栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

MKSAP:ADEMの診断/蕁麻疹様血管炎の症状認識と適切な診断/スタチン治療の適応疾患

MKSAP今週は巻き返し。
解いた直ぐ後に書けば忘れないぜー。
復習にはならないけど・・・

ADEMの診断  Diagnose acute disseminated encephalomyelitis

❶症例 
  16歳女性が、3日前からの発熱と2日前からの頭痛、右目の視力低下、歩行不安定、混乱を主訴に救急外来を受診した。生来健康で内服薬なし。
  身体所見では、T 38.7℃、BP 95/50mmHg、Pulse 105bpm、RR 18/minだった。神経学的には意識障害と注意障害があり、見当識は名前のみ。3分後の3問想起では1つも想起できなかった。視力は右眼で20/200と低下し、右眼対光反射も消失。四肢の腱反射は亢進し、左上下肢の筋力はMMT 4/5と低下していた。
 髄液所見では、リンパ球数 93/μLで90%がリンパ球、髄液糖 56mg/dL、髄液蛋白 82mg/dLだった。各種検体培養では細菌は陰性で、単純ヘルペスPCRも陰性だった。
 MRI T2 FLAIRでは、両側脳室周囲と皮質下に多発の高信号域を認めた。ガドリニウム造影では右視神経や脳室周囲・皮質下部分に取り込みがあった。

 この患者の最も適切な診断はどれか?

 ADEM
 本患者の病歴・臨床所見・検査所見・MRI結果は、ADEMに合致する。ADEMは炎症性脱髄疾患で典型的には小児期や若年性人に発症し、感染後現象として認識される。感染に直接関連した報告は未だ認められていない。本疾患は、典型的には亜急性経過で同時に中枢神経系の複数の部位に脱髄を起こすとことによって、複数の症状を来す。
 本患者で見られる頭痛・発熱・脳炎はADEMの症状として合致する一方で、多発性硬化症の症状には合致しない。検査所見では脳脊髄液検査で著明なリンパ球増多を来しており、頭部MRIでは多発する脱髄病変を認めている。ADEMは、典型的には同時発症し自然寛解する疾患で再発はほとんどない。

❸鑑別診断
細菌性髄膜炎:症状・症候・脳脊髄液所見・細菌培養陰性は細菌性髄膜炎としては矛盾する結果である。

ヘルペス脳炎:ヘルペス脳炎は、発熱・頭痛・脳症を来すが、単純ヘルペス・ウイルスは視神経は侵さず、側頭葉に病変を来す。更には、本患者では脳脊髄液のヘルペスPCRは陰性である。

多発性硬化症(MS):多発性硬化症も中枢神経の脱髄を来すが、急性増悪は発熱・脳症・髄液中のリンパ球増多は来さない。ADEMとMSの鑑別は診断学的に非常に難渋する。

視神経脊髄炎(NMO):典型的には、視神経や脊髄に病変を来すがテント上の脱髄は来さない。また本患者に見られるような発熱・脳症は認められない。

Key Point
✓ ADEMは小児や若年成人によく見られる亜急性の炎症性脱髄性疾患で、中枢神経の同時多発病変が特徴的である。

Dale RC, de Sousa C, Chong WK, Cox TC, Harding B, Neville BG. Acute disseminated encephalomyelitis, multiphasic disseminated encephalomyelitis and multiple sclerosis in children. Brain. 2000;123(Pt 12):2407-2422. PMID: 11099444

 

 

蕁麻疹様血管炎の症状認識と適切な診断 Recognize a clinical presentation of urticarial vasculitis and perform the appropiate diagnostic evaluation

❶症例
  27歳女性が、4週間前からの膨疹を主訴に外来を受診。膨疹部は掻痒感は無いが灼熱感がある。それぞれの病変は48時間程度持続し、ゆっくりと改善し瘢痕を残す。現在内服中の薬剤は、ジフェンヒドラミン・ヒドロキシジン・セチリジン・経口ピル。患者の母親がSLEである。
 身体所見では、バイタルは正常で、浮腫硬結性のプラークと膨疹が散見される。被覆部以外にも病変は存在するが、顔面病変や粘膜症状はなく、関節腫張や疼痛もない。

 この患者の最も適切な管理はどれか?

 ❷蕁麻疹様血管炎
  本患者は非典型的な蕁麻疹であり、診断の鍵になるのは、皮膚生検で血管炎の有無を確認することである。それぞれの病変部位は、数時間以上持続するが掻痒感はない。灼熱感や刺す様な感覚、有痛性の膨疹は通常の蕁麻疹では一般的ではない。24時間以上病変が持続し、灼熱感を伴って改善する場合には、蕁麻疹様血管炎を考慮すべきである。蕁麻疹様血管炎の50%は基礎疾患としてSLEの様な自己免疫性疾患を合併していると言われている。

 ❸他の検査は?
薬剤服用歴:多くの薬剤が蕁麻疹の引き金になる。経口ピルは慢性じんま疹を含む蕁麻疹性びらんを引き起こし、プロゲステロン暴露が原因と言われている。症状は繰り返し引き起こされる。蕁麻疹様血管炎は薬剤によって起こる事は稀で特に経口ピルが原因になる事は少ない。

RAST:食物や環境のトリガーがある場合には、RAST検査の利益が得られるかもしれない。本患者では、蕁麻疹としては非典型で、むしろ蕁麻疹様血管炎を考慮しなくてはいけない。RASTは蕁麻疹様血管炎の診断には役に立たない

TSH:甲状腺機能は、6週間以上続く典型的な慢性蕁麻疹患者の評価の際に測定されることがある。本患者では蕁麻疹自体が非典型的で、病歴や身体所見からも甲状腺機能異常を疑う所見は無いため、甲状腺検査は不要である。

Key Point
✓ 24時間以上持続し瘢痕を残して改善する皮膚病変を見たら、生検を行い蕁麻疹様血管炎を評価すべきである。

Peroni A, Colato C, Schena D, Girolomoni G. Urticarial lesions: if not urticaria, what else? The differential diagnosis of urticaria: part I. Cutaneous diseases. J Am Acad Dermatol. 2010;62(4):541-555. PMID: 20227576

 

スタチン治療の適応疾患 Treat a patient who has diabetes mellitus,hyperlipidemia,and nonalcoholic fatty liver disease with a statin

❶症例

  56歳男性が、定期外来通院で受診。6ヶ月前に2型糖尿病の診断を受け、低脂肪・高線維・高炭水化物食を摂取し、夜間に20分程度ウォーキングを行っている。喫煙・アルコールは摂取しない。元々はメトホルミンを飲んでいたが、下痢が続くため服用を中止していた。現在の内服薬は、グリブリド・ラミプリルだった。
  身体所見では、T 36.8℃、BP 129/76mmHg、Pulse 76bpm、RR 15/min、BMIは22だった。他の身体所見は正常だった。

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(本文より引用)
 夜間の中間型インスリン投与が開始された。

 この患者の脂質異常症に対する最も適切な治療はどれか?

 ❷NAFLD
 眠前の中間型インスリンに追加して、本患者で投与追加を検討すべきはスタチンである。本患者にはコントロール不良の2型糖尿病があり、SU剤に加えて中間型インスリンを開始したことは、血糖とHbA1cを改善するために妥当な選択である。本患者の肝酵素は中等度のトランスアミナーゼ上昇があるものの特別な肝疾患の既往などはない。このことから本患者にはNAFLDが最も疑われる。糖尿病と著明な脂質異常を考慮すれば、スタチン投与は最も利益のある選択である。 NAFLD患者では、肝疾患が無い人と比較しても特別スタチンの副作用リスクが高い訳ではない
 肝酵素が上限の3倍以上に上昇している患者437人に対するアトルバスタチン投与は、3年follow up後に心血管イベントの減少(スタチン:10% vs 無治療:30%)をもたらすと共に、した

 ❸他の検査
 フィブラート系フィブラートは、中性脂肪を減らすのに役立つが、本患者の管理対象であるLDLコレステロール値に影響は少ない。

 スタチンスタチンの開始は、血糖コントロールや肝機能が正常化するのを待つ必要は無い。

 ニコチン酸ニコチン酸は、LDLコレステロールを下げ、HDLを上昇させる効果はある。ただし副作用も多く使用は制限される。ニコチン酸は、血糖上昇や重篤な肝細胞障害を来す事がある。そのため本患者の様なNAFLD等肝障害がある場合には投薬禁忌となる。

Key Point
✓ スタチンは糖尿病、脂質異常、NAFLD患者での治療選択肢の1つである。

Athyros VG, Tziomalos K, Gossios TD, et al; GREACE Study Collaborative Group. Safety and efficacy of long-term statin treatment for cardiovascular events in patients with coronary heart disease and abnormal liver tests in the Greek Atorvastatin and Coronary Heart Disease Evaluation (GREACE) Study: a post-hoc analysis. Lancet. 2010;376(9756):1916-1922. PMID: 21109302

 

MKSAP 16: Medical Knowledge Self-Assessment Program

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MKSAP for Students 5

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