栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:BMJ & Lancet COPDの誤診/1型糖尿病患者へのインスリンポンプ療法/糖尿病研究の常連著者と研究頻度・特徴/白斑レビュー/急性期脳卒中超急性期リハビリの効果

BMJ■ 

COPDの誤診 
Chronic obstructive pulmonary disease: missed diagnosis versus misdiagnosis*1

 COPDは世界的にも非常に多い疾患で、2004年の正解の死亡統計では第4位と言われています。そのうち約75%が喫煙が原因と言われ、診断は非可逆的気流制限を元に診断されています。1990年代にGOLDが出来て、その後2001年にガイドラインを発表してから世界的に疾患概念が拡がっています。その際に用いられた診断基準は、分かりやすい様に「SABA吸入後のFEV/FVC<0.7」でした。ただこの基準では、年齢や性別と共にFEV・FVCの変化率に差があるため、高齢者では、年齢的な変化も加味されてしまい、COPDのpverdiagnosisに繋がるのではないか?と指摘されています。

 2006年には、上記overdiagnosisの観点から、Lower Limits of Normal(LLN)を考慮するようにというコメントも多数寄せられましたが、ガイドラインそのものは変更されず。最近だと2010年に再度改訂されたGOLDでも変更されなかったため、150人のexpertがこのままだと不適切だと指摘しています。この問題は過去にこのブログでも取り上げたことがあり、高齢者のoverdiagnosisに加えて若年者では肺機能を過大評価してしまうリスクがあると言われています。

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(本文より引用)


 たとえば、40-95歳の英国人に当てはめると、GOLDの現行基準を用いると22%がCOPDと診断されますが、LLNを用いると13%のみであり、かなり多く見積もってしまうことになります。overdiagnosisの問題点は様々ありますが、例えば、第一選択であるLAMAを使用すると、心血管イベントが上昇したり、死亡率が増えたりする危険性もあります。著者らは、まずはLLNに変更するか、最低限LLNと現行のGOLDを比較検証すべきであるとコメントしています。

✓ COPDの診断基準には、年齢・性別を考慮したLLNを導入した基準に変更すべき
 

1型糖尿病患者へのインスリンポンプ療法 
Insulin pump therapy, multiple daily injections, and cardiovascular mortality in 18168 people with type 1 diabetes: observational study*2

 1型糖尿病患者さんを診る機会は少ないのですが、今回Sweden発のnational cohortが発表されており、非常に興味深かったためご紹介致します。インスリンポンプの有益性を検証したstudyが徐々に出てきています。
 論文のPICOは

P:1型糖尿病患者 18168人
I:インスリンポンプ群
C:複数回インスリン注射群
O:死亡/致死的心血管イベント/非致死的心血管イベント
T:後ろ向き観察研究
結果:
 ベースラインは、平均年齢40歳、発症時期13-16歳、HbA1c 8.0%、平均follow up6.8年
 プライマリアウトカムは、
・致死的・非致死的冠動脈イベント HR 0.81(0.66-1.01)
・致死的・非致死的心血管イベント HR 0.88(0.73-1.06)
・致死的心血管イベント HR 0.58(0.43-0.85)
・全死亡 HR 0.73(0.58-0.92)
 と有意に死亡関連のイベントが減少した。

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(本文より引用)

 結構結果が出ましたねえ。今回の問題点は、後ろ向きコホートであること、1型糖尿病の定義がカルテからなので、疫学上、①治療にインスリンを使用、②30歳前発症を持って診断しているため、自己抗体の有無などは評価されていないこと、イベントもカルテのICDコードから抽出だったことなどが挙げられます。それにしても、結果はかなりの差ですね。低血糖については、両群ほぼ変わりなく安全性もまずまず2型糖尿病をメインに診ているとはいえ、今後は少しずつポンプに習熟していく必要があるかもしれません。
 
✓ 1型糖尿病患者に対するインスリンポンプ療法は複数回分割インスリン注射よりも全死亡や心血管関連死亡が少ない


糖尿病研究の常連著者と研究頻度・特徴 
Productivity of authors in the field of diabetes: bibliographic analysis of trial publications*3

 これは非常にBMJらしい研究です。世の中の論文を書いている人ってどんな人?的な疑問から入ります。背景として、何もしていないauthorやゴーストライターなどの問題が多くあり、ICMJEという団体がauthorとして載せて良い人の条件を決めたりしているんだそうです。それにも関わらず、多くの分野のRCTを一人でたくさん報告している人がいて、それって本当かいな?みたいな疑問が出ている模様。そこで、今回糖尿病のRCTを対象に、どんな人が論文を書いているのか、その特徴などを検証するコホート研究が組まれました。
 論文のPICOは、

P:1993-2013年の糖尿病の血糖降下薬に関連した全RCT
I/C:論文のauthor名・それぞれのauthorの論分数・発表時期・製薬会社ファンドの有無等
O:Top110authorの関連するRCTの割合
T:後ろ向きコホート
結果:
 結果として、3782のRCTと13592人のauthorが見つかった。Top110のauthorによって書かれたRCTは1227RCT(全体の32.4%)で、Top 11 authorによって書かれたRCTは397(全体の10.5%)だった。Top 110のauthorによって書かれたRCTは991件で、平均20本だった。Top11人の平均本数は42本(36-77)。110人のうち48人が企業に雇われた医師だった。

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(本文より引用)

 いやあ興味深いデータです。ものすごく書いている人達がいるってのも良く分かりましたし、糖尿病の治療歴史を動かしているのは存外少ない人数なんだなあとか。企業ファンドも多いですねえ。COIや製薬会社スポンサー・広告の根深い関係が見え隠れします。

✓ 糖尿病の血糖降下薬関連のRCTは常連著者によってかなりの部分が書かれており、製薬会社との関連がある医師が多い

 


■Lancet■

白斑レビュー 
Vitiligo*4

 さて白斑のレビュー。今回は細かく取り上げずへーと思った事を中心にコメントしています。良くまとまっているので興味のある人は是非本文をご一読下さい。

 白斑Vitiligoは、最も多い脱色素疾患で、国によって疫学が大きく異なります。世界的には0.5-1.05%程度と言われていますが、日本は比較的多い方で、全人口の1.6%程度と言われています。一番多いのはインドで8.8%。発症時期は二峰性で、12歳以前が多いですが、半分くらいは40歳以降に発症するとも言われています。

 発症機序として、自然免疫の活性化が言われていて、樹状細胞の環境的な活性化が関与しているのではないか?と言われています。また、自己免疫疾患も関連し、橋本病などの自己免疫性疾患の合併が多いとも。

 治療の第1選択は、局所ステロイド第2選択は、PUVA療法になります。ただ、過去に行われた多くのRCTがstudy間の違いがあり過ぎて、直接的に治療効果の比較が難しい状態です。ただ、治療の原則として、少なくとも治癒はできないこと、進行が抑えられないこと、介入するなら早めが良いこと、などが分かって来つつあります。また、治療の目的のメインに美容的な要素が出てくるので、化粧などのカモフラージュも重要と言われています。今後は、定義や分類の統一やstudy outcomeの標準化をとコメントされていました。

✓ 白斑について日本では比較的多く、適切な対処ができるようにしよう


急性期脳卒中超急性期リハビリの効果 
Efficacy and safety of very early mobilisation within 24 h of stroke onset(AVERT): a randomised cotrolled trial*5

 実は、以前にも取り上げたのですが、重要なので再掲。
 脳卒中発症後どのタイミングでリハビリを開始すべきかという話題です。「早ければ早い程よいんでしょ?」みたいなノリがありますが、本当にそうなのでしょうか?現在の世界各国の脳卒中関連ガイドラインでは、22/30で超早期リハビリを勧めています。ただ、一方で十分検証されたエビデンスに基づいた推奨というわけではなく、病態機序としては、頭部挙上によるペナンブラの血流減少や運動による頭蓋内圧亢進、転倒や外傷による脳出血などのリスクが高まる可能性が危惧されています。 
 というわけで、今回の論文のPICOは、

P:発症24時間以内の脳卒中患者2104人、18歳以上で全56カ所のSCU担当
I:
超早期リハビリ
C:通常SCUケア
O:3ヶ月後mRS 0-2の割合
T:ランダム化比較試験
結果:
 平均 72歳、mRS 0点が75%前後と軽症例多い、初発例が80%前後
 超早期リハビリ群は実際18.5時間から介入、通常SCUケア群は22.4時間と介入開始が4.8時間早かった
 超早期リハビリ群と通常SCUケア群を比較すると、mRS 0-2点の割合は通常SCUケア群の方が有意に多かった(調整OR 0.73(0.59-0.90))

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(本文より引用)

 過去のガイドラインの推奨とは異なる結果でした。ガイドラインを変える必要があるかもね〜と。とはいえ、実際のリハビリ開始時間5時間弱しか変わりません。もしかしたら通常ケアの質が上がっているという解釈が出来るかもしれません。もう少し追加検証で同じ結果が出るのか複数のRCTでの証明が必要かもしれませんね。

✓ 脳卒中に対する入院後超早期リハビリ開始は、3ヶ月後の神経機能予後を悪化させるかもしれない