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栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA & NEJM 反復性口腔内潰瘍/急性虫垂炎への抗菌薬治療/心臓外科術後のhigh flow nasal BiPOP研究/エボラウイルス感染後遅発性ぶどう膜炎/重症患者への非蛋白カロリー制限

JAMA NEJM 論文 口腔外科 プライマリケア 感染症 消化器 呼吸器 循環器 外科 心臓血管外科 栄養 眼科 集中治療

■JAMA■

反復性口腔内潰瘍 
Recurrent oral ulcers*1

 これは超コモンな疾患。ただ、実はあまりきちんと学んだことは無いですね。個人的には非常に出来やすいので、思わず「うんうん」と頷きながら読みました。
 症例は44歳男性。2年前から反復性の口内炎既往あり。既往歴としては、GERD・不安障害があり、PPIベンゾジアゼピン系薬剤を常用している。家族歴なし。痛みのある潰瘍が口腔粘膜にできて、2週間程で自然軽快するも、また別部位に出現するというのが主な症状。潰瘍は丸くて対称性で偽膜を伴う潰瘍。

f:id:tyabu7973:20150628083524j:plain(本文より引用)

 対応として、どうするのがベターでしょうか?という設問でした。①生検、②バラシクロビル、③採血で血液疾患等精査、④アモキシシリンが選択肢です。
 
 この病態は、反復性口腔内潰瘍 Recurrent Aphthous Stomatitis(RAS)は、小児の1.5%、成人の0.85%に見られると言われ、頻度は比較的多い疾患である。家族歴が重要で、他にストレスや全身疾患(Bechet病・炎症性腸疾患・Celiac病等)・栄養状態と関連すると言われています。栄養としては、ビタミンB12葉酸・鉄など。key pointは見た目が重要で、偽膜ある対称性アフタの場合に疑いましょうと。 全身症状が無ければ、ルーチンでのIBDスクリーニングなどは不要です。通常治療は、ステロイド外用剤だが、十分なエビデンスは無い。
 難治性の場合には、基礎疾患の検索が必要で、ビタミン・鉄・葉酸・血液疾患などの精査を行いましょうと。

✓ 反復性口腔内潰瘍(RAS)は、自然軽快するコモンディジーズである


急性虫垂炎への抗菌薬治療 
Antibiotic therapy vs appendectomy for treatment of uncomplicated acute appendicitis. The APPAC randomized clinical trial*2

 このネタも最近よく見かけるようになりました。まあ、日本では元々手術第一選択!!というよりも抗菌薬で保存的にいきましょう・・・ってプラクティスはすごく多いと思いますけどね。
 論文のPICOは

P:18-60歳までのCT確認された虫垂炎530人
  虫垂>6mm+壁造影効果 or 炎症性浮腫 or 虫垂周囲fluid
  糞石ありは除外
I:Ertapenem3日点滴+LVFX・メトロ 7日内服(ただし抗菌薬開始12-24時間後に外科医が手術適応を再評価)
C:手術群(5.5%はLAP)、抗菌薬は術前1回のみ
O:
 抗菌薬群:1年以内の再手術
 手術群:虫垂切除成功率
T:RCT/非劣性試験 Δ=24%
結果:
 平均34歳
 抗菌薬群の1年以内手術率 72.7%、手術群の成功率は99.6%
 両群の差はΔ=24%に劣る

 今回の論文は結構残念。まず、なんで虫垂炎にカルバペネム??って突っ込みから入り、アウトカム設定が介入群それぞれで異なるのもちょっと・・・もちろん同じアウトカムで評価することは難しいかもしれませんが。更には非劣性試験でΔ=24%の設定も結構微妙。更に更に論文の図表にプライマリアウトカムの記載なし・・・
 まあ、体裁自体があかんな!という感じでした。

✓ 虫垂炎への抗菌薬治療は手術群と比較して治療効果は劣勢だった


心臓外科術後のhigh flow nasal BiPOP研究 
High flow nasal oxygen vs noninvasive positive airway pressure in hypoxemic patients after cardiothoracic surgery*3

 最近はこのHigh Flow nasalも注目ですね。今回は通常の呼吸不全では無く、心臓外科手術後の患者さんに使用したらどうかを検証しています。現在はNPVが主流でしょうか。
 論文のPICOは、

P:心臓血管外科手術後830人
  条件は以下の3つのうち1つを満たす。①SBT失敗、②SBT成功+BMI≧30 or 挿管失敗 or EF≦40%、③SBT成功後抜管失敗
  OSA・気管切開患者は除外
I:High Flow Nasal群
C:Bipap群(full face)
O:治療失敗のcomposite outcome(再挿管・デバイス変更・治療中止)
T:RCT/非劣性 Δ=9%
結果:
 平均64歳、BMI 28、CABG 28%、弁置換 20%、肺血栓除去 18%
 プライマリアウトカムは、High Flow nasal群 87/414人(21.0%)、Bipap群 91/416人(21.9%)で絶対差は0.9%(-4.9% to 6.6%)で非劣性
 ICU死亡率も有意差なく、皮膚損傷はBipap群で有意に多かった。

f:id:tyabu7973:20150628084120j:plain
(本文より引用)


 high flow nasalの非劣性試験で非劣性が証明されています。ただ、本来の売りである快適性や呼吸困難感はBipapと変わらなかったという結果でもあり、一概に「だからhigh flow nasalで行こう」とは言いにくいデータかもしれませんね。非劣性試験はactive controlと比較して何かしらのメリットがないとダメですよね。でも施設としてもHFNにそろそろ慣れていかなくてはいけないのかもしれません

✓ 術後呼吸不全患者に対するHigh Flow Nasal療法はBipap療法と比較して非劣性だった


 

■NEJM■

エボラウイルス感染後遅発性ぶどう膜炎 
Persistence of Ebola virus in Ocular fluid during convalescene*4

 エボラウイルス感染がようやく収束が近づきつつありますが、今回は支援に出かけてエボラウイルス感染を起こした43歳男性の治療後経過のぶどう膜炎症例です。

 患者は2014年9月にエボラウイルスに罹患し、12日間挿管管理となり、24日間人工透析を回したものの最終的に生存退院されました。退院時、精子内エボラPCRが陽性でしたが、3ヶ月以上性行為禁止とした上で退院となっています。ただ、退院9週間後に、片側の視力低下があり、眼科受診したところぶどう膜炎を来しており、眼内液からエボラウイルスが検出されたのだそうです。

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(本文より引用)

 まだまだ病態が解明されてはいませんが、エボラウイルスヘルペスウイルス属と一緒で神経節などにいついたりするものでしょうか?対応した眼科医もSelf Isolationした模様ですね。Survivorが増えてくると、こういった難しい問題が出てくる可能性もありますね。

✓ エボラウイルス感染後に遅発性ぶどう膜炎を来す事がある


重症患者への非蛋白カロリー制限 
Permissive under feeding or standard enteral feeding in critically ill adults*5

 重症患者への早期経腸栄養は最近の流れではちょっと分が悪い感じです。急性期はカロリーはそれほど多くなくても良いのではないか?という意見が主流になりつつあります。今回もICU患者における早期経腸栄養とその注入カロリーによって臨床アウトカムを検討したstudyです。
 論文のPICOは、

P:ICUに入室48時間以内に経腸栄養を開始した894人
I:必要カロリーの40-60%
C:必要カロリーの70-100%
O:90日死亡
T:RCT
結果:
 平均50歳、BMI 29、Alb値2.8、内科患者 75%、挿管患者 97%
 結果として、介入群の平均カロリーは1036kcal/日、通常群の平均カロリーは1826kcal/日だった。
 プライマリアウトカムは、介入群で121/445人(27.2%)、通常ケア群 127/440人(28.9%)であり、統計学有意差はつかなかった HR 0.94(0.76-1.16)

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(本文より引用)

  早期経腸栄養については更に部が悪い感じです。まあ実際に1800kcalを経管栄養から入れようとしたら大変な事でしょうけどね。それでも1000kcalは投与しています。さて、実際投与しないときの比較はされているのでしょうか。今後の更なる検討に期待です。

✓ 早期経腸栄養のカロリーは通常の必要カロリーの50%程度でも90日死亡は変わらない