栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet 帝王切開のリスク再考を/子宮頚癌スクリーニングについて/大動脈弁狭窄症患者へのTAVR 5年予後/4型HCVへのIFNフリー治療/ACS患者への橈骨動脈アプローチ

BMJ

帝王切開のリスク再考を 
Time to consider the risks of caesarean delivery for long term child health*1

 諸外国では帝王切開による分娩が増加している事が知られており、中には適応外に行われていることも少なくないというのは過去にも取り上げたことがありました。適応外の帝王切開の中で、最も多いのは患者希望による帝王切開です。患者希望での帝王切開は先進国よりもmiddle incomeの国々で多いらしく中国では20%程ある様です。また、実は医学的には帝王切開後に経腟分娩を行う事は問題ないはずなのに、帝王切開既往妊婦さんの実に90%は第2子も帝王切開で出産しています。

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(本文より引用)

 ただ、帝王切開は子供にとって、肥満・喘息・1型糖尿病のリスクになる事が知られています。これは観察研究・症例対照研究のメタ解析によるもの。まだ十分検証された分野ではないため、質の高いエビデンスがあるとは言えない状況でRCTでもやれば良いという意見はありますがなかなか難しいでしょう。ただ、帝王切開のリスク・ベネフィットを考える上で、1つの材料にすべきでは無いか?と述べられています。もちろん、必要な帝王切開はありますから、あくまで選択肢がある場合ということにはなりますが。
 
✓ 帝王切開は世界中で増えているが、リスク・ベネフィットを考慮した選択を。帝王切開は子供の健康リスクに関連する可能性がある


子宮頚癌スクリーニングについて 
Cervical cancer is not just a young woman's disease*2

 スクリーニングの是非についての話題がしばしば見られるようになりましたが、子宮頚癌はその中で数少ない効果が十分実証されているスクリーニング検査です。ただ、今回話題になっているのは、何歳までスクリーニングを行うべきか?という話題です。子宮頚癌は比較的若年者でも見られるため、スクリーニング対象が若年にシフトしがちです。英国では65歳まで。日本では明確な上限は無い様ですが、参考までに宇都宮市は40歳までは無料クーポンが配られています。

 ところが実は新規発症の子宮頚癌の25%は65歳以上であり、なおかつ65歳以上の子宮頚癌患者の死亡率は50%と高い事が分かっています。おそらく平均寿命が上がっていることが影響しているとは考えられますが、スクリーニング年齢を考え直す時期に来ているのではないか?とコメントされています。

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(本文より引用)
 
 もちろん、今後HPVワクチンの普及に伴って疾病疫学が変化する可能性があるので、それに合わせた検診のあり方は検証されるべきでしょう。単純な検診受診率という議論では無く、より効果的かつ害の少ない検診のあり方を模索していきたいですね。

✓ 子宮頚癌スクリーニング検査の適正年齢を上げるべきかもしれない


 

■Lancet■

大動脈弁狭窄症患者へのTAVR 5年予後 PARTNER1研究 
5-tear outcomes of transcatheter aortic valve replacement compared with standard treatment for patients with inoperable aortic stenosis(PARTNER 1): a randomised controlled trial*3

 大動脈弁狭窄症に対する治療法でTAVRは徐々に普及してきています。ついに栃木県でもできるようになった?的なPhaseに突入しています。ただ、まだまだ始まったばかりの手技であり、長期予後が良く分かっていないのが現状です。今回は過去のTAVR studyの5年後のfollow up dataを解析しています。
 論文のPICOは、

P:手術適応では無い大動脈弁狭窄症(弁口面積<0.8cm2)
I:TAVR施行群 179例
C:通常治療群(79%でバルーン拡張のみ施行) 179例
O:5年生存率
T:RCT/ITT解析あり/21施設
結果:
 平均年齢83歳、女性54%
 5年後死亡率は、TAVR群 71.8%、通常治療群 93.6%、HR 0.50(0.39-0.65)
 通常治療群で生存していた患者の多くは手術をしていた。

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(本文より引用)

 まず、びっくりしたのは手術できないAS患者の死亡率の高さです。93.6%って末期癌なみ。そしてTAVRはそこを改善するんだなあと。すごいっす。
 一緒に抄読会に参加していた医師からは、バルーン拡張はスタンダードでは無い、もしかしたらバルーン拡張のみしたことで死亡率が増えたのでは?とコメントしていました。我々一般医にとって重要なのは、どなたを紹介するかでしょうね。

✓ 大動脈弁狭窄症患者に対するTAVRは5年後の生存率を有意に改善する
 

4型HCVへのIFNフリー治療 
Ombitasvir plus ritonavir with or without ribavirin in treatment-native and treatment-experienced patients with genotype 4 chronic hepatitis C virus infection (PEARL-1): a randomised, open-label trial*4

 日本でHCVというとtype 1かtype 2ですよね。私もHCV治療に携わるようになって5年目になりますが、偶然とは思いますが、今までほぼ全例type2でした。個人的な経験は良いとして、世界のHCVの13%はtype 4なんだそうです!知らないですよね、type 4。そしてtype4はIFNが効きにくいという問題点があります。
 さて、そんな中で論文のPICOは、

P:18-70歳のtype 4 HCV患者
  肝硬変なし/HCV>10^4/未治療
I:3剤+RBV
C:3剤のみ
O:12週後SVR
T:RCT
結果:
 平均47歳、HCV 10^6程度
 未治療群では、3剤+RBV群 44人、3剤のみ群 42人、治療歴あり群は49人
 プライマリアウトカムの12週後SVRは、未治療RBVなし 91%、未治療RBV併用 100%、治療歴ありRBVあり 100%
 副作用での中止はなし

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(本文より引用)


 4型HCVに対するインターフェロンフリー療法の効果を検証しています。RBV併用するとほぼ100%。ものすごい治療効果です。すげーなあ。あとは費用対効果ですね。
 
✓ 4型HCVに対するインターフェロンフリー療法は12週後SVR>90%である


ACS患者への橈骨動脈アプローチ 
Radial versus femoral access in patients with acute coronary syndromes undergoing invasive management: a randomised multicentre trial*5

 心臓カテーテル検査で橈骨動脈アプローチを行うことは、それほど珍しいことではなくなってきましたが、橈骨動脈と大腿動脈とのアプローチの違いでどのくらい患者予後が違うのか?ということが問題となっています。実は結構過去にも研究されているんですねえ。
 論文のPICOは、

P:ACSでCAG/PCI予定の患者8404人
  循環器内科医が橈骨でも大腿でも良いと判断した患者
  75回以上橈骨動脈でPCI歴があり、前年度PCIの50%以上が橈骨動脈アプローチだった施設
I:橈骨動脈アクセス群
C:大腿動脈アクセス群
O:①30日後の死亡・心筋梗塞脳卒中composite outcome
  ②30日後の死亡・心筋梗塞脳卒中+出血(BARC type 3-5)のcomposite outcome
T:RCT/ITTT解析
結果:
 8404人のACS患者を橈骨動脈アクセス群 4197人、大腿動脈アクセス群 4207人
 平均65歳、BMI 27、DM合併 22%、PCI歴 14%、STEMI 48%
 アプローチ失敗は、橈骨群 5.8%、大腿群 2.3%
 プライマリアウトカムのcomposite outcomeは、橈骨動脈アクセス群 369/4197人(8.8%)、大腿動脈アクセス群 429/4207人(10.3%)で、HR 0.85(0.74-0.99)
 出血も含めた②もHR 0.83(0.73-0.96)
 セカンダリーでは全死亡がHR 0.72(0.53-0.99)と有意に減少していた。
 その後過去のstudyと統合してメタ解析を行っているが、出血も死亡もどちらも減少

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(本文より引用)

 すごいですね!こんなに違うのかあ・・・と若干呆然。サブグループ解析で見ると、橈骨動脈アプローチ率が高い医療機関の方がより良い結果でした。こんなに違うなら是非radialでお願いしたいです!

✓ ACSのCAG・PCI時のアクセスは橈骨動脈アクセスの方が大腿動脈アクセスよりも死亡率・出血率ともに良い