栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet 外傷性疼痛へのPCA/非外傷整疼痛へのPCA/重症GERDへの最適治療/予防可能なAKI死亡ゼロを目指して/新しい心臓保存法

BMJ

外傷性疼痛へのPCA 
PAin SoluTions In the Emergency Setting(PASTIES)-patient controlled analgesia versus routine care in emergency department patients with pain from traumatic injuries: randomised trial*1

 今週のBMJには疼痛に対するPCAポンプ使用のセルフコントロールに関するstudyが2つ出ていました。最初は外傷性疼痛に対するstudyから。まあ某所ではオピオイドの乱用が問題になっていますが。
 論文のPICOは

P:18-75歳の外傷性疼痛患者200人
  オピオイド点滴必要で12時間以上いそうな人のみ
I:PCA使用群
C:通常ケア群
O:12時間のVAS平均(1時間おきチェック)
T:RCT/ITT解析ではない
結果:
 平均43歳、VAS 7、多発外傷 30%、下肢外傷28%、胸部外傷10%
 プライマリアウトカムのVASはPCA群 44.0点、通常ケア群 47.2点で絶対差 2.7点で有意差なし
 塩酸モルヒネ使用量は、PCA群 44.3mg、通常ケア群 27.2mgと有意に増加
 患者満足率 PCA群 86%、通常ケア群 76%と有意差を認めなかった

 患者コントロールの疼痛コントロールは容量が増えてしまう上に実際の効果は良くならないという結果でした。
 それにしても、外傷で来院して12時間でモルヒネ 30mg弱使うのかあ・・・こちらは効果出ず。で、もう一つ行きます。

✓ 外傷性疼痛患者に対するPCAを用いた疼痛コントロールは通常ケアと変わらなかった


非外傷性疼痛へのPCA 
PAin SoluTions In the Emergency Setting(PASTIES)-patient controlled analgesia versus routine care in emergency department patients with non-traumatic abdominal pain: randomised trial*2

 さて、疼痛コントロールstudy第二弾。今回別な意味でちょっとびっくりしたのは、前者の外傷性疼痛のstudyとこのstudyは、論文題名もintroductionもほとんどコピペみたいな感じ。こんなのもありなんですねえ。
 今回の論文のPICOは、

P:18-75歳の非外傷性腹痛患者200人
  慢性痛やオピオイド使用者は除外。モルヒネ点滴必要かつ12時間以上は救急外来にいそうな参加希望者
I:PCA使用群
C:通常ケア群(ナースが管理)
O:12時間のVAS平均(1時間おきチェック)
T:RCT/ITT解析ではない
結果:
 平均41歳 VAS 8点、消化管疾患 15%、胆嚢 14%、尿路結石 14%、原因不明 14%
 プライマリアウトカムのVASはPCA群 35.3点、通常ケア群 47.3点で絶対差 6.3点(0.7-11.9)で有意差あり
 塩酸モルヒネ使用量は、PCA群 36.1mg、通常ケア群 23.6mgと有意に増加
 嘔気は、PCA群 65%、通常ケア群 39%と有意にPCA群で多い。
 患者満足度は、PCA群は83%、通常ケア群66%だった。

 非外傷性の腹痛については、PCA群の方が効果が高いと言う結果でした。real worldでは通常ケア群もこんなに1時間毎に評価して鎮痛しないので、実際の効果はもっと大きいはず!という考察でした。それにしても、外傷性と非外傷性で結構違いますね。これは内臓痛と体性痛の違いなのではないか?と考察されていました。

✓ 非外傷性腹痛患者に対するPCAを用いた疼痛コントロールは通常ケアより有効だった


重症GERDへの最適治療 
What is the most effective treatment for severe gastro-oesophageal reflux disease?*3

 逆流性食道炎の方とは日々接する機会が多いと思いますが、今回はそのレビューです。
■Intro■
 重症GERDの治療は手術かPPIというところです。どちらが費用対効果も含めて効果的かは結論が出ておらず、多くの場合、治療者次第と言うところがあるのが問題点。今回Systematic reviewで検討しています。
■逆流症状■
 4つのRCT(1232人)のコクランレビューでは、手術の方が逆流症状は改善している者の嚥下障害が増えるという結果となっています。治療失敗率を比較すると、3年後 手術10%、PPI 7%、5年後 手術 15%、PPI 8%と手術群は時間が経つと効果が薄れてくることも分かってきています。
■合併症■
 手術 293研究のメタ解析によると手術による周術期合併症は0-4%、術後死亡も1%未満と言われています。
 一方PPI 25研究のメタ解析では、骨折リスク1.3倍、42研究のメタ解析でCDIリスクが1.7倍と言われています。
■食道癌■
 GERDは食道癌リスクになることが有名です。7つのRCTのメタ解析ではPPIプラセボと比較して食道癌発症率を0.3倍にする事が分かってます。一方で、手術 vs PPIは食道癌発症リスクは変わらず。どちらも効果があると言えます。
QOL
 これが結構重要ですが、4つのRCTのメタ解析では異質性があるものの手術の方が良い傾向でした。
■費用対効果■
 一方で、一年で見るとPPIの方が良い結果でしたが、長期follow upすると逆転する可能性があります。
 
 現時点でongoingの研究はないのだとか。症状を取るのは手術の方がわずかに良い可能性でしたが、 周術期の合併症や治療失敗率を考慮すると、第一選択を手術とは言い難いものがあります。現状ではPPIから開始ですが、今後低侵襲手術(内視鏡下等)が出てくると診療が変化する可能性がありますね。

✓ 重症逆流性食道炎に対する治療としてPPIと手術療法がありどちらも一長一短ある

 


■Lancet■

予防可能なAKI死亡ゼロを目指して 
International Society of Nephrology's 0by25 initiative for acute kidney injury(zero preventable deaths by 2025): a human rights case for nephrology*4

 Lancetが国際腎臓学会(ISN)とコラボして2025年までにAKIによる死亡をゼロにしようというキャンペーンです。reviewは28ページに渡り、かなりボリュームはありますがよくまとまっているので一読しても良いかもしれません。
 エッセンスとしては、AKIの定義はKDIGOのヤツを使いましょうとのこと。KDIGOのやつは、
    血清Cr             尿量
Step1:ベースラインの1.5-1.9倍      <0.5ml/kg/hが6時間以上
     or
     ≧0.3mg/dL以上の上昇

Step2:ベースラインの2-2.9倍        <0.5ml/kg/hが12時間以上

Step3:ベースラインの3倍以上       <0.3ml/kg/hが24時間以上
    or                 or
    血清Cr≧4mg/dL         12時間以上無尿
    or
    腎代替療法開始

ってやつですね。

で、AKIを予防する作戦として以下の5Rを提唱しています。すなわち、Risk・Recognition・Response・Renal support・Rehabilitationの5Rです。

f:id:tyabu7973:20150705211453j:plain
(本文より引用)

実はAKIの死亡率って国毎に全く違っていて、途上国はまだまだ死亡率が高いので、その国毎に対策を考えましょう!ってなってます。まあ、興味があれば是非!

✓ AKIによる死亡は予防可能であり、5Rを意識した対策を


新しい心臓保存法 
Ex-vivo perfusion of donor hearts for human heart transplantation(PROCEEDⅡ): a prospective, open-label,multicentre, randomised non-inferiority trial

 心臓移植の際に運搬する方法は冷凍でしたが、何と今回心臓を動かしたまま運ぶ方法が開発されたんだそうです。・・・というかもう以前からやられているんでしょうか?今回前向きのオープンラベルRCTで非劣性試験が米国とヨーロッパを中心に行われました。
 論文のPICOは、

P:18歳以上の心臓移植患者
I:Ex-vivo perfusion(心臓体外循環)群
C:通常の冷凍群
O:30日生存率+グラフト開通率
T:RCT/非劣性試験  Δ=10%
結果:
 130人の心臓移植患者を介入群 67人、コントロール群 63人に割り付けた。30日生存率+グラフト開通率は介入群 94%、通常ケア群 97%で非劣性が証明された。重篤な有害事象は介入群で8例、通常ケア群で9人と同等だった。

f:id:tyabu7973:20150705211705j:plain
(本文より引用)

 すごいなあ、未来を感じます。インディージョーンズで見たドクドク心臓だけが動いているシーンが現実になるのか・・・すごいけどやや怖い。動画がありました。興味のある人はどうぞ。

http://www.thelancet.com/cms/attachment/2033984896/2049760297/mmc2.mp4


✓ 心臓を動かしながら保存する方法は冷凍保存法と同等に利用出来る保存方法