栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文:患者やスタッフ教育による転倒予防

患者やスタッフ教育による転倒予防
Fall rates in hospital rehabilitation units after individualised patient and staff education programmes: a pragmatic, stepped-wedge, cluster-randomised controlled trial*1

Lancet.2015;385:2592-99

【背景】
 転倒は病院で報告される最も頻度の多い有害事象である。訓練され適切なフィードバックを受けているスタッフがサポートする患者個人への予防教育の効果を病棟レベルで評価した。

【方法】
 オーストラリアの総合病院のリハビリテーション部門8カ所が、50週間の期間中に、Stepped wedgeという形でクラスターRCTに参加した。リハビリ部門は、コンピュータを用いてランダムシークエンスを用いて介入群とコントロール群に無作為に割り付けられた。組み入れ基準としては、個人レベルの教育効果を受けやすいようにMMSE>23/30点以上のリハビリ部門入院患者とした。介入群は、患者に対しては通常ケアに加えて訓練された医療プロフェッショナルによる行動変容の個別教育を行った。また、医療スタッフに対しては、転倒防止戦略に関連する治療ゴール・病棟環境に関する情報提供・知覚障害についての情報提供を行った。

 プライマリアウトカムは、患者1000人日あたりの転倒頻度と転倒患者割合とした。ITT解析が行われた。オーストラリア・ニュージーランドの臨床研究レジストリーに登録されている。
 
【結果】
 2013年1月13日〜12月27日まで研究が行われ、3606人の患者が8つのリハビリ部門に入院した。1983人がコントロール時期、1623人が介入時期だった。転倒の頻度は、介入群で196回(7.8/1000人日)、コントロール群で380回(13.78/1000人日) 有意に転倒患者割合が少なかった(調整RR 0.60:95%CI 0.42-0.94)。有害な転倒の割合は、介入群で66回(2.63/1000人日)、コントロール群で131回(4.75/1000人日)でRR 0.65(0.42-0.88)と有意に減少した。実際の転倒患者数は、介入群 136人(8.38%)、コントロール群 248人(12.51%)で調整OR 0.55(0.38-0.81)だった。入院期間は有意差がつかず、介入群11日、コントロール群10日だった。
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(本文より引用)
 
【結論】
 個別化した患者教育と研修・フィードバックを組み合わせたスタッフ教育プログラムは、通常ケアと比較してリハビリ病棟高齢者の転倒率や有害な転倒を減らした。

【批判的吟味】
・今度からじっくりの方のPICOもまとめることにします。論文のPICOは、
 P:8つのリハビリユニットに入院した3606人
 I:教育群(患者教育+スタッフ教育)
 C:通常ケア
 O:転倒頻度/1000人年 + 転倒割合
 T:RCT/ITT解析
Stepped wedgeが分かりにくいのですが、10週毎に介入群が段階的に増えていく仕組みでした。この辺はいまいち分かるような分からない様な。editorialでもこの方法のstudyの問題点について触れていました。biasが入りやすく、本来は連続的にcross-sectionalに評価すべきだとしていました。
・平均年齢81歳、内科患者30%、整形外科患者21%。
リハビリ病院で平均入院期間10日って・・・
・今回の介入は理学療法士主導の模様。

【個人的な意見】
 転倒に関する患者教育って難しいな・・・というのがこれまでの理解でした。究極言うと「「転ぶな」って言われても転ぶわ。」という感じ。ただ、今回は認知症の無い患者への教育プログラムとスタッフへの適切な対応を病棟レベルで行う事は効果があると言えるという結果でした。


 さあ、自施設でできることは何か?少なくとも抑制したり、鎮静薬で眠らせたりすることではないはずですよね。挑戦、挑戦。

✓ リハビリ部門での患者教育・スタッフ教育は転倒率・有害な転倒を減らす