栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:Mollaret髄膜炎/椎骨脳底動脈解離/日本住血吸虫症

今週のカンファまとめです〜
最近思うのが、金太郎飴化してるなあと。
画一化とは違って、スタッフの共通基盤がしっかりしてきたなという認識です。
ちょっと嬉しい。

Mollaret髄膜炎 Mollaret meningitis

 Mollaret髄膜炎の話題が出ていたのでおさらい。Mollaretは人の名前です。Pierre Mollaretさんは有名な神経内科です。1987年に亡くなられております。

https://www.pasteur.fr/infosci/archives/im/mlp.jpg

https://www.pasteur.fr/infosci/archives/im/mlp.jpgより引用)

 Mollaretさんは、優秀な観察者だった様で(多くの臨床医がまさにこれなのですが)歯状核とオリーブ核が口蓋ミオクローヌスに関連していることを報告したのだそうです。更に、1944年に無菌性髄膜炎を繰り返す症例があり、まとめて報告しています。これらの症例の一部がHSV-2感染だったことが判明し、一部の文献では、HSV-2による反復性髄膜炎をMollaret髄膜炎と呼ぶ様な記載がありますが、歴史的に考えるとそうは言い切れない様です。

 当初、Mollaretさんは、髄液中に、豆状の単核大細胞いわゆる”モラレ細胞"がみられるのでは?と報告しています。ただ、現在この細胞の有用性ははっきりしていません。まあ、今となっては反復性のもの=HSV-2の流れは仕方ないのかもしれませんが、recurrent meningitisとすると、安易にHSV-2に飛びつかずに他の鑑別も考えたいところ。更には陰部ヘルペスの陽性率は24%だったみたいな報告もあるみたいです。

 Mollaret髄膜炎の原因ウイルスは、HSV(1でも2でも)だけでなく、エコー・コクサッキー・EBなど多彩なウイルスが報告されています。また、参考までにメルクマニュアルの"recurrent meningitis"の項目から、鑑別を挙げると、
①細菌
 最も頻度が高く、修復されていない中枢神経損傷や先天性欠損によるものが多く、脳底部や副鼻腔、中耳、乳突洞などが侵入門戸になる。それ以外では、遺伝性の免疫異常も原因となり、肺炎球菌や髄膜炎菌の感染を繰り返す場合には要注意。
②ウイルス
 HSV-2が有名。性器ヘルペスの有無を確認する。通常3回以上の髄膜炎既往がある。ACVによって完全回復する。
③その他の原因
 薬剤性(NSAIDs等)、腫瘍、Bechet病、SLE、原田病などを考慮。

 ✓ Mollaret髄膜炎は広義にはHSV-2による反復性髄膜炎だが、性器ヘルペスの陽性率は低い。適切な鑑別疾患を挙げる必要あり。

 

椎骨脳底動脈解離 VA dissection

 椎骨脳底動脈解離はいつも結構悩ましい症例の1つです。椎骨脳底動脈病変も頭蓋内と頭蓋外に分類する模様ですね。頭蓋内病変の解離についてまとめてみます。

 症状としては突然の強い後頚部痛で疑うのがセオリー。椎骨脳底動脈に虚血症状を伴う事が最も多く灌流領域である中脳や小脳の脳梗塞TIA症状を来す事で疑います。すなわち、dizziness、vertigo、共同偏視、平衡障害などです。

 鑑別として高齢者では巨細胞性血管炎が遠位の血管を巻き込む部位として椎骨脳底動脈病変合併が報告されています。

 最近、画像診断の進歩に伴い、BPAS(Basi-parallel anatomical scanning)という撮影方法が行われるようになりました。長畑先生という先生が提唱しており、原著論文はこちらです。要は冠状断スライスで頭蓋内の椎骨脳底動脈をほぼ全長にわたって観察可能な撮影方法というわけです。BPASは血管外腔を描出できます。椎骨脳底動脈はもともと低形成であることも多く、描出不良が病的なのか否かが分かりにくい事があります。

 この時に、このBPAS像+通常のMRAを比較することで、BPASではきちんと描出されているが、MRAでは描出されていないというGapを用いて、解離もしくは血栓形成がある!と判断することが出来ます。おー、ちょっと武器を手に入れた感じ。

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http://mrifan.net/?p=268より引用)

 

 ✓ 椎骨脳底動脈解離の診断補助としてMRIのBPASが使用できる。

 

 

日本住血吸虫症 Japanese Schistosomiasis

 教科書では知っていましたが・・・という未知との遭遇。そして、調べてみるとWikipediaの充実っぷり!すごいですね。とにかく歴史がすごい!勉強になります。
 
 さて、地域としては有名なのは甲府盆地。それ以外には九州の筑後川流域、広島県片山地方、静岡県富士川流域など流行地があったことが知られています。ということで、まず病歴で出生地や成育地をきちんと聞くことです。やはり病歴。
 中間宿主は宮入貝で、発見したのは、宮入慶之助さんだそうです。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E6%96%B9%E7%97%85_%28%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BD%8F%E8%A1%80%E5%90%B8%E8%99%AB%E7%97%87%29#.E3.83.9F.E3.83.A4.E3.82.A4.E3.83.AA.E3.82.AC.E3.82.A4.EF.BC.88.E5.AE.AE.E5.85.A5.E8.B2.9D.EF.BC.89.E3.81.AE.E7.99.BA.E8.A6.8Bより引用)

今日は人紹介シリーズですね。現在は宮入貝はほぼ撲滅され、新規発症患者はいない模様です。

 日本住血吸虫感染を起こすと、4週間以上経過してから急性期症状である発熱・蕁麻疹・好酸球増多・下痢・肝脾腫・咳嗽・喘鳴などが生じ、これを片山熱と呼んでいます。慢性期になると、腸管や肝臓に虫卵が沈着し結節が生じることが知られており、腸管症状は無症状から、腹痛・下痢・粘血便・腸閉塞など多彩です。また、肝臓症状は肝線維化かを引き起こし、特異的な画像所見を呈することが知られています。

https://www.hitachi-aloka.co.jp/seminar/muse2/ch10/sub6/images/54_OFF.jpg
https://www.hitachi-aloka.co.jp/seminar/muse2/ch10/sub6/images/54_OFF.jpgより引用)

肝脾腫や門脈圧亢進、腹水などを来す事はありますが、肝硬変と言って良いかどうかは微妙なところです。大腸癌や肝臓癌との関連は以前はあるとのことでしたが最近は否定的な見解も増えています。更には、脳内血管の虫卵塞栓を起こすと脳腫瘍類似の症状を起こしたりするのだそうです。怖いなあ・・・

 診断は、便での虫卵検出。それ以外だと直腸粘膜の生検も有用。血清反応では虫卵周囲沈降反応(COPT)やEIA法があるものの、①過去の感染との区別ができない、②住血吸種の交叉反応、③感染後3ヶ月経過しないと陽性にならないなどの問題点があります。

 治療はプラジカンテル 40mg/kg単回投与でほぼ治癒。

✓ 日本住血吸虫症も診断はまずは病歴から。特徴的な画像所見は押さえておこう