低下

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(本文より引用)

 ベースラインの状況が結構衝撃で。カナダだけとは言えない気がします。
 今回のRCTでの介入は、self managementで予防可能であることが分かった画期的なものでした。NNTも22/年と効果としては良いと思います。もちろん、アウトカムの測定バイアスもあるでしょうし(基本報告しにくいと思いますし・・・)、includeされた群もかなり意識の高い方々という側面もあるでしょう。まあ、それでも性的暴力発生率が1年で9%とは衝撃ですが・・・
 社会的な問題であり、今回の様な大学レベルの介入だけでは無く、社会制度や危険地域との連携なども今後必要になると思います。

✓ 性的暴力予防のための教育コースは実際の性的暴力被害の発生率を減少させる


救急隊到着前CPRの効果 
Early cardiopulmonary resuscitation in out-of-hospital cardiac arrest*5

 今回SwedenからCPRについての研究が2つ報告されています。1つは”じっくり”の方で取り上げましたので、今回はもう一つの研究を。救急隊が到着する前に、いわゆる”バイスタンダー”がCPRを行う事は患者予後と関連すると言われています。今回、実際にそれがどの程度のインパクトのあることなのかをSwedenの国全体のCPRデータを用いて検証しています。Swedenは全体の90%以上の臨床データがSwedish Cardiac Arrest Registryというデータベースに登録されており、1990-2011年までのデータを使用しました。
 論文のPECOは、

P:Swedenの全院外CPA患者 61781人のうち目撃なしの17935人と救急隊目撃の7898人は除外
  合計30381人の院外CPA患者
E:救急隊到着前にCPRあり
C:救急隊到着前にCPRなし
O:30日生存率(ただし本文に記載なし)
T:後ろ向きコホート研究/National registry
結果:
 CPRなしは14869人、CPRありは15512人で、ありの方が平均年齢が若く自宅CPAが多い結果
 プライマリアウトカムの30日死亡は、CPRなしで4.0%、CPRありで10.5%と有意に高かった OR 2.80(2.47-3.18)
 30日生存者の神経予後は95%がcategory 1-2と良好だった
 また、心停止からCPRまでの時間はきれいに30日生存率と相関した

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(本文より引用)

 National registryがあるのがすごいです。そして全CPA症例を解析した時に目撃者ありであれば半分はバイスタンダーがCPRをしているというデータ。兎にも角にも素晴らしいですね。ただ、今回観察研究の為、CPR率の変化とCPA対応のシンポが同時に進んでおり、交絡因子はあるのかもしれません。

✓ 院外心停止に対するバイスタンダーCPRはリアルワールドでも30日死亡や蘇生後神経予後を改善する