栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

今週のカンファ:低カリウム血症と糖入り点滴/植え込み型心電図モニター/甲状腺機能低下症と心不全

今週のカンファまとめです〜
ただいま名古屋に向けて激走中。新幹線が。

カリウム血症と糖入り点滴 Hypokalaemia and glucose infusion

 カリウム血症の補正の際に糖入り点滴が入っている際には要注意!という話題。例えばソリ○T3などの3号液にはKが含まれているので、K補正として投与している場合があるかもしれません。ただ、それらの輸液には糖が含まれているので、知らぬうちにGI療法的にインスリン分泌から細胞内へのK取り込みを促して低カリウム血症を助長する可能性があります。

 こういうのって原則論的なもので知識としては”Background question”に包括されるのだと思いますが、意外や意外、スパッと抜けていることがありますよね。もちろん、現実的には、糖なしの点滴で組もうとすると生理食塩水ベースになる事が多くて、浸透圧高くて使いにくいので、現実的には注意しながら使用するというのが現場には役立つ知識かもしれません。そもそもこの手の混ぜちゃいけない!ってやつは血中に入ったら混ざるやん!って突っ込みに対してあまり上手く応えられないですけどね・・・
 
 補正してもなかなか上がらないなあ・・・という時はちょっと思い出す的な。もちろん、経口摂取が可能で緊急性が低ければ経口補正が第一選択なのは言うまでもありません。

 ✓ 低カリウム血症補正時に糖入り輸液を用いると低カリウムを助長する可能性がある。

 

植え込み型心電図モニター Implantable loop recorder

http://www.sanei-cardio.co.jp/obj/business_reveal.jpg
http://www.sanei-cardio.co.jp/obj/business_reveal.jpgより引用)

 このUSBみたいなヤツが植え込み型心電図モニターです。とりあえず添付文書があったので、読んでみました。

本品は通常胸部の皮下に植え込むリードレス機器である。機器本体の2つの電極から、患者の皮下ECGを継続してモニターする。機器のメモリには、患者が機器を起動した場合及び自動的に不整脈が検出された場合のECG記録を保存することができる


と書いてありました。実はメドトロニック社と日本光電社のものがある模様。
 適応は原因不明の失神患者さんで、不整脈検出に役立ちます。もちろん、失神が病歴と身体所見から迫るモノであることは、我らがK先生による日々の薫陶により身になりつつある我々ですが、時折文明の利器に触れてみたくなるのも人情ですよね。(違うか・・・)約3年間は使用可能で、条件はありますが原則MRIも使用可能です。

 植え込み型心電図モニターの有用性は複数の研究で報告されていますが、有名なのは、Circulationの研究です。


Randomized Assessment of Syncope TrialConventional Diagnostic Testing Versus a Prolonged Monitoring Strategy
Circulation. 2001; 104: 46-51
P:原因不明の失神患者 60名、平均年齢66歳
I:1年間の植え込み型心電図モニター群
C:通常心電図モニター・tilt試験・心臓超音波の通常精査群
O:失神の診断
T:RCT/原因不明のままならcrossover可
結果:
 植え込み群 14/27で診断確定。通常群 6/30で診断確定。
 有意に植え込み群で診断確定が可能だった。


脳梗塞患者への適応は自分も過去に取り上げています。

tyabu7973.hatenablog.com


もちろん、費用の問題、植え込みへの抵抗、異物感染の問題、不整脈のoverdiagnosisなど、課題はたくさんありますが、何度も失神して困っているが診断がついていない方へ検討しても良いのかもしれません。
 

 ✓ 植え込み型心電図モニターは原因不明の失神患者への使用で不整脈検出率が上がる。

 

 

甲状腺機能低下症と心不全 Hypothyroidism and heart failure

 心不全を疑う患者さんでは、甲状腺機能を確認することは比較的多い気がします。甲状腺機能亢進症と心不全の関係は良く報告されていますが、甲状腺機能低下症とはどうでしょうか?実は甲状腺機能低下症と心不全は疫学的な関連性は結構微妙です。簡単にDynamedから抜粋してみますと、

心臓合併症 Cardiac manifestations:
■心拡大
■収縮能低下による心拍出量低下(ただし心不全は稀)
■心嚢液
■徐脈
■房室ブロック
■粘液水腫
■無症候性心室中隔肥厚
■大動脈弁硬化と高血圧
■左室収縮能低下J Endocrinol Invest 2011 Oct;34(9):e281

 という感じ。
 一見すると、心不全来そうですが、Uptodateにも

 ”Reduced cardiac output probablyy contributes to decreased exercise capacity and shortness of breath during exercise, two common complaints in patients with hypothyroidism.
 However, symptoms and signs of congestive heart failure are usually absent in patients who have no other cardiac disease.”

 と記載されています。ただ、心不全患者に甲状腺機能低下症を合併すると悪化のリスクになるんだとか。悩ましいところですが、落としどころとしては、心不全のeiology検索の際に、hypothyroidismをど真ん中に持って来てはいけない・・・というところでしょうか。


✓ 甲状腺機能低下症では心収縮力低下と拍出量低下・徐脈などを来すがうっ血性心不全を来すのは稀。