栃木県の総合内科医のブログ

栃木県内の総合病院内科の日々のカンファレンス内容や論文抄読会の内容をお届けします。内容については、できる限り吟味しますが、間違いなどありましたら是非ご指摘ください。また、内容の二次利用については自己責任でお願いします。

論文抄読会:JAMA(AIM)&NEJM 再入院とそれに関連する因子/食事療法の選択/プラセボ効果/肥満へのGLP-1製剤/カリウムの恒常性

■JAMA■ 
 〜今週はお休み〜

■Annals of Internal Medicine■
 替わりにこちらを。これから月1回くらいの頻度でAnnals of internal medicineも紹介していこうかなと思います。

再入院とそれに関連する因子 
Differences between early and late readmissions among patients*1

 再入院についての解析。こうゆう視点って無かったので非常に面白いです。再入院は米国では5人に1人と言われ、その費用たるや年間176億人と言われています。2009年からはQuality indecaterの1つとして用いられています。さて、そんな中再入院患者の実態について調査した後ろ向きコホート研究が出ていました。
 論文のPECOは、

P:米国の急性期教育医療機関1施設の再入院患者
  2009年1月1日〜2010年12月31日
E:早期再入院患者(退院7日以内)
C:晩期再入院(退院8-30日以内)
O:関連する因子・しない因子
T:後ろ向きコホート研究
結果:
 全体で14314人の入院患者がいて、実際に退院した13334人が解析対象。
 選択的再入院は除外。
 早期再入院患者は1046人、晩期再入院患者は1586人、再入院なしは10723人、再入院率は19.7%
 まず30日死亡は早期再入院 5.9%、晩期再入院 3.6%、再入院なし 1.3%
 早期再入院に関連する因子は、
  ①入院期間が長い OR 1.02(1.00-1.03)
  ②Rapid Response teamコール OR 1.48(1.15-1.89)
  ③慢性臓器不全に対する投薬 OR 1.19(1.02-1.40)
  ④学習障害 OR 1.18(1.01-1.38)
  ⑤朝8:00-12:59までの退院 OR 0.76(0.58-0.99)
 晩期再入院に関連する因子は、
  ①慢性臓器不全に対する投薬 OR 1.24(1.08-1.41)
  ②透析 OR 1.61(1.12-2.17)
  ③学習障害 OR 1.24(1.09-1.42)
  ④Medicare・Medicaid OR 1.16(1.01-1.33)

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(本文より引用)

 まあ、非常に面白いデータなのですが、なんと行っても入院期間が3日前後という恐ろしいほど短い病院の再入院率なので、日本にはこのまま利用は出来ませんよね。早期と晩期の再入院にそれぞれ関連するものは、違うかもしれないということでしょうか。こんなのもの臨床研究のネタにはなりますね。

 ✓ 米国の再入院に関連する因子が検討されている


食事療法の選択 
Effect of allowing choice of diet on weight loss*2

 食事療法には多くの種類がありますが、減量のためにどの食事療法が良いのか?と言う部分については結論は出ていません。更に、食事療法はそのプログラムへのアドヒアランスが重要なわけですが、アドヒアランスには患者本人のモチベーションが重要ではないか?と仮定されています。そんな中食事療法の自主選択が食事療法のアドヒアランスや体重減少率にどの程度影響するかを検証した研究が報告されています。
 論文のPICOは、

P:米国退役軍人病院に通院するBMI>30の肥満患者
I:2つの食事療法から好みで選択(低炭水化物:LCD、低脂肪:LFD)
  12週時点で変更も可能。
C:2つの食事療法を強制的に施行
O:48週間後の体重
T:ダブルRCT
結果:
 選択群は105人でLCD 61人(58%)、LFD 44人(42%)を選択。
 12週後にLCD3人、LFD2人が変更、完遂率は83%
 強制群は102人でLCD 53人(52%)、LFD 49人(48%)にランダム割り付け。
 完遂率は86%
 プライマリアウトカムは、選択群で5.7kg(4.3-7.0kg)、強制群で6.7kg(5.4-8.0kg)で有意差は無かった
 セカンダリアウトカムであるアドヒアランス・身体活動・QOL指標は変わらなかった

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(本文より引用)

  今回のstudyデザインのダブルRCTって初めてみました。片方はランダムに片方は選択させる群をランダム割り付け・・・というのは興味深いデザインです。そして、食事療法の自己選択はあまり良い影響は無さそうですね。まあ、今回の研究対象者の平均BMIは36、体重108kgくらいの方々です。まあ、どちらでも良い!という結論でもあるし、若干選択群の方が悪いので自分の好きなことだけやってもダメだぜ!という結論とも言えるかもしれません。

✓ 肥満患者に対する食事療法の内容は自己選択させてモチベーションを上げても実際の体重減少効果は変わらなかった



■NEJM■

プラセボ効果 
Placebo effects in medicine*3

 プラセボについては過去にも何度か記事として書いていますが、今回も多少おさらい的に。

 プラセボ効果には、複雑な神経生理メカニズムが関与しています。多くの薬剤がプラセボ効果を持つことが分かって来ている一方で、患者側の要因もプラセボ効果に関連すると言われています。すなわち、プラセボ効果が出やすい遺伝的要因があったり、報酬系の経路が活性化することで症状が改善しやすいパーキンソン病など、患者要因もプラセボ効果出現の有無に関連してきますね。

 今回の記事のポイントは主に3つ。
プラセボ効果は、症状改善するが治癒はしない:
 たとえば、抗癌剤の副作用や癌の症状が減ることはあるが、癌そのものが小さくなったりはしません。せん妄症状は改善するが、FEV1.0は改善しないなども同様ですね。
②標識や医者とのやりとりが重要:
 たとえば、”リザトリプタンラベルのプラセボ”と”プラセボラベルのリザトリプタン”は偏頭痛に対する効果に差が無いSci Transl Med 2014;6:218ra5.とか。モルヒネフェンタニルジアゼパムでも同様のことが報告されています。
③ノセボ効果の可能性:
 偏頭痛患者に対する抗てんかん薬のRCTとトリプタンのRCTではプラセボ群の副作用内容が全く異なります。これは、結局実薬の副作用説明によってプラセボにもそのような副作用が出てしまったという逆プラセボ効果。多くのRCTでプラセボ群でも4-26%ほど副作用によって薬剤中止すると言われており、過剰な副作用説明は良くないという良い実例です。

 さて、というわけで今後は患者をだますことなくプラセボ効果をどう最大限あげていけるかを考えていく必要があります。そしてもちろんノセボ効果を減らす事も重要ですね。名医の薬が効くのは、信頼感によって最大限プラセボ効果をあげてノセボ効果を減らしているのかもしれません。医学はcureのみを目指すのでは無く、reliefを目指すことも大事なゴールの1つです。

✓ プラセボ効果の最大限の利用とノセボ効果を減らすやり方を考えていこう


肥満へのGLP-1製剤 
A randomized, controlled trial of 3.0mg of Liraglutide in weight management*4

 GLP-1製剤が発売された時に”魔法のやせ薬”的な言われ方をして、すげー夢の薬が出る!みたいになった気もしますが、その実そうでもない・・・みたいな。同じインクレチン薬とはいえ内服薬のDPP-4阻害薬と比べるとGLP-1製剤はなかなか苦戦しているのが現状でしょうか。そんな中、肥満患者に対するGLP-1製剤の効果を見たstudyが報告されていました。
 論文のPICOは、

P:18歳以上の糖尿病歴の無い肥満患者3731人
  BMI≧30 もしくは BMI≧27+脂質異常もしくは高血圧
I:GLP-1製剤毎日+生活習慣介入 56週間
C:プラセボ+生活習慣介入 56週間
O:56週間後の体重変化・5%以上体重が減った人率・10%以上体重が減った人率
T:RCT/27ヵ国191施設
結果:
 平均45歳、女性78%、体重106kg、BMI 38、preDM 61%
 完遂率は介入群 72%、プラセボ群 64%、副作用中止率 介入群 10%、プラセボ 4%
 プライマリアウトカムは、介入群で 8.4±7.3kg、プラセボ群で2.8±6.5kg減少し、両群の差は -5.6kg(-6.0 to -5.1kg)だった。
 5%体重減少した割合は、介入群で63.2%、プラセボ群で27.1%
 10%体重減少した割合は、介入群で33.1%、プラセボ群 10.6%

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(本文より引用)

 GLP-1製剤を毎日打つと通常の生活習慣介入と比較して体重減少効果の上乗せ効果があることが分かりました。
 まあ、106kgの人達が平均6kg減ったという結果なので、結果として100kgになったよーと・・・一応サブ解析で見ている糖尿病発症率にも差が出ていて、糖尿病発症予防効果もありそうです。ただ、嘔気・下痢・食欲低下などの副作用が多いのも確か。このせいで食べられないんじゃないの?みたいに感じてしまいます。うーん、まあ肥満に対する対処は薬じゃないと常々思っているのですが・・・問題は一生打ち続けるの?とか長期予後は問題ない?という所でしょうか。

✓ GLP-1製剤を連日注射すると通常の生活習慣介入と比較して体重減少効果の上乗せ効果がある
 

カリウムの恒常性 
An integrated view of potassium homeostasis*5

 血中のKは3.5-5.0にコントロールされています。そして、この基準を外れると全死亡が増えることが分かっており、恒常性が非常に重要です。まあ、そもそもこの基準値ってやつがヤクザなやつで、本当にそれが正常なのか否かを十分検討されていないまま、デジタルに線引きをするのが問題ですよね。もちろん、年齢や性別によって基準が異なってもしかるべきですし。おっと、グチが出てしまう。

 実はK濃度は一日の中で変動しており、サーカディアン・リズムが存在すると言われています。一日の中でのK値の変動は10%未満で、Kが吸収されても腎臓+腎臓外メカニズムですぐに補正されるわけです。また、食事を摂取するとK利尿がなされることが知られています。

 K恒常性を語る上で重要なのは、Internal regulationとExternal regulationです。Internal regulationは細胞外や細胞内のK割合の調整、Externalはintakeと排泄のバランスという訳です。サーカディアンリズムが関与しているのは主にExternal regulationです。

 External regulationのシステムは主に3つのメカニズムがあり、①Negative Feedback、②Feed forward、③Circadian rhythmがある。①・②は反射的な経路なので、Kの値によって調整されます。③は例えば6時間おきに食事負荷するとK利尿は日中の方が夜間より多いとされています。また、K負荷に対するK利尿は日内変動があります。Internal regularionは、主に食間の血中K濃度の調整で、腎からの排出と筋肉・肝臓からの放出と関連します。Internalに関連するホルモンとしては、インスリン・カテコラミン・ミネラルコルチコイド・アルドステロンがあります。実はアルドステロンのK利尿効果も昼は強いが朝・夜は少ないと言われてます。

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(本文より引用)
 ということで、尿中Kを評価するためには食事や日内変動の影響を考慮すること。それを考えずにワンポイントでTTKGとか評価して進んで行くのは危険ですよーと。

✓ K恒常性を保つ体内機序はもの凄く精巧。日内変動があるので尿中K値の解釈には十分な注意が必要