栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:虚血性脳卒中患者に対するスタチン投与/髄膜脳炎患者の管理/高血圧患者の腎機能悪化の原因特定

MKSAPまとめ遅くなってしまった・・・
周回遅れ。色々なものが周回遅れ。今週で取り戻すぜー。

虚血性脳卒中患者に対するスタチン投与  Treat a patient with an ischemic stroke with a statin

❶症例 
  46歳男性が、救急外来に4時間前からの右片麻痺と構音障害を主訴に救急外来を受診した。既往歴として高血圧・2型糖尿病・2年前に脳梗塞既往があり完全回復している。彼は6ヶ月前に内服を中止している。
 身体所見では、患者は覚醒してコミュニケーション可能。血圧 170/100mmHg、Pulse 102bpm、RR 16/minだった。頚動脈雑音は聴取せず、神経学的には構音障害と失語を認めた。右視野の低下と右上下肢麻痺を認めた。ベッドサイドの嚥下機能評価は正常だった。

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(本文より引用)
 非造影の頭部CTでは、左島皮質の島回が消失。MRAでは重度の頭蓋外頚動脈狭窄を認めた。心電図は正常だった。

 この患者の最も適切な治療はどれか?

 脳梗塞患者
 本患者は、アトルバスタチンを投与すべき。病変部位に関連した頸動脈狭窄を認めており、他の血管リスクもあることから、アテローム血栓脳梗塞が疑われる。脳梗塞患者でLDL>100mg/dLの患者は全て、高用量のスタチン投与を投与することで脳卒中再発と心筋梗塞を予防する

❸治療選択肢
rt-PA製剤:本患者は、rt-PA製剤の適応である4.5時間以内に来院しているが、脳梗塞既往と糖尿病があり適応にはならない。(訳注:日本とrt-PAの適応・禁忌がやや異なるのかもしれません。)
降圧剤:rt-PA適応にならない患者では、急性期の血圧コントロールは臓器血流障害が無い場合には、220/120mmHg以下にコントロールすべきである。よって、本患者での降圧薬使用は不適切である。
ワーファリン本患者では心房細動既往もなくワーファリンは不適切である。大血管の動脈硬化を認めており、抗血小板薬に対する抗凝固薬の優位性はWarfarin-Aspirin Recurrent Stroke Study (WARSS)でも示されていない

Key Point
✓ 脳卒中患者でLDLコレステロール 100mg/dLの場合には、スタチンを投与することは再発性虚血性脳卒中心筋梗塞を予防する。

Furie KL, Kasner SE, Adams RJ, et al; American Heart Association Stroke Council, Council on Cardiovascular Nursing, Council on Clinical Cardiology, and Interdisciplinary Council on Quality of Care and Outcomes Research. Guidelines for the prevention of stroke in patients with stroke or transient ischemic attack: a guideline for healthcare professionals from the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2011;42(1):227-276. PMID: 20966421

 

 

髄膜脳炎患者の管理 Manage a patient with meningoencephalitis

❶症例
  57歳女性が、2日前からの発熱・混乱で緊急入院となった。既往歴は高血圧でメトプロロールを内服している。
 身体所見では、体温 39.0℃で他のバイタルは正常。患者は覚醒しているものの、無気力で回答は一問一答、人物は分かる程度。軽度の項部硬直があり、それ以外に異常所見を認めなかった。
 髄液検査が施行され、初圧は21mmH2O、髄液細胞数は147/μLでリンパ球77%。CSFの糖・蛋白は正常だった。頭部MRIモ異常なし。
 empiricalなアシクロビル治療が10mg/kg8時間毎静注で開始された。入院3日目には解熱し、意識状態も正常化した。入院時の髄液ヘルペスPCRは陰性だった。

 この患者のアシクロビル治療に対して最も適切な管理はどれか?

 ヘルペス脳炎
  本患者は、単純ヘルペス脳炎の可能性が低いため、経静脈的アシクロビル投与は中止すべきである。本患者は、24時間以上持続する意識の変容と発熱・痙攣・ 髄液細胞数増多・神経画像所見の異常などによって定義される髄膜脳炎を来していると考えられる。単純ヘルペス脳炎は、米国では最も一般的な脳炎の起因微生物であり、数少ない治療薬のある脳炎起因微生物。古典的には、両側の側頭葉に限局的に炎症を来すが、非典型的な症状報告もしばしば認められる。治療ガイドラインは、脳炎患者でHSV結果を待っている場合にはempiricalなアシクロビル投与をすべきと推奨している。髄液中の単純ヘルペスPCRの結果は 感度95%、特異度98%と良好な検査であり、検査前確率が低い症例で陰性が出た場合にはアシクロビルを中止することは適切である。

 ❸他の治療選択肢は?
アシクロビル・バラシクロビル内服:ACV・VCVの内服はCSF中の治療域には達しにくいため、単純ヘルペス脳炎と診断がついた場合には用いるべきではない。
HSV-PCR偽陰性偽陰性の原因になるのは、感染の病初期の場合には陰性になる事がある。また、ヘルペス脳炎では約90%の患者が何かしらの頭部画像所見の異常を来すはずである。例えば、MRIで側頭葉の炎症所見が認められたりする場合には、アシクロビルを継続し2-4日後に再度髄液検査を確認すべきである。
HSV-PCRの再検査:本患者では、PCR陰性でなおかつMRIも正常であることから、効果的に単純ヘルペス脳炎の可能性を除外可能であり、髄液再穿刺、HSV-PCR再検は不要である。
ACV継続:もしPCRが陽性だった場合には、単純ヘルペス脳炎の診断となり、経静脈的アシクロビルを14-21日は継続すべきである。

Key Point
✓ 単純ヘルペス脳炎の検査前確率が低い患者では、empiricalなアシクロビル治療は、髄液のヘルペスPCR陰性を確認すれば中止しても良いかもしれない。

Tunkel AR, Glaser CA, Bloch KC, et al; Infectious Diseases Society of America. The management of encephalitis: clinical practice guidelines by the Infectious Diseases Society of America. Clin Infect Dis. 2008;47(3):303-327. PMID: 18582201

 

高血圧患者の腎機能悪化の原因特定 Identify the cause of kidney function decline in a patient with hypertension

❶症例

  61歳男性が、3年前から高血圧に罹患。朝には自覚しないが日中通して徐々に明らかになる下腿浮腫を認めた。倦怠感とこの3年間でわずかな体重増加(+4.5kg)があった。内服薬は、ヒドロクロロチアジド、ロサルタン、アムロジピン
  身体所見では、BP 128-134/70mmHgでこの3年間変化なし。他のバイタルサインは正常。BMIは28だった。腹部血管雑音はなく、末梢の動脈触知は良好。下腿浮腫は両側でごくわずかだった。

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(本文より引用)
 この患者の血清Cr値上昇の原因として最も考えられるのはどれか?

 ❷ACEi・ARBによる腎障害
 本患者の血清Cr値の上昇は、高血圧に対して使用したARB内服による影響が最も考えられる。治療開始時に腎機能障害がある場合にはその影響が強く出る可能性がある。ARB開始後、何人かの患者さんに突如血清Cr値が上昇する方がいる。この変化はACE阻害薬でも同様である。作用機序によって考えると、これらの薬剤は糸球体濾過速度(GFR)を低下させ、アンギオテンシンを増加させて腎潅流圧を保っている様な高血圧性腎機能障害、慢性腎不全、心不全、腎血管疾患などの基礎疾患がある方は特に血清Crが上昇しやすい
 認識されていない腎機能障害が治療開始前に存在すると、血清Cr値の上昇がより目立つことがある。薬剤は腎の基礎疾患の病態を全てカバーするわけではないため、闇雲に処方すべきではない。ただし、この薬剤投与によって腎不全進行を抑制する効果もあることは分かっており、腎機能の安定化を確認しつつ、継続することが重要である。

 ❸他の検査
 糸球体腎炎蛋白尿や他の尿沈渣の異常が無い事からは、原発性糸球体疾患は考えにくく、高血圧性腎硬化症に矛盾しない。
 血圧コントロールが不適切本患者では現在の血圧コントロールは適切で、血清クレアチニンが3年かけて上昇してきた原因が血圧コントロール不十分ではないだろう。
 腎血管性病変本患者は動脈硬化性疾患を来す様なリスク因子はあるものの、病歴や身体所見で腎血管性の腎不全を疑うような所見はなく、腎不全の原因にはなりにくい。

Key Point
✓ ACEiやARBは血清Cr値を上昇させるかもしれず、それによって基礎疾患としての腎機能低下が明らかになるかもしれない。

Taylor AA, Siragy H, Nesbitt S. Angiotensin receptor blockers: pharmacology, efficacy, and safety. J Clin Hypertens (Greenwich). 2011;13(9):677-686. PMID: 21896150

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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